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二刀流令嬢・ラファエルと出逢う・4
しおりを挟む出迎えられるラファエルを見ていたヴァレンティーナだったが、幌の後ろにメイド二人が来るのを見てアリスを起こす。
ルークも自然に目をこすり、起きた。
「ルーク! あぁ無事でよかった」
ルークが皆に、大事に思われているのが伝わってくる。
「……ごめんなさい、ごめんなさい」
「いいよ! さぁもうお屋敷に着いたんだよ! 馬車は馬小屋へ連れてってもらうから、お客様もどうぞお降りになってください!」
「お世話になります!」
屋敷から出てきた使用人達も、豪雨でみるみるずぶ濡れになっていく。
ヴァレンティーナとアリスも慌てて、それぞれのトランクを持ってメイド達の後を追う。
「ヴァレン! 俺もすぐに行くから、待っててくれ!」
「わかった、馬車を頼む! 気を付けて!」
暗いなかでもわかる、屋敷の大きさ。
そして使用人の数。
ラファエルは、どういう身分なのだろうか?
とりあえず屋敷の玄関についた。
古いが、磨き上げられた立派な洋館のドアだ。
「さぁ、どうぞ中へ。すぐにタオルをお持ちしますね」
やっと嵐から逃れられた、と流石にヴァレンティーナも息を吐く。
「アリス、大丈夫か?」
「えぇ! 私は睡眠もとってしまいましたし、お腹が空いたくらいです」
「俺も腹が減ったなぁ」
「ルーク! せっかくの御馳走も冷めてしまったのは誰の……ん、もう、仕方ないわね」
タオルを持ってきた中年メイドが怒りかけたが、ラファエルの言いつけを守るためか呆れたように溜息をついた。
きっとラファエルの誕生日パーティーの準備は、途中でルークの捜索になってしまい中止になったのだろう。
「お客様、タオルをどうぞ。すぐに温かいお部屋へご案内致します」
「ありがとう。夜分にすみません。お世話になります」
タオルを渡してきたメイドは、ヴァレンティーナの美貌にドキリとした顔をする。
「おっし! 馬車はこれで大丈夫だ。みんなも、大丈夫だったか?」
重い玄関が開いて、ラファエルが入ってくる。
すぐにタオルを受け取ったが、びしょ濡れだ。
「ラファエル様、身体が冷えておりますよね。お部屋のお風呂はすぐに入れるようにしてあるのですが……」
「俺の部屋の風呂は二人に先に使わせてやってくれ。俺はみんなの方を使うから」
「いや、しかしラファエル殿、君の方が」
「命の恩人が何を遠慮する! 着替えはあるか? 俺の服なら着れるだろう。好きなの着ていいから。ドナさん、二人を頼むよ」
ドナと呼ばれたメイドが頷く。
「もう23時か……腹減ったよな?」
入ってすぐにある広間にあった大時計を見て、ラファエルが二人に聞いた。
「はぁい! それはもう、すごく!」
ヴァレンティーナより先に、アリスが笑顔で言う。
ルークも頷いたのでラファエルが頭を撫でた。
「そうだよな! ルークの誕生日プレゼントもあるし、作りかけの御馳走もある。まぁ夜中だからささやかに茶会でもするか! ニナさん、よろしく」
「はい、ラファエル様」
二ナと呼ばれたメイドは去って行く。
調理場へ行くのだろう。
「じゃあ、また後で」
ラファエルが微笑んだ。
温かい屋敷に入り、少し安心したヴァレンティーナの心。
濡れた髪を掻き上げたラファエルは健康的に日に焼け、眉毛は凛々しく、瞳は琥珀のように金色に輝く。
目鼻立ちの整って、微笑みは優しく精悍な美青年だという事に気が付いた。
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