千物語

松田 かおる

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アイツ

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同い年で家も隣同士の、いわゆる「幼馴染」のアイツとは、小さい頃から何かにつけ張り合い続けてきた。

一番古い思い出は幼稚園の時。
「どちらが三輪車で塀まで近づけるか」という、今考えると本当にくだらない勝負をしたことだった。
早い話が「チキンレース」だけど、結果はお互いに譲らず二人揃って塀に激突。
でかいたんこぶを作った上に、両親にしこたま叱られた。

それからというもの、大につけ小につけアイツとは何かと張り合い、競い合うようになった。

小学生の時は「スイカの早食い」でお互いにお腹を壊して、これもまた両親にこっぴどく叱られた。
中学生になったら「期末テストの合計点数」で競い合い、二人とも同点という結果を繰り返して来た。
高校は「どちらが上のランクの高校に行けるか」を競い合った結果、同じ高校に入学。
そのあと生徒会長選挙に二人とも立候補して落選、「書記」と「会計」の役職を務め上げた。
そして大学も、学部こそ違ったけど同じ大学に進学。
そこでも色々と競い合って、最終的に二人揃って主席で卒業する結果になった。

就職する時もアイツと張り合った結果、二人揃ってそこそこ有名な会社に入社した。
しかもアイツと同じく営業職に就いたおかげで、競い合いは一層エスカレート。
二人揃ってトップの成績をたたき出して、「営業部の鉄壁ツートップ」と呼ばれるようになってしまった。

ただ最近、お互い大人になったし「いつまでもくだらないことで競い合ってもいられない」と考えるようになってきた。
なのでアイツを誘って飲みに行ったこともあったけど、ここでも結局飲み比べになってしまい、二人揃って同時に酔い潰れることになった。


そんな様子を見ている職場の同僚やお互いの両親は、「付き合っちゃえ」だの「結婚しちゃえ」だのと、冷やかし半分・本気半分で言ってくるようになった。

そういったことを意識したことがないといえば嘘になるけど、もう20何年もの付き合いなせいもあって「今更そんな事…」という思いもあったりする。
どうやらアイツも同じようなことを考えているらしく、最近態度が少しよそよそしくなってきている。

もういい加減、アイツと張り合ったり競い合ったりするのも終わりにして、お互いの気持ちに正直になってもいい頃なのかもしれない。
だからこれから先は、少しアイツと接する態度も柔らかくしていこうと思う。



「「でも絶対、アイツから先に自分のことを『好きだ』と言わせてやる!」」
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