その日、エミリーは

Violet

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人には総じて得手不得手がある

その日、エミリーは

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「それで、たまたまあなたが屋敷を後にする姿を見てしまったんですよ、」

「そ、そうですか、ご挨拶もぜずに申し訳ありませんで、」

「まったくですよ」

エルは眉間にシワを寄せている
不手際でもあったのだろうか
きちんと退職手続きをしてきたはずなのにとエミリーは悩む

「屋敷の角を曲がる時、あなた小走りになりましたね?」

エミリーはギクッとする

「そして相変わらずど下手くそなスキップを踏みましたね?その後跡形もなく魔法で逃げましたね?お陰で探すのに一年も掛かりました、」

エミリーの額からはつつぅっといけない汗が流れ始めた
背中もひやっとする汗がじわじわ出ていた

「ねえ?ヴァネッサお嬢様?」

「ひぃっ!!!」

気が遠くなりそうだったエミリーの目の前に彼女の顔を掴んだエルの顔が迫っていた

















「まさか、ケヴィンお坊っちゃまも噛んでるとは思いませんでしたよ、いつも私の前で今にも死にそうな悲痛な顔は演技だった、と、」

「ほら、お兄様は私に甘いから」

「てへっと笑っても騙されませんよ」

「だってぇ」

「それに辺境伯爵家はヴァネッサお嬢様の親友のローズ様のお家ですよね?打倒王室の狼煙を上げた、…辺境伯爵家も暗躍されていたとは」

「Win-Winよね」

「それにいつの間にあんなに魔法を研鑽されたんです?」

「お城のね魔法使い達と仲良くなって陛下達に押し付けられた書類をさっさと終わらせてずっと魔法の修行してたの、陛下達の公務なんて五分で終わらせられるくらいの簡単な物しかなかったけどね、あの二人が浮気してたのは何とも思わなかったわ、お似合いだと思ったし上手く婚約を無かったことにできるかなって、それで、」


久しぶりにエルの入れてくれたお茶を飲む
エミリーはやっぱりエルのお茶は美味しいなあと久しぶりの美味しいお茶を堪能する
魔法で入れるお茶とは少し違うなとエミリーは少し険しい顔で思案しているエルを見る


「ケヴィンお坊っちゃまがお持ちだったあの浮気の決定的瞬間どうやって手に入れたのかと思ったらお嬢様でしたか、王室のプライベートエリアの、」

顔を上げたエルが眉間に皺を寄せていた

「ええ、良く撮れていたでしょう?」

「今あの証拠の映像が巷に溢れかえって廃太子になるそうですよ陛下達も仕方なく決定したらしく、」

エルはとても呆れた顔をしていた

「お城のね働いている方々とか魔法使い達も協力してくれたのよ、皆とても親切だったわ」

エルが口を引き締めた

「へえ私を除け者にして、…へえそうなんですか
お嬢様にとって私はその程度なんですね?」

元ヴァネッサ現エミリーは慌てた
昔からエルが怒った時は怖くて堪らないのだ
木登りをした日などお尻ペンペンの刑をされお尻が腫れ上がったものである

「と、時が来たらお兄様がねっ、エルにきちんと話してって言う計画でね?ほらまだ色々問題がね?」

「私の悲しみなぞどうでも良いと、」

エルが悲しそうに目を伏せ影を落とした
手で顔を覆い肩を震わせた

「え、エルの王室の影がね、今は此方側だけどその影がいつ寝返るか分からないからってお兄様が、影?とか?何かよく分かんないんだけどね?
おいそれとバレる訳にはいかなかったのよ?ごめんね?エル、本当はあなたと一緒に逃げたかったの、許して?エル、」

エミリーの懇願にエルは泣き真似を止めた
その言葉が聞きたかったのだとほくそ笑んだ

「スキップと嘘が下手なお嬢様にしては頑張りましたね
…お嬢様いい加減姿変えの魔法解いたらどうですか?私にヴァネッサお嬢様のご無事なお姿をお見せください、」

エルがエミリーに促す
エミリーは立ち上がり本来のヴァネッサの姿に渋々戻した
流れるストロベリーブロンドは光輝いて美しい顏は一年前と変わらないことをエルは確認する

「変わらなくて嬉しいですお嬢様漸く会えて嬉しいです、」

エルの瞳から今度こそ本当に安堵の涙が溢れた

「エル、」

思わずエミリーも涙ぐんでしまう

「それじゃ、私も姿変えの魔法解きますね、」

「へ?」

「せっかく会えたのだから本当の自分で抱き締めたいんです」

「え?」

エルが指でパチリと鳴らすとそこには見慣れた人物が立っていた

時々公爵家に遊びに来ていた兄の親友の王弟殿下だった









その日エミリーは人生で二回目の金切り声を上げた







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