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2話 暗闇を彷徨う
しおりを挟む街の方から遠ざかるように必死に走っていたら気づけば陽が沈みはじめていた。
俺は町外れの草原に1人でポツンと座り空を見上げた。
「これから一体どうすればいいんだ。」
父上から勘当された俺にはもう帰る場所が存在しない。
これからは自分の力だけで生きていかなければならない。
だが──、
そんな事できる気がしなかった。
魔法は本来戦闘に使うものだけど日常生活にも応用される。
例えば、店や農業などの仕事をする時はその属性に見合ったもの達が仕事につく。
農業であれば、畑に撒くための水を作り出せる水属性の適正の持ち主達や食事処だと肉などを炒めるための火を作り出せる火属性の適性の持ち主などが重宝される。
基本的に何かしらの魔法が使えるものじゃないと仕事につく事すらままならない。
つまり──魔法が使えない者ができる仕事が存在しない。
それは飯を食っていけないと言う事だ。
俺がこれから1人でやっていける道は最早、魔物などを狩って自給自足で生きていく事しかない。
だけど魔法を使えない。
そうなれば魔物を狩る術がない。
「困ったな。早く何とかしないと。」
と、そんなことを考えていた間に辺りはすっかり暗くなっていた。
「とりあえず今日はもうここで寝よう。」
俺は草原に寝そべり目を閉じた。
野宿なんて生まれて初めてするな。
あのフカフカだったベットが恋しい。
アストラル家の時の生活を思い出しながら俺はゆっくりの眠りについた。
*****
まだ真っ暗な常闇の時間に俺は寒さによって目を覚ました。
寒くて眠れない。
今の時期は冬季、凍てつくような冷たい風が吹く夜は掛け布団もないこの状態では凍えて死んでしまう。
そんな眠れない状況なので俺は少し歩いて体を温めることにした。
街とは反対側へと只ひたすら暗闇を歩き続けた。
しばらく歩き続けたら俺の体は震えるほどの寒さは感じなくなった。
「よしっ。ちょっと休もう。」
当てもなく歩き続けたが足の疲れを感じて俺は近くにあった木の麓へと腰掛けた。
何キロぐらい歩いたんだろう。
今自分がどの辺りにいるのかは分からない。
只ひたすらに街とは反対側に向かって歩いてきたからだ。
そして俺はふと空を見上げ星を見る。
「すごいな。」
街の中では見ることができなかった綺麗で力強く光る無数の満天の星達が空を彩っていた。
人工的な光がない所では星がよく見えるとアストラル家の書斎にあった何かの本に書いてあったが本当だったんだな。
綺麗な夜空に心が癒された俺は視線を自分の座る高さまで落として辺りを見渡す。
「ここはどこだろう。」
街の外に出たのは初めてだったので今どの辺りにいるのかも当然わからなかった。
そしてキョロキョロと辺りを見渡しているとチラッと近くの茂みから光る何かが見えた。
「何だ?」
その光へと歩いて向かった。
するとそこには
「ゴブ!!」
5匹程の魔物がいた。
暗闇でよくは見えないが、背丈は小さくスカーフのような物を首に巻いている。
魔物の図鑑で見たことあるな。
確か名前は───
ゴブリン・・・だ。
「あれがゴブリンか。初めて見た・・・ってそんなこと言ってる場合じゃないか。襲われたら大変だ・・急いで逃げよう。」
魔物に対抗する術がない俺は見つからないようにとゴブリンの元をさろうとしたがその時、バキッと枝が折れる音が来た。
その音を追って自分の足元を見ると折れた枝を確認できた。
「ゴブ!?」
その音が聞こえた瞬間にそこにいたゴブリン達は俺が居る方へと振り返った。
そして1匹のゴブリンと目が合い──。
ゴブリン達は一斉に俺の方へと走ってきた。
「ま、まずい!」
そのゴブリンの行動を見た瞬間に俺も全速力で走り出す。
まずいまずいまずい。
捕まったら死ぬ!!
後ろを振り向かずにひたすら足を動かし全速力で逃げるが後ろから聞こえる足音は一向に遠くならない。
「だ、駄目だ!!追いつかれる!!」
そう思った瞬間──。
ゴツンと鈍い音と同時に俺の意識がなくなった。
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