異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ

文字の大きさ
上 下
77 / 107

ザケンナアライグマ※エイシオ視点

しおりを挟む
 
 勇者エイシオ……。
 英雄なる獅子王……。
 いつでも笑顔で気高い冒険者……優しく皆を守る男……。

 いつも皆から、そう言われていた僕。

 僕は今、風呂場いにいる。
 そう恋人のアユムと……いい感じだった……。

 しかし……!!
 
「どうですかぁああああ!? ザピクロス様ぁーーーーー!? これでもう痒くないですよねぇえええ!?」

「ぎゃー! 我は勇者になんか頼んでないのに! あぶぶぶあぶあうわwqぶうwぼごいごごごごおご」
 
 そんな僕が人生で一番怒りと哀しみと怒りで我を忘れ、お邪魔虫すぎるアライグマの全身を洗ってやった。

 アユムもドキドキしてるのがわかって、僕だって最高潮にドキドキしてたのに!!

「どうですかぁ!? どうだぁあああ!? ゴシゴシ!! ゴシゴシ!!」

「うぎゃ!! ぼこぴぃいいいいー!! 我はトウモロコシじゃない! もげる!」

「泡もろこしになりなさい!!」

 くそっ……悔しさでアライグマを泡だらけにして、ボチャ! っとお湯の張った手桶に入れる。

「ぶふぅ~~~んもう勇者の洗い方ハードなんじゃから下手くそ! でも、さっぱりじゃ……お股ももう痒くない」

「お股は洗ってませんよ!? 自分で洗ってください!!」

「え~洗ってくれてなかったの? ケチ」

 いや、触りたくないから!

「ぶひ~~いい湯だなぁ~あははん」

 手桶で頭にタオルを置いて、ピカピカ光り始めたアライグマ。
 それを見て僕はため息をつき、苦笑いするアユムとともにバスローブで風呂を出た。

「我の身体も拭いてよ~~」

「自分の事は自分でしなさいっ!」

 一喝し、二人で冷えた蜂蜜酒を飲む。
 さっきの事を思い出したのか、アユムが少し照れたように微笑む。

「冷たくて美味しいです」

「うん……蜂蜜酒を飲むがアユム可愛い……」

「え!?」

 あぁ胸が高鳴る。
 もう二人の想いは、止められないんだ。

 あのアライグマを森に返してから、僕とアユムの甘い時間を楽しむ……そう決めよう。
 そしたらきっと神様ありがとうアライグマに会わせてくれてって思う日が来るはずだ。

「ふあ~今日はさすがに疲れちゃいましたね……」

 アユムが疲れでコクコクしだしたので、二人で僕のベッドで眠ることにした。

 可愛いアユム……はすぐに眠りにつく。
 僕はぐっすり……とはいかないな。
 明日の事を考えると、どうなることやら。

 父上は厳格な御方だが……今は持病で臥せっている事も多いとロンからの手紙で読んだ。

 もちろん僕が家を出て冒険者をやっている事には、大激怒で大反対されてきた。

「なんか……貴族みたいな生き方や考え方……理解はできるけど好きじゃないんだよな……」

 家の名は継がないと、何度も言っているのに書類も全て破かれて……僕は卑怯にも家を飛び出したんだ。
 今回も衝突するような事があれば、即座に家から正式に出ることを告げよう。
 
 母上は、典型的な貴族の令嬢がそのまま歳をとったような女性だ。
 綺麗なドレスと宝石と権力がお好きな方。

 正直でわかりやすいので別に嫌いではない。下の二人を産んだ側室をいびる事もなく、ただ毎日を優雅に楽しく生きたい女性だ。

 子供を産んだのだから、それだけで何よりも褒められるべき存在という考えだ。

「それは……まぁわかる……」
 
 育ててもらった覚えはないが産んでもらった事を、この歳になってやっと感謝できる気がする。
 
 お土産に持ってきたアンシュリテッド産の真っ赤な宝石を渡すつもりだ。

 大真面目な兄のフレイグルス……。兄さんにこそロードリア家を継いでほしい。

 跡継ぎ問題がなければ、僕が兄さんに恨まれる事もなく小さい頃のようにずっと仲良くできたのかな。
 あの、怒りと憎しみに満ちた瞳で睨まれる事になれることは一生ないだろう。
 
 して、とんだ変わり者のウルシュ兄さんは相変わらずなんだろうか……。
 頭は抜群にキレるのに……あの人は……遊び人で……。

「はぁ~~……クセの強い人ばっかり……」

 弟達の事まで考える前に、僕も長旅の疲れでそのまま意識が遠のいていった。

「我も寝る~~!! もぞもぞもぞ!!」

 あ……おい、やめろアライグマ……間に……入るな……。

 
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

【完結】僕はキミ専属の魔力付与能力者

みやこ嬢
BL
【2025/01/24 完結、ファンタジーBL】 リアンはウラガヌス伯爵家の養い子。魔力がないという理由で貴族教育を受けさせてもらえないまま18の成人を迎えた。伯爵家の兄妹に良いように使われてきたリアンにとって唯一安らげる場所は月に数度訪れる孤児院だけ。その孤児院でたまに会う友人『サイ』と一緒に子どもたちと遊んでいる間は嫌なことを全て忘れられた。 ある日、リアンに魔力付与能力があることが判明する。能力を見抜いた魔法省職員ドロテアがウラガヌス伯爵家にリアンの今後について話に行くが、何故か軟禁されてしまう。ウラガヌス伯爵はリアンの能力を利用して高位貴族に娘を嫁がせようと画策していた。 そして見合いの日、リアンは初めて孤児院以外の場所で友人『サイ』に出会う。彼はレイディエーレ侯爵家の跡取り息子サイラスだったのだ。明らかな身分の違いや彼を騙す片棒を担いだ負い目からサイラスを拒絶してしまうリアン。 「君とは対等な友人だと思っていた」 素直になれない魔力付与能力者リアンと、無自覚なままリアンをそばに置こうとするサイラス。両片想い状態の二人が様々な障害を乗り越えて幸せを掴むまでの物語です。 【独占欲強め侯爵家跡取り×ワケあり魔力付与能力者】 * * * 2024/11/15 一瞬ホトラン入ってました。感謝!

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

王子様から逃げられない!

白兪
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

漆黒の瞳は何を見る

灯璃
BL
記憶を無くした青年が目覚めた世界は、妖、と呼ばれる異形の存在がいる和風の異世界だった 青年は目覚めた時、角を生やした浅黒い肌の端正な顔立ちの男性にイスミ アマネと呼びかけられたが、記憶が無く何も思い出せなかった……自分の名前すらも 男性は慌てたようにすぐに飛び去ってしまい、青年は何も聞けずに困惑する そんな戸惑っていた青年は役人に捕えられ、都に搬送される事になった。そこで人々を統べるおひい様と呼ばれる女性に会い、あなたはこの世界を救う為に御柱様が遣わされた方だ、と言われても青年は何も思い出せなかった。経緯も、動機も。 ただチート級の能力はちゃんと貰っていたので、青年は仕方なく状況に流されるまま旅立ったのだが、自分を受け入れてくれたのは同じ姿形をしている人ではなく、妖の方だった……。 この世界では不吉だと人に忌み嫌われる漆黒の髪、漆黒の瞳をもった、自己肯定感の低い(容姿は可愛い)主人公が、人や妖と出会い、やがてこの世界を救うお話(になっていけば良いな) ※攻めとの絡みはだいぶ遅いです ※4/9 番外編 朱雀(妖たちの王の前)と終幕(最後)を更新しました。これにて本当に完結です。お読み頂き、ありがとうございました!

【完結】元騎士は相棒の元剣闘士となんでも屋さん営業中

きよひ
BL
 ここはドラゴンや魔獣が住み、冒険者や魔術師が職業として存在する世界。  カズユキはある国のある領のある街で「なんでも屋」を営んでいた。  家庭教師に家業の手伝い、貴族の護衛に魔獣退治もなんでもござれ。  そんなある日、相棒のコウが気絶したオッドアイの少年、ミナトを連れて帰ってくる。  この話は、お互い想い合いながらも10年間硬直状態だったふたりが、純真な少年との関わりや事件によって動き出す物語。 ※コウ(黒髪長髪/褐色肌/青目/超高身長/無口美形)×カズユキ(金髪短髪/色白/赤目/高身長/美形)←ミナト(赤髪ベリーショート/金と黒のオッドアイ/細身で元気な15歳) ※受けのカズユキは性に奔放な設定のため、攻めのコウ以外との体の関係を仄めかす表現があります。 ※同性婚が認められている世界観です。

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

処理中です...