異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ

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ラミリアさんの怒り※アユム視点

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 ラミリアさん、停止してる……。
 けど、俺も……思考停止……。

「アユム、愛してるよ」

「……あ、あの……俺……」

 こ、こんな目の前で……い、言っちゃっていいの?
 大丈夫なのかな?
 
「ふっ……ふざけないでよ!」

 ラミリアさんの顔が、どんどん険しくなる。

「なに? アユムは女だったの!?」

「違うよ。アユムは男性だ」

「じゃあ、なんなの!? 二人でからかってるの!?」

「ふざけても、からかってもいないよ。男性でも、アユムが好きなんだ」

 ドン! とラミリアさんは両手をテーブルに打ち付けた。
 コーヒーカップが倒れるが、ラミリアさんは構う気はない。

「エイシオ・ロードリア! いい加減にしなさいよ! 貴方、自分の立場をわかってない! 次期当主になるべき名前を受け継いでいる人がバカな事ばっかり……!」

「だから僕はそんなものいらない。こんな名前なんていつでも捨てるよ」

「男と付き合いますって言えば、まわりが諦めるとでも思って? 貴方はずっと女性が恋愛相手だったじゃないの!」
 
「今までがそうだったってだけさ、今はアユムが好きなのは確かなんだ。まわりは関係ない。この気持ちは本物だよ」

 エイシオさん。激高するラミリアさんの前でも、冷静に話し続ける。

「アユムまで、こんな茶番に協力してるの?」

 怒って睨みつけてくる顔はすごい迫力があって怖い……。
 でも、でも……。
 
「……俺もエイシオさんが、好きです」

「はぁ~~!? あんた昨日の今日でよくそんな事言えるわね!」

 一気に放出する怒り。オーラのように見えた気がした。

「ラミリア、もう出て行ってくれ」

「私の想いをあれだけ聞いておいて! よくも!」

「……す、すみません……」
 
 激しい怒りでラミリアさんの瞳がギラギラ見開かれる。
 そうだよな……俺、最低だ。
 ラミリアさんのエイシオさんを想う話、聞いてたのに……。

「あんたさえ! あんたなんかが! エイシオに近寄らなければ!」
 
「ラミリアやめろ! アユムは関係ない! 君の押し付けにはうんざりなんだ……」

 エイシオさんが自分の背中に俺を隠すように立ってくれた。

「こんな事をロードリア家が許すはずないわ」

「どうでもいいよ。君の期待に応えられなくてすまない……。さようならラミリア」

「……っ! 私は……諦めない……っ」

 ラミリアさんは、最後には涙を流して出て行った……。
 俺の事を睨んで……。
 あぁ……誰にも構われたりしない俺だから、あんなに激しい怒りをぶつけられたのは初めてだ。
 情けないけど、ガクガク身体が震えだす。

「ごめんよ。アユム……嫌な思いをさせたね」

「いえ……エイシオさんのせいじゃ、ないです……でも傷つけちゃったなって」

「僕の罪だよ……でも、それでも傍にいてほしいんだ」

 エイシオさんの……瞳はいつも綺麗。
 ロードリア家の人は大丈夫なのかな。
 許すはずないよね。

「……これから、大丈夫なんでしょうか」

「大丈夫、僕が必ず君を守るよ」

 俺は酷い人間だ。
 つい瞬間まで、恨まれた憎まれた恐怖を感じていたのに……。

 抱き締められて、安心してしまうなんて……。
 
 抱き締められた腰に尻尾が巻き付いてきて、また……ドキリとしてしまう。
 
 テーブルの上で倒れたカップから、溢れたコーヒーが床にポタポタと流れていた。
 
 
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