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ふーふー※エイシオ視点
しおりを挟む僕の不注意で怪我をして帰ったら、アユムが泣く程に心配してくれて……。
大反省しなきゃいけないのに、僕はすごく胸がキュンとしてしまった。
しかも落ち着かせるふりをしながら抱き締めてしまった。
最低……と言われる行為かもしれない。
物心ついた頃から、真面目に品行方正に生きてきたつもりだ。
どんな女性にだって紳士にスマートに対応してきた。
なのに僕の欲求で……抱き締めずにはいられなかった。
アユムが抱き締め返してくれた時は、嬉しくてもうドキドキだった。
どうして、こんなにも制御が利かなくなるんだろう?
そしてアユムが熱々のグラタンは危ないからと皿に取り分けて、ふーふーして冷ましてくれた。
これは……と僕の胸は高鳴りは無意識に口を開いていた。
親の愛情をもらう雛鳥のように……。
「えっ」
「えっ」
えっ
えっ!?
こ、これは……僕の盛大な勘違い!?
アユムの顔が赤くなっていく……。
僕も冷や汗が出てくる。
これはダンジョンルート間違いをしてしまったという事か?
まて冷静になるんだ! 僕は勇者とさえ言われている冒険者だっ。
これまで何度もピンチをくぐり抜けてきた!!
のに、今が一番ピンチな気がしてくる!!
エイシオ! 冷静になれ!
「あ~ん」
……そして当然のように、僕はそのまま口を開けて要求した。
「えっ……あ、はい……そうですよね。か、片手だと食べにくいですもんね」
押し切りだ。 此処で焦って恥ずかしがれば奈落の底に落ちるぞ……。
「あぁ、そうしてくれると嬉しい」
表情はクールな勇者になっていると思う。
「あの、アツアツなんですが……俺がふーふー……したらキモイですよね」
嬉しい。嬉しいよアユム。
「火傷しないように気遣ってくれて、ありがとう。
ありがたく思うよ、お願いしたい」
クールだ。表情はクールに……いつもの僕のまま! なはずだ。
「あ、そうですよね。火傷が一番困りますね。じゃあ失礼して……ふーふー」
自分がものすごく幼稚に思える。
でも、それでも……。
「あ~ん」
「あ~ん」
程よい温かさのグラタンをアユムに口に入れてもらう。
「ん……美味しい!」
「本当ですか。嬉しいです」
「こっちのスパイスをもう使いこなしてるね。トマトソースが抜群だ。
ひき肉も自分でミンチに? アユムはすごいよ!」
アユムの料理は魔法だ。
ひき肉とトマトが層になってチーズが香ばしい。
「そんなに褒めてもらって……へへ。ありがとうございます」
照れて微笑むアユム。
僕は今、ものすごく幸せだよアユム。
「ふ~ふ~。では、あ~ん」
「あ~ん」
パンも千切って口に入れてくれた時は、唇に指が触れて鼻血が出そうになった。
僕はどうしてしまったんだ。
でも幸せすぎる。
五回目でこれではアユムが食べられないと気付いて、自分で食べる事にしたけれどとても尊い時間だった。
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