千物語

松田 かおる

文字の大きさ
上 下
37 / 43

ほしに願いを

しおりを挟む
「…目標を確認、これより迎撃します」
俺はそう言うと、手元のレーザー砲発射スイッチを押す。
それに反応して、無音だが一瞬まばゆい光を放ち、レーザーが発射される。
そして文字通り、瞬きするほどにもならないあっという間にレーザーは目標に命中し、窓の向こうでこれもまた音もなく粉砕された。

「…ふー、任務完了」
俺は溜め込んでいた息を吐き出し、任務完了を告げる。
周りには誰もいないのだが、こうして口に出すのが癖になってしまっている。
そして窓の外の地球を眺める。

いつの頃からか、地球に大小いくつもの隕石が降り注ぐようになった。
そのため各国は宇宙空間に迎撃用有人衛星を打ち上げ、俺のような者たちが迎撃する任務を担うようになった。

一度宇宙に上がると何年も戻れなくなるのだが、「地球を守る」という目的のもと、たった一人でも任務を遂行できている。

時には俺がいる迎撃用衛星からでは迎撃できないほどの大きさを持つ隕石もあり、手が出せずに歯痒い思いをすることもある。
だが、できないことをしようと思っても無駄なことだ。
俺は俺にできる任務を遂行するだけだ。

いつかそこに戻れることを、青いほしに願いながら…

そんなことを考えていたら、遠くの宇宙空間をかなり大きい隕石が地表目がけて落ちていった。
どこかの部隊の衛星が何発かレーザーを発射したようだが、隕石には全く効き目がなく、結局は地表に落ちていくのを眺めていることになるだけだった。

あれだけの大きさの隕石が落ちて、地表は大丈夫なのだろうか…
しかも日増しに隕石自体も大きくなっているようだ。
「本部」に連絡を取ってもなぜか返事は戻らず、地表の様子を窺い知ることはできない。

隕石の大きさに比例して俺の心配も大きくなるのだが、「本部」からは落下する隕石の座標を知れせてくるので、きっと無事なのだろう。
だから俺は次の指令を待ちながら、いつか地球に戻ることを夢見る日を過ごす…



一方その頃、地球では…

大隕石が降り注ぐ地表はひどい有様で、すでに何ひとつとして動くものはなかった。
もはや生物が生きていくことはできなくなっている。

そして地下の「本部」は…
宇宙空間に配置されている迎撃用衛星に最新の情報を送信し続け、「任務」を遂行している。
ただしそこに人の姿はなく、防空レーダーからの情報をシステムが機械的に処理し、適切な指令を各衛星に下すだけだ。

そしてこの瞬間も、無人のシステムは機械的に迎撃命令を下し続ける…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

バーチャル女子高生

廣瀬純一
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

処理中です...