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野盗に襲われた二刀流令嬢

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「ぎゃーーはっはっは! カモ見っけーーーー!!」

 山道の脇、山の上から降りてきた野盗が五人。

「雨だし、ダメ元で来てみたが……いいのが引っかかってるじゃねーか!!」

「まさか……車輪が壊れる細工をお前達が!?」

「その、まっさかーー!! 女がいるぞ! いい女だ!」

 少年の馬車の故障は、野盗の罠だったのだ。
 男達がアリスを、舌なめずりして見る。

「野郎とガキと女か……おい! 野郎! 金と女と子供を置いて逃げるなら~見逃してやるぜ!!」

「……なんだと……」

 今更、男と勘違いされてもヴァレンティーナは何も思わない。
 しかし二人を置いて逃げるなど、言語道断である。

 野盗の連れた犬が、吠えて馬が怯えた鳴き声をあげた。

「おい、その躾のなっていない駄犬を黙らせろ」

「んだと……!?」

「あぁ……お前のような畜生以下には、犬に躾る事など無理な話か……」

 普段は黙って沈黙しているヴァレンティーナだが、言おうと思えばいくらでも罵倒の言葉など思いつく。
 キラリと彼女の抜いたレイピアが、輝いた。

「な、てめぇ~~~!!」

「生意気な野郎だ! レイピアだと……? まさか貴族か……!? やっちまえ!!」

 野盗は刃こぼれしたような、ただ重い鉄の剣を振り回してヴァレンティーナに襲いかかる。
 まず一緒に襲いかかってきた犬二匹は、アリスが石を投げ戦意を喪失させた。

「犬が!? だが、そんな細い剣で俺達がやれるかーーーー!!」 
 
「そうかな?」

 ヴァレンティーナが腰の短剣を抜く。
 流れるような二刀流だった。
 レイピアと短剣を使い、彼の剣を抜き取り大木に剣は突き刺さる。
 左右でレイピアと短剣の切っ先を目先に見せつけ、怯んだ瞬間に一瞬で切り刻む。

「ぎゃあああああっ!!」

 とは言っても、野盗のジレとシャツをバッテンに切り裂いただけ。
 致命傷を負ったと思わせて悲鳴をあげた瞬間に、回し蹴りで昏倒させた。
 すぐに四人は目を回してぶっ倒れ、アリスも一人倒す。

「あぁ~刺さっちゃった! でも悪いのはそっちですから~!」

 ヴァレンティーナのように、繊細な切っ先のコントロールを、夜の山道でするなど無理なのだ。
 アリスのレイピアの切っ先が、脇腹に食い込んだ野盗は叫んで、逃げていった。

「まぁ死にはしないだろう」

「殺してもいいんですけど……子供の前ですしねぇ」

 毛布にくるまって、馬車の下に隠れていた少年は泥だらけになって這い出てきた。

「怪我はないか?」

「す、すげぇ……」

 少年は、今更に震えて涙がボロボロと溢れる。

「あらまぁ」

「怖かったな」

「うえええええ」

 少年がヴァレンティーナに抱きついたので、ヴァレンティーナもよしよしと頭を撫でる。
 野盗が一人、目を覚ましかけたのでアリスが足で蹴り飛ばした。

「とりあえず、山を降りような」

「うん……!」

 その時、これから進むべき山道の坂の下から何やら声が聞こえてくる。

「まさか、野盗の仲間!?」

「……何か名前を叫んでいるぞ……」

「あっ!! この声はラファエルかも!!」

 馬の音と、男の叫び声。

「ルーーークーーーーー!!」

「ほら!! ラファエルだ! ラファエルーーーー!! 此処だよーーーー!!」

 どうやら少年の名前はルークというらしい。
 馬を走らせてきたラファエルという男。

「ルークーーーーーーーーーーー!! なんだこの状況!?」

 壊れた馬車に、倒れた男達。
 男はこの惨状を見て、驚いて叫んだ。
 そして、腰の剣を抜こうと手を伸ばす。
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