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今日はサンタ連盟のかきいれ時。
何といっても、クリスマス・イブ本番なのだから。
だから家は、朝早くから大わらわだった。
本堂いっぱいに押し込まれたプレゼントの確認と準備、配達経路の確認、詰め込み…
それにも増して、配達のボランティア連中の人数も半端じゃない。
それはまるでちょっとした宅配便屋さんの営業所以上の乱雑ぶりだった。
父の神経も、自然と高ぶってくるのだろう。
「由加里! ちょっと来い!」
怒鳴りつけるようにあたしを呼びつけた。
あたしの方も、もう何年もそんな様子を見ているので、もうへっちゃらだ。
「なに、とーさん」
と、のんびりした口調で、本堂に入る。
「のんびりしてる暇があったら、ちっとは手伝わんか!」
父は本当に忙しいらしく、あたしの方を見もしないで言った。
「なんであたしが」
あたしが言うと、父は、
「こんなに忙しいんだから、手伝ってもいいだろうが」
と言った。
「だめよー。 あたしこれから約束があるんだから」
これは本当だった。
今日は雄治と美久ちゃんとで、簡単ではあるけれどクリスマス・パーティを開く予定だった。
「それにあたしが手伝ったって、勝手がわからないからかえってめちゃくちゃになっちゃうよ」
「猫の手も借りたいくらい忙しいんだ、とにかく手伝え」
「やーよ。 そんなに人手が欲しいんだったら、あたしなんかよりもほら、そこの千手観音の方がよっぽど使えるわよ。 じゃ、あたしもう出かけるから」
そう言ってあたしは、さっさと本堂を後にした。
父が何か大声で言っているようだったけれど、聞こえないフリをした。
待ち合わせ場所の、雄治のバイト先であるケーキ屋に行くと、そこに雄治の姿はなかった。
ケーキ屋だって今日がかきいれ時のはずなのに、その中に雄治がいないのは不思議だった。
あたしは忙しそうにしている店員を捕まえて、雄治がどうしたか聞いてみた。
「あぁ、木之本なら、今日は休みだよ。 妹さんが病気になったとかで、どうしても出られないんだそうだ」
そう言った店員の口調は、『この忙しいのに、迷惑な奴だ』と言いたそうなのが、ありありと伝わってきていた。
けれどもあたしはそんな事をいちいち気にしてなどいられなかった。
さっそくあたしは、雄治の家に電話をかけてみた。
2,3回鳴って、雄治が電話に出た。
「はい、木之本です」
「もしもし、雄治君? あたし、由加里です」
「あ、由加里さん」
あたしの声に気付いて、雄治は途端に申し訳なさそうな声色に変わった。
「あの、美久ちゃんが病気になったって聞いたんだけど…」
あたしが聞くと、雄治は、
「うん、ちょっと寝冷えしちゃって、軽いカゼをひいたんだ。 一応念のために寝かせてるけど… それよりも、ごめん、約束してたのに…」
と、雄治が言ったけれど、あたしはつとめて明るく、
「しようがないわ、病気だもの。 あたしの事はいいから、美久ちゃんをちゃんと看病してあげて」
と言った。
「うん…本当にごめん…」
「気にしないで。 また後で電話するわ」
そう言って、あたしは電話を切った。
それと同時に、カゼをひいて寝込んでいる美久ちゃんの様子が頭に浮かんで、美久ちゃんがかわいそうになってきた。
年に一度のクリスマス・イブなのに…
せっかくサンタさんが家に来るかもしれないって楽しみにしていたのに…
よりにもよって、なんで今日…
いたたまれない気持ちになりながら、あたしはぷらぷらとあてもなく、街を歩き回っていた。
本当なら真っ直ぐ家に帰ってもいいと思ったけれど、父に「用事がある」なんてタンカを切って出て来た手前、まだ帰るわけにもいかなかった。
仕方なく時間潰しにあちこち歩き回ってみても、さすがに今日は、どこを見てもクリスマス一色。
しかも街ゆく人々は、みんなアベックばかり。
美久ちゃんが病気で寝込んでいるというのに、この連中はどうしてこんなに楽しくできるんだ…
そんな少し理不尽な理屈をこねながら、あたしは街をふらついていた。
ふらつきながらもあたしは、『美久ちゃんに何かしてあげられる事はないだろうか?』と考えていた。
…あった…
たった一つだけ、あたしが美久ちゃんにしてあげられる事が…
あたしはくるりと踵を帰して、家に戻る道を早足で歩き始めた。
何といっても、クリスマス・イブ本番なのだから。
だから家は、朝早くから大わらわだった。
本堂いっぱいに押し込まれたプレゼントの確認と準備、配達経路の確認、詰め込み…
それにも増して、配達のボランティア連中の人数も半端じゃない。
それはまるでちょっとした宅配便屋さんの営業所以上の乱雑ぶりだった。
父の神経も、自然と高ぶってくるのだろう。
「由加里! ちょっと来い!」
怒鳴りつけるようにあたしを呼びつけた。
あたしの方も、もう何年もそんな様子を見ているので、もうへっちゃらだ。
「なに、とーさん」
と、のんびりした口調で、本堂に入る。
「のんびりしてる暇があったら、ちっとは手伝わんか!」
父は本当に忙しいらしく、あたしの方を見もしないで言った。
「なんであたしが」
あたしが言うと、父は、
「こんなに忙しいんだから、手伝ってもいいだろうが」
と言った。
「だめよー。 あたしこれから約束があるんだから」
これは本当だった。
今日は雄治と美久ちゃんとで、簡単ではあるけれどクリスマス・パーティを開く予定だった。
「それにあたしが手伝ったって、勝手がわからないからかえってめちゃくちゃになっちゃうよ」
「猫の手も借りたいくらい忙しいんだ、とにかく手伝え」
「やーよ。 そんなに人手が欲しいんだったら、あたしなんかよりもほら、そこの千手観音の方がよっぽど使えるわよ。 じゃ、あたしもう出かけるから」
そう言ってあたしは、さっさと本堂を後にした。
父が何か大声で言っているようだったけれど、聞こえないフリをした。
待ち合わせ場所の、雄治のバイト先であるケーキ屋に行くと、そこに雄治の姿はなかった。
ケーキ屋だって今日がかきいれ時のはずなのに、その中に雄治がいないのは不思議だった。
あたしは忙しそうにしている店員を捕まえて、雄治がどうしたか聞いてみた。
「あぁ、木之本なら、今日は休みだよ。 妹さんが病気になったとかで、どうしても出られないんだそうだ」
そう言った店員の口調は、『この忙しいのに、迷惑な奴だ』と言いたそうなのが、ありありと伝わってきていた。
けれどもあたしはそんな事をいちいち気にしてなどいられなかった。
さっそくあたしは、雄治の家に電話をかけてみた。
2,3回鳴って、雄治が電話に出た。
「はい、木之本です」
「もしもし、雄治君? あたし、由加里です」
「あ、由加里さん」
あたしの声に気付いて、雄治は途端に申し訳なさそうな声色に変わった。
「あの、美久ちゃんが病気になったって聞いたんだけど…」
あたしが聞くと、雄治は、
「うん、ちょっと寝冷えしちゃって、軽いカゼをひいたんだ。 一応念のために寝かせてるけど… それよりも、ごめん、約束してたのに…」
と、雄治が言ったけれど、あたしはつとめて明るく、
「しようがないわ、病気だもの。 あたしの事はいいから、美久ちゃんをちゃんと看病してあげて」
と言った。
「うん…本当にごめん…」
「気にしないで。 また後で電話するわ」
そう言って、あたしは電話を切った。
それと同時に、カゼをひいて寝込んでいる美久ちゃんの様子が頭に浮かんで、美久ちゃんがかわいそうになってきた。
年に一度のクリスマス・イブなのに…
せっかくサンタさんが家に来るかもしれないって楽しみにしていたのに…
よりにもよって、なんで今日…
いたたまれない気持ちになりながら、あたしはぷらぷらとあてもなく、街を歩き回っていた。
本当なら真っ直ぐ家に帰ってもいいと思ったけれど、父に「用事がある」なんてタンカを切って出て来た手前、まだ帰るわけにもいかなかった。
仕方なく時間潰しにあちこち歩き回ってみても、さすがに今日は、どこを見てもクリスマス一色。
しかも街ゆく人々は、みんなアベックばかり。
美久ちゃんが病気で寝込んでいるというのに、この連中はどうしてこんなに楽しくできるんだ…
そんな少し理不尽な理屈をこねながら、あたしは街をふらついていた。
ふらつきながらもあたしは、『美久ちゃんに何かしてあげられる事はないだろうか?』と考えていた。
…あった…
たった一つだけ、あたしが美久ちゃんにしてあげられる事が…
あたしはくるりと踵を帰して、家に戻る道を早足で歩き始めた。
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