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その七
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コツコツコツ、とフェニルの靴の音だけが石畳の回廊に響く。大陸のどこに位置しているのか、レイデンス王国からどれくらい離れているのか。そんなことはわからず、確かなのはこの場所が竜人の長の住む宮殿なのだ、ということのみ。
当然だがここにいる人間はフェニルしかなく、他は竜人。
十年前の事件が鮮明に蘇えってきた。母親を殺した奴らではないとわかっていても憎しみの感情があふれ出る。いっそ護身用に持ってきた細身の短剣で刺してしまおうかと何度となく考え、そのたび『無駄なことはするな』と己を戒めた。
(この……部屋かしら)
他の部屋とは明らかに違うとわかる豪華な扉。扉の端と端には兵士らしき男達が立っている、となればこの部屋に竜人の長がいるということだろう。
ちなみに今のフェニルは一人である。先ほどの馬車へ案内した竜人が職務を放棄した、という事ではなくフェニル自身が宮殿に着いた時点でここから先は案内などいらないと拒否したのだ。
軽く触れるとひんやりと冷たい扉。どきどきと心臓がなり、それをおさめようと大きく深呼吸をする。
不安か、それとも興奮か。自分でも気づけない胸の音が聞こえなくなった後、もう一度深呼吸をしてドアを開いた。
当然だがここにいる人間はフェニルしかなく、他は竜人。
十年前の事件が鮮明に蘇えってきた。母親を殺した奴らではないとわかっていても憎しみの感情があふれ出る。いっそ護身用に持ってきた細身の短剣で刺してしまおうかと何度となく考え、そのたび『無駄なことはするな』と己を戒めた。
(この……部屋かしら)
他の部屋とは明らかに違うとわかる豪華な扉。扉の端と端には兵士らしき男達が立っている、となればこの部屋に竜人の長がいるということだろう。
ちなみに今のフェニルは一人である。先ほどの馬車へ案内した竜人が職務を放棄した、という事ではなくフェニル自身が宮殿に着いた時点でここから先は案内などいらないと拒否したのだ。
軽く触れるとひんやりと冷たい扉。どきどきと心臓がなり、それをおさめようと大きく深呼吸をする。
不安か、それとも興奮か。自分でも気づけない胸の音が聞こえなくなった後、もう一度深呼吸をしてドアを開いた。
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