29 / 29
四.役者は舞台で踊れない
28.愛しき人へ別れを告げて、エピローグは終わる
しおりを挟む
わたしがやってしまったことに後悔も反省もない。だって、殺したいほど憎かったのだから。今更、後悔と反省をしたところで誰にも許してもらえない。許してほしいとも思わないのだけれど。
白鳥葵と半沢美波が死んで清々した気持ちを抱いたのは本当だ。殺すことになんら躊躇いなどなかった。怖くもなかったし、死んだ瞬間のことなんてあまり覚えていない。
二人を殺して、平原裕二に罪を着せて、成し遂げたという喜びが胸に広がっていた。きっと、わたしは未来が死んでから壊れていたのだ。だって、そうでしょう。人を二人も殺したというのに喜びを感じたのだから。
これを壊れていないと言えるだろうか?
これが正常だと誰も認めないでしょう?
わたしだってそう思うのだから、世間はそうでしょう。
あぁ、きっとあることないことニュースで言われているのだろうな。二人の遺族はきっとわたしに呪詛を吐いている頃だろう。べつに何を言われようとも、恨まれようともどうでもいい。
恨まれる覚悟の上でわたしは二人を殺したのだ。好き勝手に言えばいい、ご自由にどうぞ。でも、未来は何も悪くない。彼女に矛先がいかないか、それだけが不安だった。
どうして気づかなかったのだろう。あの子の言う通りだ、未来はわたしに復讐の代行なんて望んではいない。
わたしが人を殺すことを嬉しく思うような子ではない。わたしが死ぬことを許してはくれないはずだ。もっと、もっと早く気づきたかった。天国で未来が見守ってくれているならば、きっとあの子は泣いている。
泣かせたくなかった、悲しい思いをさせたくはなかった。わたしは狭い檻の中で生きるしかない、死ねばきっと悲しむから。
生きて、罪を償っていくしかない。償える気などしないけれど、それでも。
「未来」
届かない彼女へと手を伸ばす、空を掴む手を握り締めて瞼を閉じる。思い浮かぶのは未来の明るく元気な笑顔。可愛くて、優しい優しい表情はもう思い出のなかにしかない。
未来の死を受け入れよう、彼女がいない現実を受け止めよう。
「ごめんね、未来」
彼女への謝罪を口にする。許してくれるとは思っていないけれど、それでも謝らずにはいられなかった。
「あなたの親友でいられてよかった」
愛しい人へと別れを告げるように陽菜乃は囁いた。
END
白鳥葵と半沢美波が死んで清々した気持ちを抱いたのは本当だ。殺すことになんら躊躇いなどなかった。怖くもなかったし、死んだ瞬間のことなんてあまり覚えていない。
二人を殺して、平原裕二に罪を着せて、成し遂げたという喜びが胸に広がっていた。きっと、わたしは未来が死んでから壊れていたのだ。だって、そうでしょう。人を二人も殺したというのに喜びを感じたのだから。
これを壊れていないと言えるだろうか?
これが正常だと誰も認めないでしょう?
わたしだってそう思うのだから、世間はそうでしょう。
あぁ、きっとあることないことニュースで言われているのだろうな。二人の遺族はきっとわたしに呪詛を吐いている頃だろう。べつに何を言われようとも、恨まれようともどうでもいい。
恨まれる覚悟の上でわたしは二人を殺したのだ。好き勝手に言えばいい、ご自由にどうぞ。でも、未来は何も悪くない。彼女に矛先がいかないか、それだけが不安だった。
どうして気づかなかったのだろう。あの子の言う通りだ、未来はわたしに復讐の代行なんて望んではいない。
わたしが人を殺すことを嬉しく思うような子ではない。わたしが死ぬことを許してはくれないはずだ。もっと、もっと早く気づきたかった。天国で未来が見守ってくれているならば、きっとあの子は泣いている。
泣かせたくなかった、悲しい思いをさせたくはなかった。わたしは狭い檻の中で生きるしかない、死ねばきっと悲しむから。
生きて、罪を償っていくしかない。償える気などしないけれど、それでも。
「未来」
届かない彼女へと手を伸ばす、空を掴む手を握り締めて瞼を閉じる。思い浮かぶのは未来の明るく元気な笑顔。可愛くて、優しい優しい表情はもう思い出のなかにしかない。
未来の死を受け入れよう、彼女がいない現実を受け止めよう。
「ごめんね、未来」
彼女への謝罪を口にする。許してくれるとは思っていないけれど、それでも謝らずにはいられなかった。
「あなたの親友でいられてよかった」
愛しい人へと別れを告げるように陽菜乃は囁いた。
END
0
お気に入りに追加
9
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

魔法使いが死んだ夜
ねこしゃけ日和
ミステリー
一時は科学に押されて存在感が低下した魔法だが、昨今の技術革新により再び脚光を浴びることになった。
そんな中、ネルコ王国の王が六人の優秀な魔法使いを招待する。彼らは国に貢献されるアイテムを所持していた。
晩餐会の前日。招かれた古城で六人の内最も有名な魔法使い、シモンが部屋の外で死体として発見される。
死んだシモンの部屋はドアも窓も鍵が閉められており、その鍵は室内にあった。
この謎を解くため、国は不老不死と呼ばれる魔法使い、シャロンが呼ばれた。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる