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6.その最悪は突然に。

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1週間後──。
不恰好ではあるがなんとか村沿いに村を囲むように柵を配置することができた。

「なんとか出来たな。これで少しは時間が稼げるはずだ。」

だが、柵はあくまでも討伐隊の到着までの時間を稼ぐものに過ぎない。
だから予定より早く来てくれることを祈るばかりだが。

「グレン!食料の備蓄も終わったぞ!これで1ヶ月は持つはずだ。」

「よし、これでしばらくは耐えれるな。」

領主の兵が来るまでの間みんなが食いつなげるだけの食料も備蓄できた。守るための柵も出来た。
まさに準備万端だ。

「後は周囲を警戒しながら村に篭ろう。」

残す時間はあと約3週間。
それまで耐え凌げれば俺たちの危機は脱する。
それまではなんとしても耐えないといけない。
このまま何事もなく時間が過ぎてくれればとそう思ったのだが──
そんな俺の考えとは裏腹に早々にその最悪は突然やってくるのだった。

「た、大変だあーー!!」

1人の村人が大慌てで走ってきた。

「何だ何だそんなに慌てて」

「ボアウルフの群れが・・・!!」


その人の話ではボアウルフが村を囲い包囲しているのだという。
これは非常にまずい事態だ。
というより、いくら何でも早すぎる。
ボアウルフ50匹を相手に兵が来るまでの3週間の間俺たちだけで耐え凌ぐことはほぼ不可能に近い。
防御のための柵は作った。
だが、その柵は近くの森の木を加工して作った簡易的な代物でしかない。
1週間程度であれば耐えうる可能性はあったかもしれないが3週間となればそうはいかない。
最悪は村を捨て逃げることを視野に入れなければならないな。
だけど、まずはこの広がる動揺を抑え込める必要がある。

「よし、慌てずに自分の持ち場に着いて防御に徹するぞ。そしてまず子供と年配者それに女性達を広場に避難させてくれ。その間見張りのものはボアウルフの動きを監視して何か動きがあれば仲間達に伝えて回ってくれ。」

「了解だグレン。みんな聞いたか!自分の役割を全うしろ!」


とは言ったもののボアウルフが攻めてきてどこまで耐えれるものなのかはその時にならないと分からない。
まずいな。弱気になってきた。


「こんな時あいつがいてくれたらな──」

守り抜けるのかわからない不安にふとエリスの顔を思い浮かべてしまう。
いかんいかんあいつはあいつで頑張ってるんだ。
俺も頑張らないと。

でもきっとあいつならこう言うだろうな。

『僕がみんなを守ってあげるんだー!』

って。
彼女のことを思い浮かべるとなんだか分からないが少しだけ勇気をもらえるようなそんな気がした。
いつでも真っ直ぐで元気いっぱいで駆け抜けていくそんな彼女のことを思い出してこんな状況にも関わらず思わず笑みが溢れてしまう。


あの時はただの1人の村人として生きていければいいと思っていたはずなのにな。
今となっては村の人たちに率先して指示を出してこの村を守ろうとしている自分に笑いが出るよ。
ははは。今の俺って──


「似合ってねーなあ。」


それはあの時君に言った照れ隠しの言葉。
そんな言葉が思わず溢れ出てしまった。
本当はものすごく似合っていたのに言えなかった本当の気持ち。
だからこそ──

「次会った時はちゃんと言ってやらないとな。」

またあいつと会える日まで俺は死ねない。
だからやるぞ。
俺が必ず、この村を守り抜いてやる。

魔獣だろうが魔物だろうが魔王だろうが関係ない。
俺はいつか、あいつと肩を並べられる存在になるんだ。
だからこんなところでやられはしない。
勇者と肩を並べようとする者がこんな所で諦めてはいけないんだ。

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