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月曜日・うわさのイケメンくん・その2

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「今日も遅くまでお疲れ様」

「利佳子もお疲れ様」

 今日は自転車で利佳子の家にやってきた隆太朗。
 玄関を出て出迎えた。
 ぎゅっと両手を握られる。
 いつも温かい手は自転車に乗ったことで冷えている。

 それでも……あったかい。
 
「おーっす、リュウ」

 玄関から利紀が、ひょっと顔を出した。

「ぎゃ! 利紀」

 バッと手を離したが、握り合っていたのはバレバレだろう。

「うーっすトシ。あんま時間ないから、邪魔しないでよ」

「わーってるっての。姉ちゃん、俺コンビニ行ってくるわぁ」

「あ、うん……気をつけるのよ」

「だからあがってけよ、リュウ」

「ありがとう~」

 利紀と隆太朗は高校で出逢った大親友。
 高校時代からよく遊んで家にも来た。
 高校生のブレザー姿の二人がすぐ思い浮かぶ。

「利佳子……好き」

 なのに、その彼から家のリビングで名前を呼ばれて、抱き締められて口付けされるなんて、思ってもみなかった。
 少し、舌が絡んできて心臓が跳ね上がる。
 強く抱き締められた後で、優しく撫でられた背中がぞくっと感じてしまった。

「んっ……」

「はぁ……ん、もうちょっと」

 言われてまた重なる唇。
 熱い唇に、熱くなる女の部分。
 濃く、深く絡む舌が……激しい。
 
「も、もう……帰ってくるだろうから」

「はぁ……う、うん……俺ももう帰らないとだ……寂しいや……はぁ」

 ほんの少しの時間。
 魔法が解ける時間……。

 帰る時、玄関でまた口付けをされるんだろうなと思ったら、額と頬にキスされた。

「唇にしたら……また、さっきのキスしたくなっちゃうから」

 キュンと、心の中で痛みとも切なさとも感じる感覚。

「お、おやすみなさい」

「うん、明日の約束……覚えてる?」

「えぇ。お泊まりね。用意していくわ」

 キリッと言う。
 
「仕事なのに、ワガママ言ってごめんなさい」

「いいのよ」

 そう、年下の男の子のワガママくらい。
 聞いて、最後にしましょう。

「明日は早く上がらせてもらう事になったから、またご飯とデザート作って迎えに行く!」

「えぇ!? そんな事できたの?」

「うん、なんかこの前……ちょっとテレビに写ったらお客さんが増えたから店長に御褒美に休み欲しいか? って言われてさ」

 やはり、あのテレビの反響はすごかったのだろう。
 店の見た目もスイーツも繊細だが、店長は豪快なクマのようだったのを思い出す。

「すごいわね……だって、すごくかっこよかったもの」

「え? み、見たのー!?」

 隆太朗のくせっ毛が耳のように飛び跳ねた。

「ぐ、偶然なんだけどね。教えてくれなかったから……見たって言わなかったの」

「わざと言わなかったわけじゃないんだけど……俺が映るなんて一瞬かと思ってたしさ。何時からやるかよくわからなくって……」

「いっぱい映ってたわね。イケメンだから」

「え……イケメン?」

 目をパチクリされて利佳子も思わずパチクリする。

「え? うん」

「利佳子がそう思ってくれてるってこと?」

「え、えぇ? みんなもそう思ってるわ」

「みんなじゃなくてさ。他の人なんかどうでもいいんだ。利佳子が……どうかって話」

「私が……?」

「俺……イケメンですか?」

「……そう、思うわ」

 利佳子ブレインもそれは100%そう思うと思って、頷いた。

「やったーー!」

 隆太朗が両手をあげて喜ぶ。

「こ、こら声が大きいわ」

 玄関なので、気になりながらも笑顔で喜ぶ隆太朗。

「えへへ、少しでも利佳子に釣り合うようになれたらいいなって思うからさ」

「わ、私に釣り合う?」

「利佳子はめっちゃ美人で素敵だから」

「何を言うの。そんな事あるわけないわ」

「なんで……? こんなに綺麗なのに……」

「地味でブスなおばさんよ」

「清楚で綺麗なお姉さんだよ……」

 自虐的に笑ったのに……。
 また抱き締められてキスをされた。
 そんな言葉を貰えるなんて思ってなかった……。
 何度もいつでも隆太朗は利佳子を褒めてくれる。

「じゃあ。明日はめっちゃ気合い入れるから楽しみにしててね~」

「うん……」

 尻尾を振る大型犬みたいに、隆太朗は手を振って帰っていった。
 胸がキュンとする。
 時間が短い……今日会える時間が……短い。
 こんな気持ちは初めてだ。
 でも利佳子ブレインはこの気持ちに名前を付けることを、拒絶した。

  
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