エッセイ集を出せば売れる、と聞いたから。

:ななこ。@保育士、休職中

文字の大きさ
上 下
82 / 261

67話(仮)_私、お休み2

しおりを挟む

…………

……

重い会場のドアをメイと共に開けると、賑やかな音楽が耳に飛び込んできた。
高級そうな料理や、いつも以上に華やかな会場の飾りつけが目に入り、1週間前に戦地にいたなんて嘘みたいな光景に、呆気《あっけ》にとられる。


戦勝パーティ会場を見回すと、下級クラスの生徒はいないようだった。
そのことに、心の中で『当たり前だ』とつぶやく。

下級生であるルイーゼ達は、私たちが特別野外活動に行っていたと思っているのだから。

ちなみに私を襲った男子達は、指揮官から学園に報告され、帰還するなり塔に入れられた。だから今は不在だ。



「カミヅキ様ぁ~」
そんな台詞セリフが耳に入ってきて、自然と目が行く。

すると大きく胸の開いた、タイトな黒のロングドレスを着たFクラス講師が映った。そして、その隣にはディオン。

ディオンは品のある黒のスーツを着ていて、長い黒髪を後ろで束ねている。既に周りは女生徒だらけだ。

Fクラス講師は、大きな胸を見せつけるようにしてディオンに迫っているのに、ディオンは嫌がる様子も見せずに何やら話をしている。

服の色が同じだからか、そんな2人がとてもお似合いに見えて、思わずムッとしてしまう。

そんな時、ディオンとバチっと目が合って、思わずプイっとそっぽを向いてしまった。


再び目を向けると、もうディオンは女生徒の方を向いていた。
その事に更に怒りが湧く。


キスまでしてきたくせに!なんなのよ!
ふと、これまでのキスを思い出してしまい、そっと唇に指を当てると、顔にぼっと火がついた。

あああーー!
恥ずかしくなって脳内の私が頭を抱えて叫ぶと、次に私を殺した奴の言葉が浮かび上がった。

『あれぇ?まだ生きてんの』
『早く死んで』


……まただ。
最近ずっと、殺される直前の事ばかり思い出してしまう。



それもこれも……

長く艶のある黒いディオンの髪に目を向ける。


あの姿を目にすると、どうしても私を殺した人物を思い出してしまう。


戦争が終わったら告白しようと思っていたのに、なんかそれどころじゃなくなっちゃった……


疑いは深まる事も、解決する事もなく、ずっと平行線のまま。

やっぱり、ディオンが私を殺した犯人なんかじゃないとは思う。
でも、そう思っても疑いが完全に晴れるわけではない。

いっそのこと、全部話してしまえば楽になれるのに……
もし、本当に犯人だったら……って思うと、怖くて言えない。



「はぁー」
ため息をついて誰も居なさそうなテラスに出ると、「シエルちゃん」と呼ぶ声が聞こえた。
その声に振り返ると、派手な柄物のスーツを着たアランが映った。


「アラン……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

⚠️作品を使用する際の注意点をまとめました⚠️

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
エッセイ・ノンフィクション
プロフィールが書ける箇所の文字数が少なすぎるので、こちらに私の作品を使用する際の注意点をまとめてみました。

ユーチューバーランキング

採点!!なんでもランキング!!
エッセイ・ノンフィクション
ランクマスターのランク野郎が、ユーチューバーをSランクなみの独断と偏見で採点していきます。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

生きる 〜アルコール依存症と戦って〜

いしかわ もずく(ペンネーム)
エッセイ・ノンフィクション
皆より酒が強いと思っていた。最初はごく普通の酒豪だとしか思わなかった。 それがいつに間にか自分で自分をコントロールできないほどの酒浸りに陥ってしまい家族、仕事そして最後は自己破産。 残されたものはたったのひとつ。 命だけ。 アルコール依存専門病院に7回の入退院を繰り返しながら、底なし沼から社会復帰していった著者の12年にわたるセミ・ドキュメンタリー 現在、医療従事者として現役。2024年3月で還暦を迎える男の物語。

毎月一本投稿で、9ヶ月累計30000pt収益について

ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
9ヶ月で毎月一本の投稿にて累計ポイントが30000pt突破した作品が出来ました! ぜひより多くの方に読んでいただけた事についてお話しできたらと思います!

処理中です...