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12話_私が見る世界
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休職、という当たり前でないような当たり前の日常。
当初は2ヶ月という診断が下り、職場にもその旨で話をした。
その2ヶ月は本当に何もしていない。
寝て、
起きて、
寝て、
目が覚めて、
寝て、
時折食事をとって、
また寝て…
その合間に
整形外科
脳神経内科
メンタルクリニック
ペインクリニック
外に出ると言ったら病院。
そしてそのタイミングで買い物をしなければ
家には何もない。
まぁ先述の通り2ヶ月の大半以上をベッドで過ごしている訳だから
必要なものと言っても然程ないんだけど。
俗世に言う人間の3大欲求というものは存在せず
当時の私にとって寝るという行為は欲求ではなく、
寝るという行為そのものが生活だった。
それ以上も、それ以下でもない。
見える世界には色なんかなくて、
時間と共に明るい・明るくないくらいだった。
そんな生活でも
必要最低限くらいはしないといけないことがある。
いや、違うな?
しないと落ち着かない?という方が少しは正しいか。
私の場合は、洗濯だった。
寝るだけの生活に洗濯が必要なのか?
そう問われるとはっきりとした答えは返せない。
ただただ、私がしなくちゃいけないと思っていたのかも知れない。
あるいは、僅かに残っていた普通の生活の余韻だったのかも知れない。
お家は賃貸、ベランダがついている。
あと別に小窓も一つついている。
ベランダには物干し竿を2本かけられるようになっており、
立地の割には広い方だと思っている。
洗濯物は外に干したことがない。
はっきりとは言えないけど、環境面や自衛 他のため。
なので、洗濯物は浴室乾燥でことを済ましている。
幸い間取りの都合上、洗濯機と浴室は繋がっており
洗濯を終えるとそのまま浴室に干せる構図になっている。
世にいう鉛のように重たい体を引きずり
(てか、鉛ってなんだろうね? 身近にあるっけ?)
洗濯を始める。
始めると言っても、洗濯物を放り込んで洗濯剤を入れてスイッチ1つで完了。
洗濯剤もゲル状のものを1つ入れるだけ、楽なもんだ。
洗濯機といえばドラム式が台頭している現代だけど、うちは縦式。
ドラム式いいんだけどね、取り出す時にちょっとだけ屈んだりしなきゃいけないのと
メンテナンスが地味にめんどくさいって理由で縦式。
洗濯剤といい、なんせ横着なのだ。
洗濯機のフタに大きな窓がついている。
縦式には珍しく、大きな窓だ。
この窓に惹かれて購入した1品だ。
私は窓から見える世界がとても好きで、何回見ても飽きない。
自堕落した私の代わりに働き出した洗濯機。
水が入る様子や
唸る声を出しながら少しずつ回転し始める様
時にはさざなみのように聞こえてしまう水の音
徐々に回転数を上げて脱水する一時や
次の工程のためにピタリと稼働を止める一瞬
など、何故だか分からないがずっと見ていられる。
休み出したから、という訳ではない。
元々見るのが好きだったんだ。
寝るだけの生活
色のない生活
体は動かない
頭も回らない
たまに頭のスイッチが入っても、先のことを考えてしまい不安や焦燥に包まれて結局ショートする。
そんな中でも洗濯機だけは、ほぼ毎日回していた。
身に着けている衣服
枕カバーやシーツ
布団布団カバー
座ってもいない座敷カバー
あるだけのクッションカバー
など、目に留まるものを回す。
理由なんてない。
そして、動き出した洗濯機の窓を覗き込むのだ。
そこには世界が広がっていたから。
休職の期限が迫ってきた。
クリニックではまだ復帰は難しい、延長しようとなり現在3ヶ月目に入っている。
少しだけ世界は広がった。
洗濯機を覗き込む世界に加えて、外界という世界が少し開けた。
とはいえ、普通だった時に比べると全然だ。
だけど、確かに見える世界は少し変わった。
関係ないけど、うちの小窓。
もの置きすぎ案件だけど、まぁ、これもよし。
好きなものしかないんだから。
当初は2ヶ月という診断が下り、職場にもその旨で話をした。
その2ヶ月は本当に何もしていない。
寝て、
起きて、
寝て、
目が覚めて、
寝て、
時折食事をとって、
また寝て…
その合間に
整形外科
脳神経内科
メンタルクリニック
ペインクリニック
外に出ると言ったら病院。
そしてそのタイミングで買い物をしなければ
家には何もない。
まぁ先述の通り2ヶ月の大半以上をベッドで過ごしている訳だから
必要なものと言っても然程ないんだけど。
俗世に言う人間の3大欲求というものは存在せず
当時の私にとって寝るという行為は欲求ではなく、
寝るという行為そのものが生活だった。
それ以上も、それ以下でもない。
見える世界には色なんかなくて、
時間と共に明るい・明るくないくらいだった。
そんな生活でも
必要最低限くらいはしないといけないことがある。
いや、違うな?
しないと落ち着かない?という方が少しは正しいか。
私の場合は、洗濯だった。
寝るだけの生活に洗濯が必要なのか?
そう問われるとはっきりとした答えは返せない。
ただただ、私がしなくちゃいけないと思っていたのかも知れない。
あるいは、僅かに残っていた普通の生活の余韻だったのかも知れない。
お家は賃貸、ベランダがついている。
あと別に小窓も一つついている。
ベランダには物干し竿を2本かけられるようになっており、
立地の割には広い方だと思っている。
洗濯物は外に干したことがない。
はっきりとは言えないけど、環境面や自衛 他のため。
なので、洗濯物は浴室乾燥でことを済ましている。
幸い間取りの都合上、洗濯機と浴室は繋がっており
洗濯を終えるとそのまま浴室に干せる構図になっている。
世にいう鉛のように重たい体を引きずり
(てか、鉛ってなんだろうね? 身近にあるっけ?)
洗濯を始める。
始めると言っても、洗濯物を放り込んで洗濯剤を入れてスイッチ1つで完了。
洗濯剤もゲル状のものを1つ入れるだけ、楽なもんだ。
洗濯機といえばドラム式が台頭している現代だけど、うちは縦式。
ドラム式いいんだけどね、取り出す時にちょっとだけ屈んだりしなきゃいけないのと
メンテナンスが地味にめんどくさいって理由で縦式。
洗濯剤といい、なんせ横着なのだ。
洗濯機のフタに大きな窓がついている。
縦式には珍しく、大きな窓だ。
この窓に惹かれて購入した1品だ。
私は窓から見える世界がとても好きで、何回見ても飽きない。
自堕落した私の代わりに働き出した洗濯機。
水が入る様子や
唸る声を出しながら少しずつ回転し始める様
時にはさざなみのように聞こえてしまう水の音
徐々に回転数を上げて脱水する一時や
次の工程のためにピタリと稼働を止める一瞬
など、何故だか分からないがずっと見ていられる。
休み出したから、という訳ではない。
元々見るのが好きだったんだ。
寝るだけの生活
色のない生活
体は動かない
頭も回らない
たまに頭のスイッチが入っても、先のことを考えてしまい不安や焦燥に包まれて結局ショートする。
そんな中でも洗濯機だけは、ほぼ毎日回していた。
身に着けている衣服
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座ってもいない座敷カバー
あるだけのクッションカバー
など、目に留まるものを回す。
理由なんてない。
そして、動き出した洗濯機の窓を覗き込むのだ。
そこには世界が広がっていたから。
休職の期限が迫ってきた。
クリニックではまだ復帰は難しい、延長しようとなり現在3ヶ月目に入っている。
少しだけ世界は広がった。
洗濯機を覗き込む世界に加えて、外界という世界が少し開けた。
とはいえ、普通だった時に比べると全然だ。
だけど、確かに見える世界は少し変わった。
関係ないけど、うちの小窓。
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好きなものしかないんだから。
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