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嵐の次の日※エイシオ視点
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次の日の朝、嵐は大分おさまってきていたが雨はまだ降っている。
僕は洞窟の入り口で空の様子を見ていた。
「うーん……馬車だし、無理をしてでも出るべきか。様子を見るべきか……」
馬は温めて、餌も与えて十分に休ませた。
ただ人間二人増えることになったから速度も遅くなるし、休憩も必要だ……。
「多分この嵐はまだ続くぞ」
「サピクロス様」
仕立て屋の二人は、アユムと一緒に朝食の準備中だ。
雨の音もあるし、アライグマの声は聞こえないだろう。
「水の神・ウェイティーンのネックレスからウェイウェイうるさく聞こえてくる。多分まだまだ雨は降るだろう」
「荒ぶっておられるのですか? この天気はウェイティーン様のせいですか?」
「いんや、自分の属性がフィーバーしていたら、なんか嬉しくなるもんなんじゃ」
「そういうものですか……では、出発した方がいいですね」
「そうじゃな」
僕達は三人の元に戻り、朝食を食べながら出発する事を伝えた。
次の目的地は小さな村だ。
嵐の被害を受けていないといいな……。
あ、アユムが少し不安そうだな。
二人も冒険者ではないし、不安もあるだろう。
「大丈夫さ、こんなピンチは何度もあったが僕は何度も切り抜けてきた」
「エイシオさん……はい」
僕が笑うと、アユムの緊張が少し緩む。
後ろでダニーまで頷く。
「そ、そうですよね。エイシオ様が一緒なんですもの。何も心配はいらないですね」
「ダニーも馬車の運転は頼むよ。僕と二人で交代だ」
「はい」
昨日のうちに、アユムは従者ではないこと、馬車の運転はできないこと、など告げた。
この世界では男で馬車の運転ができないなんて、かなり変わっていることだ。
なので遠い国の、良い家柄の子息という事にした。
疑う気持ちがあっても、まぁ口には出さないだろう。
実際、アユムは品があるし可愛いし、黒髪も黒い瞳も潤んでとてもセクシーだ。
東の国の王子様と言われたら信じてしまう……。
アユムに話したら笑われたけど、僕はそう思うんだよ。
「道が相当ぬかるんでいるだろうから、後ろに座ってる時も気をつけるんだよ」
「はい」
荷物の準備をして、まずは洞窟のあった森を抜けねばならない。
ダニーに先に歩いてもらって道の確認をしてもらいながら、僕が馬車を運転をするつもりだ。
「ねぇねぇ、そのアライグマ、ちょっと私も抱っこしていい?」
「あ、はい。いい……ですか? ……はい、大丈夫ですよ」
今まで我慢していたのか、シャンディがアライグマを抱っこしているアユムに話しかける。
あ、アライグマのやつ、急に尻尾を振り出した。
シャンディも冒険用の地味なシャツにズボンのような格好だが、逆にスタイルが良いのがわかる。
アライグマがポーンとアユムの手から飛び出て、シャンディの豊かな胸元に着地しようとした、その時。
「きゃああ!」
ビリビリッという音がして、シャンディがボーンとザピクロス様を放り投げた。
あ……テンドルニオン様か……?
すかさずアユムがキャッチするが、まだザピクロス様の周りをビリビリっと目で雷が確認できた。
「ご、ごめんなさい! すごく強い静電気みたいなものが! アライグマさんは大丈夫!?」
「大丈夫ですよ、この子……静電気体質で、あはは。シャンディさんこそ大丈夫ですか?」
「えぇ……私は大丈夫……本当にその子大丈夫?」
「は、はい。丈夫なんで、多分……あはは」
アライグマはヒクヒクしていた。
大丈夫か。
僕は洞窟の入り口で空の様子を見ていた。
「うーん……馬車だし、無理をしてでも出るべきか。様子を見るべきか……」
馬は温めて、餌も与えて十分に休ませた。
ただ人間二人増えることになったから速度も遅くなるし、休憩も必要だ……。
「多分この嵐はまだ続くぞ」
「サピクロス様」
仕立て屋の二人は、アユムと一緒に朝食の準備中だ。
雨の音もあるし、アライグマの声は聞こえないだろう。
「水の神・ウェイティーンのネックレスからウェイウェイうるさく聞こえてくる。多分まだまだ雨は降るだろう」
「荒ぶっておられるのですか? この天気はウェイティーン様のせいですか?」
「いんや、自分の属性がフィーバーしていたら、なんか嬉しくなるもんなんじゃ」
「そういうものですか……では、出発した方がいいですね」
「そうじゃな」
僕達は三人の元に戻り、朝食を食べながら出発する事を伝えた。
次の目的地は小さな村だ。
嵐の被害を受けていないといいな……。
あ、アユムが少し不安そうだな。
二人も冒険者ではないし、不安もあるだろう。
「大丈夫さ、こんなピンチは何度もあったが僕は何度も切り抜けてきた」
「エイシオさん……はい」
僕が笑うと、アユムの緊張が少し緩む。
後ろでダニーまで頷く。
「そ、そうですよね。エイシオ様が一緒なんですもの。何も心配はいらないですね」
「ダニーも馬車の運転は頼むよ。僕と二人で交代だ」
「はい」
昨日のうちに、アユムは従者ではないこと、馬車の運転はできないこと、など告げた。
この世界では男で馬車の運転ができないなんて、かなり変わっていることだ。
なので遠い国の、良い家柄の子息という事にした。
疑う気持ちがあっても、まぁ口には出さないだろう。
実際、アユムは品があるし可愛いし、黒髪も黒い瞳も潤んでとてもセクシーだ。
東の国の王子様と言われたら信じてしまう……。
アユムに話したら笑われたけど、僕はそう思うんだよ。
「道が相当ぬかるんでいるだろうから、後ろに座ってる時も気をつけるんだよ」
「はい」
荷物の準備をして、まずは洞窟のあった森を抜けねばならない。
ダニーに先に歩いてもらって道の確認をしてもらいながら、僕が馬車を運転をするつもりだ。
「ねぇねぇ、そのアライグマ、ちょっと私も抱っこしていい?」
「あ、はい。いい……ですか? ……はい、大丈夫ですよ」
今まで我慢していたのか、シャンディがアライグマを抱っこしているアユムに話しかける。
あ、アライグマのやつ、急に尻尾を振り出した。
シャンディも冒険用の地味なシャツにズボンのような格好だが、逆にスタイルが良いのがわかる。
アライグマがポーンとアユムの手から飛び出て、シャンディの豊かな胸元に着地しようとした、その時。
「きゃああ!」
ビリビリッという音がして、シャンディがボーンとザピクロス様を放り投げた。
あ……テンドルニオン様か……?
すかさずアユムがキャッチするが、まだザピクロス様の周りをビリビリっと目で雷が確認できた。
「ご、ごめんなさい! すごく強い静電気みたいなものが! アライグマさんは大丈夫!?」
「大丈夫ですよ、この子……静電気体質で、あはは。シャンディさんこそ大丈夫ですか?」
「えぇ……私は大丈夫……本当にその子大丈夫?」
「は、はい。丈夫なんで、多分……あはは」
アライグマはヒクヒクしていた。
大丈夫か。
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