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第3話

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そんな状態のまま時間だけが過ぎていって、わたしは三年生になってから二回目の定期テスト、つまり、一学期の期末試験を迎えた。

「まだ効果が表れてないだけだよ。能力って、ある地点から一気に伸びるっていうしさ。非連続的に? レベルアップするときが来るってテレビで言ってたよ」

「だいたい、わたしらの受験に数学いらないでしょ。数学なしで受けれるところいっぱいあるし、AO入試で決めればそもそも一般入試を受けなくていいし」

再び赤点となってしまったわたしを、志保と瑠々花はそう言って慰めた。わたしは掠れた声と情けない表情で「うん」と言うしかなくて、そんな言いかたに二人はどう反応してよいか分からいようで、苦笑いを浮かべるばかりだった。

自分で自分のことが少しずつ嫌いになっていくのを自覚できる。個性なんてまるでなくて、素行の良さだけが取り柄なのに赤点を獲る人間なんて最悪だ。

どう最悪なのかはうまく言えないけど、とにかく最悪だ。


翌朝、わたしはぼんやりとした気持ちを抱えたままいつもの時間に教室へと足を踏み入れた。

期末テストが終わっても、志水くんは相変わらずわたしよりも朝早く来て勉強に取り組んでいる。志水くんを横目に見ながら、わたしは窓際にある自分の席についた。一学期中に席替えがあって、わたしたちの席はまたも随分離れた位置になっている。今度はわたしが窓際で、志水くんが廊下側の席だった。

いつものように教科書と参考書を開き、期末テストの問題用紙と回答用紙も机の上に出して、何が分かっていないのか、どうやったら解けるのかを考えていく。でも、いつも以上に身が入らない。視線は数式を上滑りして紙面上を漂うばかりだった。思考に靄がかかってきて、鼻の頭がひりひりしてきて、泣きたい気持ちになっていく。

机上の書類から何かを得ることを諦め、わたしは首を捻って志水くんの横顔を見た。

夏が近づいてきて、その顔つきはより精悍なものになっている気がする。

机の横には通学用の指定鞄とバスケ用のスポーツバッグが置いてある。春の大会では好成績を収めたらしく、体育館で表彰状を授与されていた。今年のバスケ部は強いらしい。

「志水くん」

あまりにも絶望的に頭がぼうっとしていて、自分でもどうかしていたとしか思えない。やけっぱち、という表現が一番合っている気がする。わたしはテストの問題用紙と回答用紙を左手に持ち、右手にはノートを持って、志水くんの机の前に立っていた。
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