大将とマリちゃん

松田 かおる

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「感謝」のこと

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「ねー、大将?」
「なんだい、マリちゃん?」

「今日、なんの日か知ってる?」
「新嘗祭の日?」
「じゃなくて」
「勤労感謝の日?」
「そう」
「で、勤労感謝の日がどうかした?」
「なんとなーく、どの辺が『勤労感謝』なのかなぁ、って思うんだよねー」
「勤労をたっとび、生産を祝い、国民がたがいに感謝しあう」
「どこかからコピーしてきたようなご説明をどうも」
「いえいえ」
「でもさー、そうとわかっていても、『勤労』を『感謝』されたいと思うんだよねー」
「そうなの?」
「こうして毎日、祭日でも開けてる大将のお店で頑張ってるんだからさ、たまには『マリちゃん頑張ってるねー』とか言ってもらえないかなー、って」
「で、ついでにお客さんから『ごほうびの一杯』にもありつけたら…って?」
「そうそ…じゃなくて!」
「うーん…じゃあおれからの『感謝』」

ぴら。

「ん? 明細?」
「本当は現金で渡せれば…と思ったんだけど振込だから、紙一枚でちょっと味気ないけど」
「そんなことないよ、これ見ると『今月も頑張ったなあ』って実感できるし…あれ?」
「どうかした?」
「時給、上がってるよ?」
「下がったほうが良かった?」
「そんなことあるわけないじゃん! でもどうして?」
「祭日でも開けてるお店に来て、いつも頑張ってるマリちゃんに『感謝』」
「大将!」
「これからもよろしくね」
「ありがとう! もう大好き! 一生ついてっちゃう!」
「…え?」
「え?」
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