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苦しい気持ち、そして外道・2

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 黒尽くめの格好をして明らかに棒などの武器を持ち、ウロウロしている。
 一人が何か液体のようなものを道場の壁に――油か!

「何をしている!!!」

 ヴァレンティーナが叫ぶと、 黒尽くめ達はビクリとし一斉にヴァレンティーナを見る。

「ラファエルか!?」

「いや、違うぞ! あいつだ! ヴァレンとかいう旅人!」

「あいつに殴られたんだ! 一人だろう!? やっちまえ!!」

 男達は十人もいて、ヴァレンティーナを取り囲む。
 夕方の男も、二人いた。
 ヴァレンティーナはマントを脱ぎ捨て、また鞘のままレイピアを右手に構えた。

「またお前達か!!」 
 
「こいつか? 女のような男ってのは……大したことねーだろ! 細腕じゃねーか」

 一人の男が消していた発光石のランタンを点けて、ヴァレンティーナの方へ向けた。
 ヴァレンティーナの美しい顔を見て、男達は驚く。

「へー! なんだこれはラファエルのやつ、とうとう男を囲うようになったのか?」

「へっへっへ! お坊ちゃんは男がお好きかぁ」

「くだらない事で彼を侮辱するな!! お前達、一体何をしようとしていた!!」

「うるせー! ラファエルも、この村の奴らもこんな道場があるから、調子に乗るんだ!!」

「なんだって……」

 ヴァレンティーナの目が見開かれる。
 一瞬で怒りが燃え上がる。

 道場を燃やそうとしていたのだ!!

「どこまで外道なんだ……お前らは!!」

「ヒャハハハ!! 綺麗な顔した男は俺は好物なんだ」

「もしかしたら、女かもしれない。脱がしてみようぜ」

「男だっていい! 道場でこいつを犯してやるのはどうだ!? どうせお前も童貞だろう? 俺等にたっぷりご奉仕しな!」

 男が言い終わる前に、ヴァレンティーナが動いた。
 光を当てた場所からヴァレンティーナが一瞬でいなくなり、一人カエルを潰したような声が響く。

「うぐっ」

「ぐひゃっ!」

 消える影のようにヴァレンティーナがまたレイピアの『柄打撃』を繰り返す。

「なんだ! 何が起きている!」

「そっちだ!!」

 大きく振るった棒など当たるわけがない。
 これが毎日,何十年、何千回と修行してきた剣士の動きだ――!!

 一人、また一人とヴァレンティーナが倒していく……が!
 
 更に男を倒した時、ジャリ……!! と何かがヴァレンティーナの身体を拘束した。

「!! これはっ!?」

 両端に重りのついた鎖だった。
 それがヴァレンティーナの身体に巻き付いたのだ。
 両腕も絡みとられてしまい、攻撃ができない。

「おおお!! やったぜ!」
「この女男め! よくもやってくれたな!!」

 次に倒そうとした男に、頬をぶたれ腹に蹴りを入れられる。

「ぐっ……!!」

 その攻撃でも、なんとか倒れなかったヴァレンティーナ。
 だが後ろから羽交い締めにされ、泥濘んだ地面に叩きつけられた。
 黒髪をまとめていた紐がほどける。

「おい! 顔に傷はつけるなよ、せっかくの美形なんだからな!」

「さっさと道場を開けろ! 窓を割れ!!」

「やめろ! 卑怯者どもめ!!」

「黙れ!」

 昏倒した仲間はそのままで、残った半数が道場を開けようと動き出した。
 他はヴァレンティーナの周りに集まる。

「おいおいおい! こいつもしかして!」

「触るな! この下衆どもが!!」
 
 ふんわりとしたシャツが鎖で拘束された事によって、女性らしい体つきがあらわになってしまった。
 
「女だ!!」

 ヴァレンティーナの脳裏に、最悪な光景が浮かぶ。

「やったぜ! 早く裸にしてしまえ!」

「さっさと道場を開けろよ! 犯しつくしてやる!」

 必死で握っていたレイピアが無理やり奪われ、遠くに捨てられた。
 男達がヴァレンティーナの肢体に手を伸ばす。
 
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