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72.4話_私また先細る5

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Gが出た。
奴だ。
今のお家に住み出して早2年。
これまで一度も家の中で遭遇したことがなかった奴が、
突然、室内に姿を現した。
いつものように堕落・惰性している時に不意に目の隅で何か動く?ものを感じて視線をやると
奴がいたのだ。
思わず2度見したね、2度見。
だってこれまでお家の中で見たことなかったし、
こーいう不快な思いをしないために
事前に色々手は打ってきたつもりだったから。
でも奴は確かにいたんだよ。

確実に奴と脳が判断した途端、
ここ半年で感じたことがなかったくらいのドーパミン?殺意?が沸いた。
今の状況になる前から少しずつ感情の希薄化を私自身感じていたんだけど
ホントいつぶり以来かしら、
感情が溢れ出た。
勿論、負の感情が。
「絶対、逃さないからな…」
自然とこんな感じで呟いていた。
一流のエンターテイナーなら写真や動画を撮るんだろうけど
私はプロでもなければアマチュアでもない。
何にもなれず、
今だにそれすら受け入れられない(何か)だから
目の前の奴の殺傷しか頭にない。
こうやって今綴っているのも今し方のドーパミンのおかげだろうね、きっと。
それと、記録。
負の記録。

常に視線で奴を確認しつつ、
万が一のためにストックしていた殺虫スプレーの場所まで移動する私。
当然だけど、奴も移動している。
見失う訳にはいかない。
例え殺虫スプレーに手が届かなくても
まずは奴の目視が第一。
とにかく見失う訳には絶対いかない。
ジリジリと距離を詰める。
奴は私を見下すかのように壁を這う。

(どっか侵入した??)
(防虫対策はしてきたはずなんだけど…)
(エアコン??)
(室内と戸外が繋がっているのはエアコンくらいしかない…)
(伝説とか逸話とかの話じゃないの…エアコンから奴なんて??)
(でも、私ん家じゃそれくらいしか??)
(ドレンホースにも防虫キャップしてるはずだし…)
(今年は家にいる時間長すぎてエアコンずっと使ってたから??)
(あーーーーーーーーーーーーーーー鬱陶しい!!!!!)

頭ん中はずっとこんな感じ。
多分めちゃくちゃブスな顔してたと思う。
普段のブスの比じゃないくらいに酷い顔だと思う。
まじで殺意だと思う。
それか駆逐とか根絶やしっていう感情。

殺虫スプレーは収納扉を開いた先にある。
奴は知ってか、知らずか、はたまた私を見下すためか
わざわざ収納扉の近くに這って来る。
このままじゃ扉は開けられない。
扉の中に入られる、という最悪は避けなくちゃいけない。
奴を視線に入れながら、リサイクルに出す用の段ボールに手を伸ばし武器に仕上げる。
スプレーは欲しいが、無理なら物理で倒すしかない。
心理戦のような時間が流れる。
奴が先に動く。
扉から離れ、次の地点を探しているみたい?(この野郎め…)
咄嗟のタイミングで扉を開けスプレーを手にし、すかさず扉を閉める。
奴はいる。
最悪は回避している。
手にしたスプレーを見ると
「蜘蛛の巣用殺虫スプレー」
とデカデカと書かれている…。

(蜘蛛だろうが、奴だろうが、害虫は害虫!!)

こうなったら、つよつよマインド。
距離をつめ噴射。
ヒットこそしたものの、動くギアを上げて移動する奴。
あらぬ方向に移動し出したことで一瞬動揺する私。
が、追撃の噴射を続ける。
次は効いたのか、壁から剥がれ床に落ちる。
動揺する私。
動きを止めない奴。
小刻みに噴射を続ける。
また奴のギアが上がる。
更に動揺する私。
攻防戦は続く。
でも次第に動きが遅くなり、また床に落ちる。
でも落ちた場所がダメだった。
小さい絨毯マットの上に落ちた、しかも毛が長いタイプの絨毯マット。
それでも躊躇してられない。
噴射は続く。

噴射は続く。

噴射は続く。



ついには動かなくなった。
でも安心はできない。
確実に息の根を止めておかないといけない。
ためらいはなかった。
手にしていた武器でバチクソ殴った。
親の仇の如く。



絨毯マットはお亡くなりになりました。
2年間私の生活に彩りを添えてくれてありがとう。
早くゴミを出したい、
今はそれだけ。

おしまい。
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