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二人の気持ち・1
しおりを挟む始は優しく微笑みながら、湯上がりの雪子の元へ来る。
だけど、夢の七日間はもう終わってしまったのだ。
「怪我は本当に大丈夫ですか?」
「……私のスーツはどこ?」
夢から醒めた混乱で、雪子はつっけんどんに言ってしまう。
「え……っ、あのクリーニングに出そうと思って、こちらで預かっています」
「そんなのいい。カバンも返して……っ」
「もちろんです。カバンもリビングに置いてあります。でも夕飯を一緒に……」
「私、帰ります」
始が雪子に伸ばした手を振りほどく。
「えっ雪子さん、じゃあ俺も一緒に帰ります。雪子さんの家に」
「な、なに言ってるのよ!」
広い廊下に雪子の声が響く。
「雪子さん……でも」
「どうしたら、いいの? 私……」
「え……」
「貴方、御曹司なの? 草神グループの御曹司さま……?」
「雪子さん……それは……その通りです。黙っていて、すみませんでした」
始は苦しく切なそうな顔をした。
「貴方の会社の子会社とか言ったって……子会社の子会社の事務員……ううん、今はただの無職……そんな女を笑って遊んでたの?」
「まさかそんな! 遊ぶだなんて!」
「じゃあ、あのお金は何? 手切れ金……?」
「違います! とりあえず一週間お世話になった生活費にと、手持ちの金を置いただけです……あれは俺が働いて稼いだ金ですから」
「お、お金なんか……いらないっ!」
「そういう意味じゃないんです! すみません、電話を入れたらすぐに戻るつもりだったんです。あの八百屋さんの前の公衆電話で電話をかけたら……俺を探していた秘書に見つかってしまって、どうしても話をしなければいけない状況になってしまったんです」
「電話……?」
「あのビルはこれから解体されるんです。面接なんて嘘だと思ったので、それを確かめるために秘書に電話を入れたんですが……。それから戻らなければいけない状況になってしまい……。行方不明になっていた説明とビルの状況確認で駆けつけるのが遅くなってしまって……結局、雪子さんを守りきれず、あんな目に合わせてすみません。俺が不甲斐ないばかりに……」
始が頭を下げる。
「やめてよ……! それは始くんが謝ることではないわ……助けに来てくれたじゃない! それはすごくすごく感謝してる! でも私は……貴方に謝らなきゃ……私が……土下座しなきゃ……」
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