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その六十三

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 口元に笑みを浮かべながら返答を待つ。

 なんと答えるだろうか。

 フェニルが皆を集めたのだということは伝えていなかった。おそらくリタもフェニルはまだ小屋でロープを外すことに苦労していると考えていたはずだ。そこに突然フェニルが現れたのだ。

 となれば誰かと打ち合わせることもできないだろう。

 ならばどこかでぼろを出す。そこをついて彼らの持論を打ち崩せばよい。

「それは……」

 リタは一瞬の見逃してしまいそうな間に眉をひそめ、その後に答えた。

「ドレッサーの上に……」

 そう言うリタの目線が右下を向く。

「本当に?」

 微笑を浮かべたままリタの目を見つめた。リタは視線を外すことなくフェニルに返す。

「はい。確かにこの目で見ました。
 ドレッサーの右奥に置かれていたんです」

「では何故私は小瓶を隠さなかったのでしょうね?
 ベッドの中に隠すでも、できたでしょうに。あなたは何故だと思う?」

「そのようなことフェニル様が一番ご存じでしょう。私は何もわかりません。ただ小瓶を発見したというだけで……」

「答えなさい。能書きはいらないわ」

 我ながらなんと意地の悪い質問かと苦笑したくなる。

 けれど、今緊張やストレスで判断が鈍っているリタならば答えを間違うかもしれない。矛盾のおこる答えを返すかもしれない。

 だからこそ彼女リタには答えて貰わねばならなかった。
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