異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ

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やっと二人きり……※エイシオ視点

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 父上の復帰にフレイグルス兄さんの婚約、イヨンの留学……ロードリア家は大忙しだ。
 僕も今までの事を償おうと、今日のパーティでは沢山の来客に挨拶し今後の事を頼む。
 
 皆に今までの冒険譚を聞かれたり、サインを子どもに求められたり……。
 大いにパーティーは盛り上がっている。
 僕は皆と笑顔で話しながら、一人の人を遠目からチラチラと見つめていた。

 アユム。僕の恋人。

 アユムは家族騒動のあとは、みんながアユムを大好きになった。
 調理場のみんなにも人気で、僕が嫉妬しちゃうくらい。
 でも家に帰ったら僕に作りたいって料理を聞いてるって……可愛すぎて悶絶してしまう。

「アユムは……かわいい……」
 
「エイシオ様? どうかされました?」

 あ、隣の男性に聞かれてしまった。

「し、失礼」

 僕の心はアユムでいっぱいだ。
 それで遠くから見ていると、ロードリア家のみんながそれぞれ話しかけて……。

「ウルシュ兄さんっ!?」

「エイシオ様!? どうされました!?」

 また、声に出てた。

「し、失礼……」

 ウルシュ兄さん、絶対アユムを狙ってる。
 近い! 近い!
 あ、ラミリアが間に入った!
 ラミリアグッジョブ!
 それからイヨンにシャルロットにソフィア様。
 みんな何を話しているんだろう。

 すごく気になって気になって仕方がなかったけど、とりあえず来客達への対応を済ませることに努めた。

 そしてやっと!!
 やっと君の傍へ行けるよ!!

「アユム! 大丈夫かい?」

「エイシオさん」
 
 僕は急いで駆け寄ると、アユムは微笑んでくれる。
 少し酔ったのだろうか?
 頬がほんのりピンク色だ。
 可愛い。

「一人にさせて、ごめんよ」

「いえ、皆さんと色々お話できて楽しんでました」

「そ、そうか。良かった」

「ちょっと寂しかったですけど、でも此処からカッコいいエイシオさんを見てました」
 
「アユム」

 心にジーンと染みるアユムの可愛い言葉。

「さっきソフィア様が、ザピクロス様を連れて行ったのが見えたけど……」

「はい。今晩はお泊りしてくるそうです」

「不安もあるけど、大丈夫か……。と、いうことはつまり……!!」

 アユムと二人っきりの夜……!
 恋人になって、なぜなぜどうしてあのアライグマに間に挟まれて一ヶ月以上……二人きりの夜が過ごせないでいた!
 しかし……今日!
 今日こそ二人きりの夜……!!

 僕はまるで、恋を覚えたての少年のようにドキドキする。

 うわ! 尻尾パタパタしまくってた!
 期待してるのがバレバレだ。

「今夜は二人でゆっくり眠れそうですね」

 僕の耳と尻尾を見て、アユムが優しく目を細めた。

 もうすぐ獣人化の時期も終わるだろう……獣人の時の方がきっとアユムは喜ぶよね……。

 この前の風呂場での続きを……あの時のアライグマは本当にムカついたな。
 いや、アライグマのことはもういい、もう今夜は思い出したくない。

 今日はアユムと二人きり……。
 あんな……こんな……。
 僕としたことが、相当な妄想をしてしまった。
 
 パーティーは皆が笑顔のまま終わり、来客の帰りを見送り……両親に挨拶をして二人で部屋に戻った。
 アユムはなんだかんだ、ずっと僕の部屋。

 アライグマがいないって、なんて静かで良いムードなんだろう。

 ノーアライグマ・ビューティフルライフ

「エイシオさん……」

「アユム、愛しているよ」

「俺もです……」
 
 僕達はキスを交わし抱き合って触れ合って……最高に幸せな夜を過ごして小鳥がさえずる朝を迎えたのだった。
 
 
 
 
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