13 / 37
水曜日のおうちデート・その3「隆太朗からのお詫びの品」
しおりを挟むイスに座ったままの利佳子は、動けない。
隆太朗の胸元にぎゅうっとされる。
「大好き……めちゃくちゃ大好き……」
繰り返される愛の言葉に、ドキマギしながら隆太朗の背中をそっと撫でた。
「あ! ご、ごめんなさい!」
「い、いいえ。紅茶が……ブロークンリーフなら蒸らし時間は三分よ」
「あ!」
隆太朗は気づき、台所へ飛んで行く。
はぁーと利佳子はやっと息ができたと心臓を押さえる。
冷静なふりをしたが心臓はドキドキしまくっていた。
隆太朗が紅茶を淹れるまで、何度も深呼吸して利佳子ブレインを起動させる。
あれは幼少の頃の弟とのハグと同じだ! そう思えばいい!
「ごめんなさい。なんか感極まっちゃって」
ティーカップを二つ、お盆に乗せてきた隆太朗。
「い、いいのよ。なんてことないわ。おほほ」
変に見栄を張ってしまう。
でも隆太朗はホッとしたような顔をする。それを見て利佳子も内心ホッとした。
「どうぞ、食べてください」
頬の紅い隆太朗の前でそっとレモンタルトを口に運ぶ。
「うん……とっても美味しい!」
そう伝えた後の隆太朗の微笑み。
優しい朝陽のような笑み。
ドキンとしてしまった。
この胸の高鳴りは……?
まさか……いいえ! そんな事はない!
彼と恋愛だなんて……ありえない、そう思わなければいけない。
利佳子ブレインは妄想を中断させた。
それからは美味しいお茶の時間。
「あと、これなんだけど……同僚の方に俺のせいで合コン断っちゃったお詫びに」
隆太朗が大きめの紙袋を持ってきた。
「え?」
「俺の店のお菓子の箱詰め、荷物になっちゃうけど渡してくれる?」
「そんな……」
利佳子もお詫びを考えていたが、まさか隆太朗がそこまで考えていたとは……と驚く。
隆太朗の店は、他県から訪れる人も多い有名菓子店だ。
ケーキやお菓子の詰め合わせは贈答用として喜ばれ、利佳子も何度も利用している。
「こんな立派なの……相当な値段でしょ」
「せめてものお詫びです」
「私からもお詫びするつもりだし、昼に話した時は、まだ参加者が全員了解したわけではないから……という事で店の予約もまだなのよ。だからきっと大丈夫。でもお気遣いありがとう」
「そっか! よかったぁ」
「ありがとう。絶対に喜ぶわ」
「いつか、俺が作ったお菓子でも贈答用になれるように頑張らないと」
「りゅうのお菓子でも、十分に美味しいのに……」
「ありがとう! 俺なんかまだまだお詫びにならない……でも頑張るよ」
若者が夢に向かう凛々しい笑顔。
利佳子も頷いた。
その後、片付けはいいと言われてしまう。
それから二人で、有料公開が始まったばかりの映画を見ることにした。
レモンのチューハイとポテトチップスを準備。
少し暗くして……映画が始まる。
「利佳子、怖いの大好きなんだもんね」
「ストレス発散になるのよー! わぁ観たかったんだ」
夢中で見る利佳子の横顔を、隆太朗はじっと見つめていた。
鍵のかかった屋敷に閉じ込められた男女グループを襲う、最悪の殺人鬼物語が始まる!!
映画鑑賞後。
ぎゅーっと隆太朗に抱きつかれた利佳子。
「も、もう終わったから、ね?」
「怖い、怖い……怖い~~グロかったよぉ」
「そうね、そうね。ごめんね。初心者向けじゃなかったわね」
「うえーん」
「私が悪かったわ。怖かったわね。よしよし……よしよし……」
怖がる隆太朗は本当に幼子にしか見えず、ドキドキはしない。
まるでゴールデンレトリバーに抱きつかれてるようだと、背中をナデナデした。
「もうっ! 俺はぁ犬じゃないよ!」
「だって、わんちゃんみたいなんだもの」
「やっぱり! 俺のこと犬だと思ってあやしてた!?」
「うふふ! だってぇ!」
つい大笑いしてしまって、頭を撫でた手を笑う隆太朗が掴んだ。
それもくすぐったいと、大笑いしてしまったらバランスを崩してドサッと隆太朗に押し倒される格好になった。
「あ……っ」
1
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
憧れの童顔巨乳家庭教師といちゃいちゃラブラブにセックスするのは最高に気持ちいい
suna
恋愛
僕の家庭教師は完璧なひとだ。
かわいいと美しいだったらかわいい寄り。
美女か美少女だったら美少女寄り。
明るく元気と知的で真面目だったら後者。
お嬢様という言葉が彼女以上に似合う人間を僕はこれまて見たことがないような女性。
そのうえ、服の上からでもわかる圧倒的な巨乳。
そんな憧れの家庭教師・・・遠野栞といちゃいちゃラブラブにセックスをするだけの話。
ヒロインは丁寧語・敬語、年上家庭教師、お嬢様、ドMなどの属性・要素があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる