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無職同士で・1
しおりを挟む「縁談を……!? どういう事!?」
驚いて落としてしまったツマミの袋を、彼が拾った。
「言葉のとおりです。どうしても受け入れることのできない縁談だったので、俺はその場をぶち壊し飛び出してきて……今に至ります。そのまま家も出てきたので帰る事もできません」
「えっ……」
無職で、家も無い!?
「……貴方は成人してるんでしょ?」
「そうですね。25歳です」
「年下っ!! でも縁談で無職になって、家も無くなるっておかしくない? ……まさかずーっと親の言いなりだったとか?」
雪子は高校を卒業してから都会へ出て、奨学金を借りて大学へ行きバイトをしながらなんとか卒業。
そして就職。
自立している! とそこだけは誇れるし誇らないと虚しくなる。
「そうですね……そう言われたらそうかもしれません」
「最近は、子供を心配して親が結婚相談所に行くって話を聞いたことがあるけど……そういう感じ~?」
「あはは、そんな感じかもしれません」
酔っ払いだからって、初対面の人間に失礼な事を言っている、と思った。
しかし彼の方が、なんだか面白そうに笑って『他に俺を見て思った事を言ってください』と聞いてくる。
「そのスーツも、もしかして選んでもらった?」
「……そうですね。服は大抵、任せています」
「ご飯は~作れるの? 炊飯器でご飯炊ける? ってそのくらいできるか!」
「知識としてはありますが……炊いたことはありませんね」
「一度も?」
「はい」
雪子は、この綺麗な男は箱入り息子っていうやつなのでは!? と思い始めていた。
仕事の話を聞いても、なんだか曖昧でよくわからない……もしかして元々無職なのではと思う。
「なんだか、こうやって話していると自分が本当に碌でもない人間に思えてくるなぁ」
彼は笑いながら、またビールを飲む。
「あっ! ご、ごめんなさい!! 貴方だって傷ついて悩んで……いたのに」
「いえ、なんだか自分を振り返る時期かな……と思ってたんで傷ついたりはしていません」
「でも……」
「俺は大丈夫、貴女を見ていたらなんだか元気が出た。俺もなんでもできそうな気になりましたよ」
「そうは言っても……家にも帰れないし……無職だし……お金も無いんでしょ」
「……そう、ですね」
もうぬるくなったチューハイを男に渡す。
お酒が大好きで、6本も買ってしまっていた。
「もうビールもぬるいか……うちで飲み直す? もう寒くなってきたし」
「えっ……貴女の?」
「うん。変なことしたら通報するけど……泊まっていいよ」
「……それはありがたいです」
「んじゃ! 行こう~!! 旅は道連れ世は情けじゃ! なんだって、なんとかすれば、なんとかなるよ!」
「ぷっ」
男のツボにハマったのか吹き出す。
「貴方って、くだらないことで笑うんだね」
「そんな事ないですよ。貴女がすごく面白いから」
「そうかなぁ」
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