隠されし魔法詠唱者

白羽翔斗

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始まり

1-9 学校初日 3

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「それでは、始め!」
 
 教官の声が響き渡ると同時に、二人は動き出す。

「空を飛ぶのは禁止でしょうか?」

「使わないので、たぶんですが、禁止だとおもいます」

「……んん、禁止されてなかった……」

 と、シラが言う。

 そうなると、なぜ使わないのか? と、疑問が浮かび上がる。絶対に飛んだほうが敵の魔法も躱しやすい。

「使えばいいと思いますが……」

「やはり、話してないだけで、本当は禁止されているのかもしれません」

 僕と姫様が話しても、疑問は尽きず、いや、さらに増えていく。
 
 そんな中、シラは小さくため息をつき、意見を言う。

「飛行魔法……使えないと……思う……」

 僕たちは、ふっ!とシラに視線を向ける。

「そ、そんな気がしてきました」

「飛行魔法を使えない人なんているんですか?」

 僕は、疑問を口にした。
 シラは、再びため息をし、答える。

「ん……普通の人は……レベルが高くて、使えない」

 驚愕の事実。昔と今では違うのだ、と。本を読み力をつけた僕は現代についてあまり詳しくない。

 視線を演習場に移すと、終盤になっていった。

 それを見ながら、姫様は呟く。

「私の方が、強い気がします……」

「はい、冗談抜きで、そうだと確信します」

 動きこそ、先日の入学生よりかは、上だが、それだけ。以前目にしたことがある、姫様の動き、素子で、魔法は、はるかに上。
 姫様の魔法を教わっていた環境が良いのは分かるが、この施設もかなり力が入れている、と、聞いたことがある。

「姫様が……強いの……!」

 シラはそう言い放ち、さらに続ける。

「……前、教えに行ったときに……分かった……」

「と言いますと?」  

 姫様は、何を言っているのか分からないようであった。

「私より……早く、教えた……魔法を使えるようになった……!」

 シラはそう叫んだ。

「いえ、それは……シラが教えるのがうまかったからです!」

「……言い訳……無用……!」

 シラは頬をふくらませ、そっぽを向いた。

 話を聞くに、姫様凄い、と、思った。
 凄腕魔法師に教えてもらったとはいえ、彼女よりも覚えるのが早いとは……

 姫様はシラの方を向き、言葉を紡ぐ。

「私もあの人に、一度でも勝ちたいのです」

 シラはその話題で姫様の目を見た。そして、姫様はさらに続ける。

「だから、一緒に頑張りましょう!!!」

 二人は握りこぶしを作り、無言で勝とう、と、語っている

 あの人と言う人の力で、小さな仲違い? は、終わりを迎えた。

「……ん……頑張る」

 さらには、二人の目にはメラメラと、熱い炎が浮かび上がっていた。


 しかし、そうしている間にも試合が続きていた。
 
 男の方は、機動型。女の方は、要塞型。
 どちらもはっきりと、戦術が分かれていた。予想通りではあったが、少しばかり、凄みがない。

 前に、シラと戦った大男。
 彼の方が強いと判断できる。

 そういえば、今日、大男を見ていなかった。
 何か嫌な予感がしないでもない。

 まさかとは思うが、記憶がしっかり消せてない、とか?

○●○

「初日で休んだ人がいるんですか?」

 教官のひとりがそう口にする。
 信じられないと言わんばかりの口調で。

「はい、入学試験の日。家に帰ると、バタリと倒れたそうです。それから起きても放心状態らしいです」

 もう一人いた教官は、それに答える。
 極めて冷静に端的に話すその声には、疑問の色が存在した。

「あなたは入学試験で記録を取っていたわね?」

「……はい」

「にゅ、入学試験で変わったことは?」

 教員が心配そうに尋ねる。
 しかし、もう一人の教員は首を横に振る。

「心当たりがありません」 

 何もないのにも関わらず、そうなるのはおかしいと、二人の考えは一致する。

「他の者にも聞いた方が良いですね」

「記録用に魔法を発動していた者もいるかもしれませんしね」

 そうして、二人は行動を開始した。
 
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