異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ

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夕飯のあとに※エイシオ視点

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「ごめんねアユム、婚約破棄の話を何度もしようと思ってたんだけど……」

 僕は自室のベッドで、アユムを抱きしめる。
 
 我ながら情けない。
 アユムのおかげで、とても楽しい夕飯だった。

 僕にとって、両親とあんな近くで笑いながら食べるご飯なんて初めてで……。

 子どもの頃から威厳たっぷりの父だった。
 家族での夕飯は成績の話や、政治の話や、武芸の話をして、緊張しながら行儀よく食べて終わり。
 
 それが、みんなで鍋をつついて笑い合うなんて夢のようだった。

 言い訳の理由にはならないけど、あの両親の笑顔を曇らせるような話題ができなかった。

「俺に謝る必要なんてないですよ。部屋でしゃぶしゃぶなんかさせちゃって騒いでしまって俺の方こそすみませんでした」

「ものすごく楽しかったよ。感謝している。本当にありがとう」

 両親との食事に、こんな思い出ができるなんて思っていなかった。

 もう二度と、会わなくてもいいと思っていたのに……。
 僕は人生で失いかけていたものを、アユムに沢山プレゼントしてもらっている。

「明日には必ず、話をするよ」

「無理しないでくださいね」

「あぁ……大丈夫」

「う~~めっちゃ喰った喰った……げっぷげっぷ!」

 アライグマのげっぷ、ニンニクくっさ!

「ザピクロス様! やめてくださいよ! ……あっちのソファで寝てください」

「いやじゃも~ん、転移者殿~ぬくぬく」

 くそっ……またアユムの胸元に居座りやがったぁ……!
 さっさと、テンドルニオン様の神殿に行かないと……。

「明日は採寸なんですよね」
 
「我も、スーツ作って~~え?」

「ふふ、ザピクロス様がスーツ……可愛いですね」

「アライグマ用なんて作れないでしょう……。どうせなら、アユムと僕の結婚式のスーツを作ってほしいものだよ」

「ええっ」

「アユムは純白のスーツ……似合うだろうな」

 我ながらいい考えだ。
 薄いピンクなんかもいいかも。

「いやいや! 白なんて絶対無理ですよ! エイシオさんなら絶対似合うと思うけど」

「明日はアユムも採寸してもらおう。家は関係なく二人で注文しよう」

「ええ~」

「僕からのプレゼントだよ」

 可愛いアユム。
 僕の命を、エイシオ・ロードリアの命を狙ってる者よ。
 僕はもうロードリア家のエイシオではなく、アユムを愛する一人の男で生きていきたいんだ。
 それをわかってほしい。


 
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