3 / 12
始まり
1-2 入学試験 2
しおりを挟む話しをしていたために、魔力量測定が終わっていた。
誰も魔法の発動感知したような空気は、なかった。
「只今より、模擬試合を行います」
と、さっきまで話していた、教官が呼びかけする。
他の教官は周りにある観客席に腰を下ろし、生徒たちを評価するようだ。僕は、半周回った反対側に座る。
話していたときに聞いたのだか、模擬試験は一対一の魔法でのみの戦いだそうだ。
飽くまでも模擬試合であり、死に追いやったら負け。入学は確実に出来ないらしい。
時間が恐ろしいほどかかってしまうのは、目に見えていたが、陛下の命令もあるので帰れない。
しかし、生徒たちの実力が見えてくるので、そこはありがたい。
「では、始め」
号令とともに、対峙していた二人は動き出した。
若干の駆け引きはあるものの、その動きにはキレがないため、魔法は当たる。地上機動型の魔法師にとってあるまじき行為だった。
さっきの魔法量計測は、魔法量を測る他にも、模擬試合で同じくらいの者と、当たるようにするためでもあったと思っている。
魔法量は、努力すれば上がるため、このような形をとっているようだ。
「そこまで」
弱い魔法のみだったために、何度も当たっても死ななかったみたいだ。
このように次々と、試合は終わっていった。
戦略においては、良いと思う者はいるが、体が追いついていなかった。また、逆も然りで何も考えず、持って生まれた才能だけで戦うものもいる。
いよいよ、次はラストだ。
ここまで、どうもめぼしい人は見つからずにいた。
「最後の者は、前へ」
最後に出てくるのは、ガタイの良い大男と白い髪の少女だった。恐らく、この組が強いらしいが果たしてどうだろうか?
しかし、大男は同い年とは思えない程の体格である。遠くからでも白の髪の少女との差は歴然。
剣士でないことが、不思議に思えるほどのもの。
「始め」
最初に仕掛けたのは、大男。
「【ライトニング】」
連射しやすい電気系の魔法を用い、少女に近づく。
威力は弱いものの、多角的に放たれるため、対処が大変だ。
しかし、接近戦の魔法があるように思える行動。
基本的に魔法師は距離をとり戦う。魔法は射程が長く、速度が速い。
それをしないのは、やはり、短距離で一撃で決着をつける魔法を隠し持っている。
それ故に、少女はやることが限られてくる。
まずは、ライトニングを防ぐところから、だが。
「【シールド】」
無可視の壁ができ、ライトニングを消しつつ、さらなる魔法を使用する。
「【ウィンド•ストーム】」
慣れたカウンターに見えた。
突然の暴風。観客席に座っている僕にすら届く強風。これは、と思い大男に視線をやると……
やはり、大男の足は地面から宙に浮いてしまった。これは、白髪の子の勝ちだなと、思った次の瞬間。
「【グラビティ】」
重力魔法を己にかけ、再び地面に足をつける。
これか、と僕は、思考を繰り広げる。
彼の隠し持つ魔法。
しかし、重力系魔法は近くでなければ使えない。効果は絶大だが、近づくのにリスクが大きいので、通常、覚えようとは思わない。
しかし、この男の機動力ならば、それを可能にする。
この二人は、かなり強い。
「【ライトニング】」
大男はさっきよりも、動きが良くなっている。
ライトニングの光の数も多い。
少女は、シールドを使っているものの、反撃ができない。
大男が迫りくる。
「【グラビティ】」
「【シールド】」
シールドは、まだ保たれている。
しかし……バキッと言う音。
――――壊れた。
大男の勝ちだ。
少女は、強い重力で地面に手をついた。
「そこまで」
教官の声が辺りに響き渡る。
大男が魔法を解き、少女はゆっくりと立ち上がる。
これでもう入学試験は、終了だ。そう思っていた。
大男と目が合う。熱が今も尚こもっている、その目を大男は逸らさない。
「なあ、先生よ。少し聞いていいか?」
「はい、なんでしょう?」
少し引きつった笑いをしながら、答えている。
強さ故の大きな態度。それは、許容される範囲をこえている。
「アイツは、入学生か?」
僕を指差し、先生に問う。
「はい、そうですが?」
「何で入学試験を受けてない」
ごもっとも。全員が全員。測定のときも、試合のときも、僕の方を見ると、表情は疑問で少し歪んでいた。
「免除、されていますので」
「そうか、じゃあ、アイツに勝負を挑む」
「それは……」
「アイツは、免除されている程の強さがあるんだろ? 問題ねえじゃねえか!」
「それは、その」
教官は、否定の言葉が出てこない。
こんな質問をされるとは思っても、見なかったからだろう。
「おい、おまえ」
少し間を置き、挑発するように言う。
「勝負しようぜ」
僕は声は聞こえるものの、観客席にいてもしょうがないため、彼らに近寄る。
「おいおい、この学校どうなってるんだよ」
近くで見ると、尚、デカイ。
顔を高めにに上げなければ見えないほどだ。
「こんなヤツが免除だって?」
辺りは静寂に包まれた。
「チビ、戦って証明してみろよ」
戦って良いものかと、考える。
しかし、答えはNoだ。
僕は姫様の警護のために入学するのだ。
「強いんだろ?」
やれ、口を開けば挑発、挑発。
全く、困ったものだな。
その挙げ句に悪口まで言い出すとは。
「断る」
ただ、端的に言い放つ。
それ以上の言葉は必要ないそう思っていた。
「弱虫が!」
断っただけで、弱虫扱いとは。
たまったもんじゃない。
「そんなんじゃ、何もできないんだよ!」
この言葉は、幸か不幸か、この国最強の魔法師を呼び起こした。
その者は……
曰く、相手にしては国が消える、と。
その途方のない強さ故に、周辺国家はこの国に戦争を仕掛けない。そして、戦争をしない。
さっきまでは、薄い青の髪に濃い青の瞳の華奢な少年。
しかし、彼の目は、今、この一瞬だけ、濃い青色ではなく、黒、いや光のない漆黒だった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
誰もシナリオを知らない、乙女ゲームの世界
Greis
ファンタジー
【注意!!】
途中からがっつりファンタジーバトルだらけ、主人公最強描写がとても多くなります。
内容が肌に合わない方、面白くないなと思い始めた方はブラウザバック推奨です。
※主人公の転生先は、元はシナリオ外の存在、いわゆるモブと分類される人物です。
ベイルトン辺境伯家の三男坊として生まれたのが、ウォルター・ベイルトン。つまりは、転生した俺だ。
生まれ変わった先の世界は、オタクであった俺には大興奮の剣と魔法のファンタジー。
色々とハンデを背負いつつも、早々に二度目の死を迎えないために必死に強くなって、何とか生きてこられた。
そして、十五歳になった時に騎士学院に入学し、二度目の灰色の青春を謳歌していた。
騎士学院に馴染み、十七歳を迎えた二年目の春。
魔法学院との合同訓練の場で二人の転生者の少女と出会った事で、この世界がただの剣と魔法のファンタジーではない事を、徐々に理解していくのだった。
※小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。
小説家になろうに投稿しているものに関しては、改稿されたものになりますので、予めご了承ください。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
☆10/25からは、毎日18時に更新予定!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる