36 / 43
冷めたホットサンド
しおりを挟む
先週、そこそこの間付き合っていた彼と別れた。
別に喧嘩をしたわけじゃないのだけれど、長いこと付き合っているうちに
「なんとなく違うかも」
という感情が芽生えていたのだ。
彼も同じようなことを感じていたらしく、特に揉めることもなくあっさり別れた。
「…あー、やっちゃった」
土曜日の朝。
ホットサンドメーカーで焼きあがった二人分のホットサンドを見て、思わずわたしはつぶやいた。
今までの癖で二人分作ってしまったのだ。
さすがに一人では一度に食べきれない量なので、作りすぎた分はお昼にでも食べることにした。
翌日、日曜日。
思うところがあって、彼を家に招いて昼食をごちそうした。
二つ返事…というほどではなかったけれど、彼は来てくれた。
早速食事を出す。
「…何これ?」
彼は目の前に置かれた「冷めたホットサンド」を見てつぶやく。
別に意地悪で出したわけではないので、
「まあまあ、いいから食べてみてよ」
と勧める。
彼は気乗りしなさそうに一口かじると、
「マズい」
とつぶやいた。
もちろんそれはわたしも解っている。
改めて暖かいホットサンドを出す。
彼は
「うん、やっぱりこっちがうまい」
と、少し顔をほころばせた。
「ね、食べながらでいいから聞いて?」
わたしはホットサンドを食べている彼に向かって言う。
「わたしも昨日冷めたホットサンド食べたんだけどさ、同じ感想だったのよね」
「……」
「確かにあったかい時と比べたらマズかったんだけど、なんていうか、『冷めて少し味が出た感じ』がしたのよね」
「…それで?」
ホットサンドを飲み下した彼が口を開く。
「…時間が経っても悪くなるだけじゃなく、今までとは違った面も見せてくれるんだな…って思って」
「……」
「そしたら、不意にあなたのことを思い出しちゃって…」
彼はお茶を一口飲んで、わたしの言葉を待っている。
「つまり、冷めちゃったから見えてくるものもあるのかな…って。だからわがままなお願いだってわかってるんだけど…またやり直せない…かな?」
そう続けたわたしの言葉を受けて、彼は少しの間考えるような表情を見せる。
「…俺は、あったかい方のがいいなぁ」
やがて彼が口を開く。
「でも、冷めたものを『同じ具材』で作り直すのもいいとも思う」
「…それじゃあ」
「そういうのもありかなぁ…って」
その言葉を聞いたわたしの顔を見て、
「じゃあ、改めて新しくホットサンドを作りなおして、熱いお茶でも淹れてもらおうかな」
そう言って彼はにこりと笑った。
別に喧嘩をしたわけじゃないのだけれど、長いこと付き合っているうちに
「なんとなく違うかも」
という感情が芽生えていたのだ。
彼も同じようなことを感じていたらしく、特に揉めることもなくあっさり別れた。
「…あー、やっちゃった」
土曜日の朝。
ホットサンドメーカーで焼きあがった二人分のホットサンドを見て、思わずわたしはつぶやいた。
今までの癖で二人分作ってしまったのだ。
さすがに一人では一度に食べきれない量なので、作りすぎた分はお昼にでも食べることにした。
翌日、日曜日。
思うところがあって、彼を家に招いて昼食をごちそうした。
二つ返事…というほどではなかったけれど、彼は来てくれた。
早速食事を出す。
「…何これ?」
彼は目の前に置かれた「冷めたホットサンド」を見てつぶやく。
別に意地悪で出したわけではないので、
「まあまあ、いいから食べてみてよ」
と勧める。
彼は気乗りしなさそうに一口かじると、
「マズい」
とつぶやいた。
もちろんそれはわたしも解っている。
改めて暖かいホットサンドを出す。
彼は
「うん、やっぱりこっちがうまい」
と、少し顔をほころばせた。
「ね、食べながらでいいから聞いて?」
わたしはホットサンドを食べている彼に向かって言う。
「わたしも昨日冷めたホットサンド食べたんだけどさ、同じ感想だったのよね」
「……」
「確かにあったかい時と比べたらマズかったんだけど、なんていうか、『冷めて少し味が出た感じ』がしたのよね」
「…それで?」
ホットサンドを飲み下した彼が口を開く。
「…時間が経っても悪くなるだけじゃなく、今までとは違った面も見せてくれるんだな…って思って」
「……」
「そしたら、不意にあなたのことを思い出しちゃって…」
彼はお茶を一口飲んで、わたしの言葉を待っている。
「つまり、冷めちゃったから見えてくるものもあるのかな…って。だからわがままなお願いだってわかってるんだけど…またやり直せない…かな?」
そう続けたわたしの言葉を受けて、彼は少しの間考えるような表情を見せる。
「…俺は、あったかい方のがいいなぁ」
やがて彼が口を開く。
「でも、冷めたものを『同じ具材』で作り直すのもいいとも思う」
「…それじゃあ」
「そういうのもありかなぁ…って」
その言葉を聞いたわたしの顔を見て、
「じゃあ、改めて新しくホットサンドを作りなおして、熱いお茶でも淹れてもらおうかな」
そう言って彼はにこりと笑った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる