異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ～間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中～

いいことを思いついた※エイシオ視点

　大満足の食事のあと。
　ソファに腰掛けて僕たちは料理の本を読む。

　読むというか、僕が読んであげる。
　アユムはこの世界の文字を勉強中。

「あ……この料理、ほぼ生姜焼きだ」

「美味しそうだね。是非食べてみたいな」

「はいっ」

　驚いた事にアユムの来た世界と僕の世界は食材も料理も似ている。
　何故かと考えても、そんな事はわからない。
　アユムが食生活に困らなくて良かった、と思うだけだ。
　一度、冒険先で食事が合わずに苦労した事を思い出す。

「明日は一緒に、市場へ行こう」

「えっ……いえ、エイシオさんは家で安静にしていてください」

　怪我が治るまでは当然休みだ。
　というか、あのパーティーが復帰できるのはいつだろうか。

「こんな怪我は平気だよ」

　ソファでお互いの片膝に本を置いているので足も肩も触れ合っている。

　なので、実は僕はドキドキしている。
　一日で一番距離が近い時間だ。

「俺が買い物してきますから」

「アユム、久々の連休だ。怪我は気にせずに美味しいランチを食べに行こう」

「あっ……そうですね。エイシオさんはいつも一日しかお休みがないですもんね」

　お金には困っていないのだけど、何かしら助っ人を頼まれたりして忙しい。
　これを機会に仕事も少し減らそうかな。

「……そうだ！　切り傷にも効くという『シャルバーンの湯』に泊まりがけで行こうか」

　我ながら良い事を思い付いた！

「湯……温泉ですか？」

「うん、アユムもいつも家事を頑張ってくれている。だから二人でゆっくりしよう」

「俺も一緒でいいんですか……でもお金が……」

「お金の事なんか気にしなくていいよ。僕がアユムと一緒に行きたいんだ」

「え……う、嬉しいです」

「明日、ゆっくり準備して出かけよう。朝に馬車だけ手配してくるよ」

「俺も一緒に行きます。怪我が治るまでは、いつも一緒にお供しますから」

「アユム……」

　なんて優しい人なんだろう。
　僕の家に天使がいる。
　不謹慎だけど、怪我の功名とはまさにこの事かもしれない。