28 / 36
気付く恋・2
しおりを挟む
そしてパーティーの時間。
「ラファエル様! お誕生日おめでとうございます! 乾杯!」
「「「乾杯!」」」
昨日中止になったパーティーが開かれて、今夜も大いに盛り上がる。
雨で不安な村人は屋敷に来るようにと言ったため、お祝いに来た家族もいた。
「アリス、パーティーの手伝いまでしてくれたらしいな。ありがとう」
「いいえ、少しでもお役に立てたのなら嬉しいです。ラファエル様お誕生日おめでとうございます」
この屋敷のメイド達は、メイドと言っても厳しく躾けられてはいない。
アリスはどこの貴族のメイドになっても恥のないように幼少の頃より働いてきたメイドだ。
厨房で働いた事もあって、料理もできる。
もちろん素性がバレないように加減はしたようだが、パーティーの飾り付けなどで本領発揮をして大活躍だったらしい。
「このオレンジの飾り切りは、すごいな」
ラファエルの畑で採れたオレンジや他の果物を、綺麗に飾り切りした一皿は皆の注目を浴びた。
「うふふ。ナイフの扱いには慣れておりますので! 私からのプレゼントでーす!」
「ありがとう。今度俺にも教えて」
「もちろんです~~~!」
背が高く逞しいラファエルと、小柄で可愛らしいアリス。
誰が見てもお似合いに見える。
ヴァレンは、男達と剣の話をしながら二人を眺め紅茶を飲む。
「ヴァレン! 今日はもう少し飲もうぜ」
「いや……」
少しヴァレンの表情が暗い事を、ラファエルは見逃さない。
「夕方の事は気にするな。話し合いの場がほしいと手紙を出す。その時にきっちり息子からの嫌がらせをやめろと伝える。嫌な思いをさせてすまない……」
「すまない、私のせいで余計な負担を……」
「ほら! 今日は俺の祝いだし、楽しく過ごそう!」
そう言われて、ヴァレンティーナも不躾だったと微笑む。
「そうだな、祝の席だ」
「そうそう! 祝ってくれよな! あはは」
「確かにな……私からも何か誕生日プレゼントがあればよかったんだが」
「こんなに素晴らしい出逢いがプレゼントだよ。ありがとう」
「えっ……」
「兄様ー! アリスもスター団員フラン様を知っているんですって! お好きなんですってよー! 今日は私の部屋に泊まってもらうわ! 朝まで語るの!」
「ははは、やっぱり仲良くなったな……本当に感謝してるんだ」
アリスとローズを見て、優しい目をするラファエル。
アリスを……見つめてる?
「ん? 俺の顔になんかついてる?」
「い、いや。ラファエル、誕生日おめでとう」
「あ! ヴァレン、やっぱプレゼントくれ!」
「な、なんだ?」
「明日の稽古! また、がっつり頼むよ! 最高に楽しかった!」
「はは、あぁ。付き合うよ。私も楽しみだ」
今朝の稽古がとても楽しかったのは、ヴァレンティーナも同じだ。
「明日も明後日も、明々後日も……稽古できたらいいのにな」
「はは……それは……私達は旅人だから」
そう、此処はただの通過点なのだ。
「アリスは、此処のみんなも気に入って、仕事も楽しいらしいぞ」
「……そうか、あの子はどこででも上手くやれる子だ」
「ヴァレンもさ、此処で学校の先生なんかどうだ? 剣だけじゃなく、勉学にも長けているだなんてやっぱすごいな!」
「今日教えたのは本当に初歩だよ、中途半端に子供に教えるのはよくない」
「別にそんな堅苦しく考えなくてもいいさ。道場も広げたいと思っているし……」
ラファエルが、この村にいられるように仕事を紹介しようとしている?
この村で……新しい人生を始めたらいいと……?
「……いや……あの……」
「あー、ごめん。突然に……でも……アリスから行き先のない旅だって、聞いたんだ」
「アリスが……」
アリスは思った以上に、ラファエルに気を許している。
自分が滞在すると言えば、アリスは喜んで賛成するだろう。
ラファエルはアリスが村にいてほしくて、そのために自分を説得をしているのでは……?
「だから、ヴァレンも少し……いや真剣に考えてみてくれないか?」
「あ……あぁ……」
「……ヴァレン?」
「いや、ありがたい言葉だ。嬉しいさ」
動揺を隠すように、ヴァレンティーナは微笑む。
アリスのような天真爛漫な笑顔ができるわけではないから、口の端を上げただけで皆が騙される。
「……そう言ってくれたら俺も嬉しいけど……本当に大丈夫か?」
ギクリとする。
「何故? 微笑んでいるのに、酷いな」
「ラファエル様! お誕生日おめでとうございます! 乾杯!」
「「「乾杯!」」」
昨日中止になったパーティーが開かれて、今夜も大いに盛り上がる。
雨で不安な村人は屋敷に来るようにと言ったため、お祝いに来た家族もいた。
「アリス、パーティーの手伝いまでしてくれたらしいな。ありがとう」
「いいえ、少しでもお役に立てたのなら嬉しいです。ラファエル様お誕生日おめでとうございます」
この屋敷のメイド達は、メイドと言っても厳しく躾けられてはいない。
アリスはどこの貴族のメイドになっても恥のないように幼少の頃より働いてきたメイドだ。
厨房で働いた事もあって、料理もできる。
もちろん素性がバレないように加減はしたようだが、パーティーの飾り付けなどで本領発揮をして大活躍だったらしい。
「このオレンジの飾り切りは、すごいな」
ラファエルの畑で採れたオレンジや他の果物を、綺麗に飾り切りした一皿は皆の注目を浴びた。
「うふふ。ナイフの扱いには慣れておりますので! 私からのプレゼントでーす!」
「ありがとう。今度俺にも教えて」
「もちろんです~~~!」
背が高く逞しいラファエルと、小柄で可愛らしいアリス。
誰が見てもお似合いに見える。
ヴァレンは、男達と剣の話をしながら二人を眺め紅茶を飲む。
「ヴァレン! 今日はもう少し飲もうぜ」
「いや……」
少しヴァレンの表情が暗い事を、ラファエルは見逃さない。
「夕方の事は気にするな。話し合いの場がほしいと手紙を出す。その時にきっちり息子からの嫌がらせをやめろと伝える。嫌な思いをさせてすまない……」
「すまない、私のせいで余計な負担を……」
「ほら! 今日は俺の祝いだし、楽しく過ごそう!」
そう言われて、ヴァレンティーナも不躾だったと微笑む。
「そうだな、祝の席だ」
「そうそう! 祝ってくれよな! あはは」
「確かにな……私からも何か誕生日プレゼントがあればよかったんだが」
「こんなに素晴らしい出逢いがプレゼントだよ。ありがとう」
「えっ……」
「兄様ー! アリスもスター団員フラン様を知っているんですって! お好きなんですってよー! 今日は私の部屋に泊まってもらうわ! 朝まで語るの!」
「ははは、やっぱり仲良くなったな……本当に感謝してるんだ」
アリスとローズを見て、優しい目をするラファエル。
アリスを……見つめてる?
「ん? 俺の顔になんかついてる?」
「い、いや。ラファエル、誕生日おめでとう」
「あ! ヴァレン、やっぱプレゼントくれ!」
「な、なんだ?」
「明日の稽古! また、がっつり頼むよ! 最高に楽しかった!」
「はは、あぁ。付き合うよ。私も楽しみだ」
今朝の稽古がとても楽しかったのは、ヴァレンティーナも同じだ。
「明日も明後日も、明々後日も……稽古できたらいいのにな」
「はは……それは……私達は旅人だから」
そう、此処はただの通過点なのだ。
「アリスは、此処のみんなも気に入って、仕事も楽しいらしいぞ」
「……そうか、あの子はどこででも上手くやれる子だ」
「ヴァレンもさ、此処で学校の先生なんかどうだ? 剣だけじゃなく、勉学にも長けているだなんてやっぱすごいな!」
「今日教えたのは本当に初歩だよ、中途半端に子供に教えるのはよくない」
「別にそんな堅苦しく考えなくてもいいさ。道場も広げたいと思っているし……」
ラファエルが、この村にいられるように仕事を紹介しようとしている?
この村で……新しい人生を始めたらいいと……?
「……いや……あの……」
「あー、ごめん。突然に……でも……アリスから行き先のない旅だって、聞いたんだ」
「アリスが……」
アリスは思った以上に、ラファエルに気を許している。
自分が滞在すると言えば、アリスは喜んで賛成するだろう。
ラファエルはアリスが村にいてほしくて、そのために自分を説得をしているのでは……?
「だから、ヴァレンも少し……いや真剣に考えてみてくれないか?」
「あ……あぁ……」
「……ヴァレン?」
「いや、ありがたい言葉だ。嬉しいさ」
動揺を隠すように、ヴァレンティーナは微笑む。
アリスのような天真爛漫な笑顔ができるわけではないから、口の端を上げただけで皆が騙される。
「……そう言ってくれたら俺も嬉しいけど……本当に大丈夫か?」
ギクリとする。
「何故? 微笑んでいるのに、酷いな」
13
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
奪い取るより奪った後のほうが大変だけど、大丈夫なのかしら
キョウキョウ
恋愛
公爵子息のアルフレッドは、侯爵令嬢である私(エヴリーヌ)を呼び出して婚約破棄を言い渡した。
しかも、すぐに私の妹であるドゥニーズを新たな婚約者として迎え入れる。
妹は、私から婚約相手を奪い取った。
いつものように、妹のドゥニーズは姉である私の持っているものを欲しがってのことだろう。
流石に、婚約者まで奪い取ってくるとは予想外たったけれど。
そういう事情があることを、アルフレッドにちゃんと説明したい。
それなのに私の忠告を疑って、聞き流した。
彼は、後悔することになるだろう。
そして妹も、私から婚約者を奪い取った後始末に追われることになる。
2人は、大丈夫なのかしら。
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
[完結]幻の伯爵令嬢~運命を超えた愛~
桃源 華
恋愛
異世界アレグリア王国の
美しき伯爵令嬢、
リリス・フォン・アルバレストは
男装麗人として名高く、
美貌と剣術で人々を
魅了していました。
王国を脅かす陰謀が迫る中、
リリスは異世界から
召喚された剣士、
アレクシス・ローレンスと
出会い、共に戦うことになります。
彼らは試練を乗り越え、
新たな仲間と共に
強大な敵に立ち向かいます。
リリスとアレクシスの絆は
揺るぎないものとなります。
力強い女性主人公と
ロマンティックな愛の物語を
お楽しみください。
聖女は友人に任せて、出戻りの私は新しい生活を始めます
あみにあ
恋愛
私の婚約者は第二王子のクリストファー。
腐れ縁で恋愛感情なんてないのに、両親に勝手に決められたの。
お互い納得できなくて、婚約破棄できる方法を探してた。
うんうんと頭を悩ませた結果、
この世界に稀にやってくる異世界の聖女を呼び出す事だった。
聖女がやってくるのは不定期で、こちらから召喚させた例はない。
だけど私は婚約が決まったあの日から探し続けてようやく見つけた。
早速呼び出してみようと聖堂へいったら、なんと私が異世界へ生まれ変わってしまったのだった。
表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
―――――――――――――――――――――――――
※以前投稿しておりました[聖女の私と異世界の聖女様]の連載版となります。
※連載版を投稿するにあたり、アルファポリス様の規約に従い、短編は削除しておりますのでご了承下さい。
※基本21時更新(50話完結)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる