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ザピクロス様ポイズン事件!?※アユム視点
しおりを挟むザピクロス様が突然現れて、突然毒だと言い出した……!!
えっえぇ!?
「うぐーーーぅ! 毒ぅ~~ポ、ポイズン……!!」
「すぐに吐き出すんですっ! 誰も食事に手をつけるな!」
エイシオさんが、ザピクロス様の尻尾を掴んでぶら下げたまま、お腹をチョップした。
皆それぞれの配下が、主を守るようにして事の顛末を見ている。
エイシオさんのお母さんや、妹さんも悲鳴をあげてるし、警備の人も大勢が駆けつけた。
「オロロロ!!」
俺も慌ててザピクロス様のところへ行って、上着を脱いでオロロするザピクロス様が隠れるよう配慮した。
「エイシオ! 一体なにごとだ! 毒だと!? どういうことだ!」
エイシオさんのお父さんが叫ぶ。
毒なんて、そりゃ混乱するよね……俺も心臓がバクバクしている。
オロロロし終わったザピクロス様を俺は抱っこして、水を飲ませる。
『大丈夫ですか?』と小さく聞くと『うみゅ』と小さく頷いて……俺の腕のなかでくったりした。
……可哀想に。
背中をさする。
まさか、こんな事になるなんて。
「毒を盛られたようです。……僕を狙っての犯行か……」
エイシオさんが悲痛な表情でみんなに言った。
「ロン! すぐに料理係を捕えろ! 配膳係もだ!」
「は!」
「ロードリア家でこんな暴挙は許され! ……ゴッホゴフ!」
「あなた!」
あぁ、お父さんが酷く咳き込んでしまい車椅子で運ばれていった。
更に続々と色んな人が入ってくる。
せっかくのお茶会は、そのままお開きになってしまった……が、ご兄弟達にエイシオさんが声をかけソファのある談話室に集まった。
「エイシオを暗殺しようとするなんてねぇ~~~? 帰ってきたばかりで大変だ。でも優秀なペットのおかげで助かってよかったね」
エイシオさんが飲食を止めたけど、ウルシュさんは自分で持ってきたワインを飲んでいる。
「ほ、本当に毒なんですか? ちょっと材料が傷んでいたとか……ないですか? まさかそんな」
イヨン君は涙目になっている。
大好きなお兄さんに毒を盛られるなんて……ショックだよね。
俺もずっとソワソワして落ち着かない。
でも、フレイグルスさんが険しい顔をして帰ってきた。
「吐き戻しを調べさせたが確かに毒が入っていたようだ」
「フレイグルス兄さん、色々調べてくれてありがとう」
「当然のことだ」
フレイグルスさん、あれからテキパキと色んな指示をしていた。
まるで警察のように、現場を保存するように言って聞き取りの指示もしていたし有能な方なんだろうな。
ちょっと怖いけど。
「毒なんて一体誰が……そのアライグマはもう大丈夫なの?」
ゆったりしたホテルのラウンジのようなチェア。
僕はザピクロス様を抱っこしてる。
距離はあるけど隣に座ったシャルロットちゃんが、心配してくれた。
もうすっかり元気なザピクロス様は、俺が持ってきていたトウモロコシを食べてる。
「身体は強い方なので大丈夫そうです」
神様だしね。
いや、神様なんだから毒とか関係あるの??
と今更思う。
「良かったわ。お利口なアライグマね」
「エイシオ兄様に一体誰が……料理係のせいでしょうか?」
「イヨン、みんな僕が子供の頃から仕えてくれている者達だ。彼らとは思えないし、父には慎重に動いてくれるように頼むつもりだ。冤罪など絶対に許されない」
ここの料理は美味しいって言ってたもんね。
きっと信頼している、親しい間柄なんだろうな。
「では……外部の……? 兄様が心配です! これ以上、此処にいては危険なことがあるかも……」
「うん。それも考えるよ。ありがとうイヨン」
「エイシオ兄様……」
「エイシオさん……」
此処にいたら危険?
どうしたらいいんだろう……。
「それで我がきょうだい達……父と母と……ラミリアはいないが、大事な話がある」
「なんだエイシオ、改まって」
皆が注目するなか、エイシオさんは息を吐いたあとに少し大きな声で言った。
「僕はラミリアと婚約も結婚もする気はない。この家を継ぐ気もない。必要ならばこの名前も返すつもりだ」
「エイシオ!?」
「へぇ~~そうなんだぁ」
「「エイシオ兄様!?」」
「……エイシオさん」
ご兄弟達の反応は、もちろん驚きだったけどエイシオさんは強い意志をもった目をしていた。
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