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木曜日・あなたは私に会いに来る。その1
しおりを挟む木曜日。
利佳子は会社に行くまでが、不安だった。
昨日のあの隆太朗の宣言を聞いて、二人は飲みながら何を話したのだろうか……。
隆太朗からのお詫びの品を持って、今日は朝から一駅歩いた。
美味しいケーキを、連日食べ過ぎているからだ。
「おはようございます」
「あ、課長~! おはようございまぁす!」
みんなが課長の利佳子を、少し怖いと思って距離を置くのに新人さんは違う。
今日も可愛く、キラキラと輝いている。
「昨日は驚かせてごめんなさいね」
「いいえー! あの後、ラブラブしちゃったんですか~? もしかして朝帰り?」
「ま、まさか。当然帰宅しています」
「えぇー! 付き合い始めなのにぃ~って、また怒られちゃう!」
きっと事務員さんに言われたんだろう。
テヘペロ! も利佳子から見ると可愛いものだ。
「付き合い始めというかね……付き合い終わりへ……というか。いえ、こっちの話。あの、これ彼からのお詫びなの」
変なことを口走ってしまったと思いながら、紙袋を渡す。
「えーお詫びぃ……ですか? なんの?」
「あの、彼が合コン参加をキャンセルさせたことを気にしていて……私からもお詫びしたいのだけど、とりあえず彼からのお詫びの品なの」
「ひゃ~!? そんなの全然! いいんですよぉ~!? ドタキャンとかふつーだし……って! こ、これ……めっちゃ有名店の!? うわぁ箱詰め~~!! うっそぉ!? こんなの貰っちゃっていいんですか?」
新人さんは、一気に興奮して周りの女性社員達も注目する。
「えぇ。彼からので……私からもお詫びを……」
「やったぁ~! ありがとうございますーーー! これだけで十分っていうか、すごすぎ! 課長めっちゃ愛されてるーーー! 溺愛~~!」
「愛され……!? で、できあい!?」
「こらぁ、また課長を困らせてる! 課長、おはようございます」
後ろから事務員さんが、やってきた。
「おはようございます。あの、昨日は突然驚かせてしまって……」
「いいんですよ。……でも落ち着いたら今度ゆっくり話を聞かせてくださいね!」
「え、えぇ」
事務員さんに話す頃にはもう……。
『振られてしまったわ』と笑い話にできるように頑張らなければ。
「えー私も話したいです~~! ってかこれ見てくださいよぉ!」
「わっ! すごいお菓子じゃない! 課長から?」
「じつはぁ~」
その後、新人さんは事務員さんにだけお菓子をお裾分けしていた。
どうやら昨日、二人で夕飯を食べて仲が深まったらしい。
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