おにぎり無双~不器用メシマズが料理チートを得られたらバズって周囲が騒がしいです~

しまぼうし

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第四章 権力者とおにぎり

第三十二話

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「なんでだ……どうしてなんだ……」
「圧倒的にこれじゃない感……」
「あ~~なるほど、こうなるのか……」

 三者三様の感想だ。新作おにぎりの試作品を作って早速食べてみたのだが、予想が外れてしまい感想が妙なものだったのだ。
 二人共、自分の好きな具材のおにぎりを握って貰ってワクワクで嬉しそうに食べていたのに今はショボンとしている。がっくりと膝をついてうなだれている。なんて大袈裟な。

「これはどういうことなんだろ? もっと美味しくなる筈じゃないの?」

 空の疑問に連は分析した結果を答えた。

「これも美味しいは美味しいんだがな。物凄くうまいに至らないのは恐らく、おにぎりの米に具材が負けてるんだ」
「負ける?」
「美味しさが釣り合ってない。かといって美味しさ同士が喧嘩してもだめなんだ。互を引き立て合い、より美味しいおにぎりに昇華しなければ」

 かなり大袈裟なことを連が言っているが、単純にスーパーで売っていた具材を突っ込んだだけである。けど、それだけのことなのに分量を上手く入れるのにまごつき、はみ出たり飛び出たりと苦戦して大変だった。
 手間もかかったのにそれでこの評価って実に複雑な心境だ。美味しくするなら、もしかしたら具材も手作りしろってことなのかもしれないけど、言わない。より自分が大変になるだけだ。料理は苦手なのだ。自分の首を絞めるべきではない。

 そこまで私が考えていると、連が流石に正直に言いすぎて不興を買ったのではと心配したのかもしれない。急にフォローし始めた。

「今回は具材のクオリティが低かっただけだ。より高級な美味しさを持つ材料を使おう」
「ほーん。確かにそうかもしれないけど、清水。自分で言ってたろ? 美味しさ同士で喧嘩してもダメって。研究が必要なんじゃん?」
「そうかもしれないが、おににぎりが美味しいのは確かだ。具材はそれ以下なのは決まりきっている事実なのだから、喧嘩まではいかない可能性がある」
「まーけどさ。ブランド米を変えたら味の変化も結構出たよね!」

 延々語ってそうな予感がしたので、私が別な話題を放り込むとすかさず二人が即座に食いついた。

「そう! そうなんだ! 味わいがここまで変化するとは予想外がすぎる!」
「いやー。これには誰もがお手上げですわ。ブランド米の良い部分のポテンシャルをこれでもかと引き上げる。まさに料理人の鏡ですわ。いつもだったら僕ちゃん的に中々じゃーんとか言い出すんだけど、ぐうの音も出ませーーーん。いつの味も最高だけど、コイツは最高オブ最高。僕ちゃんの負け。完敗ですわ」
 
 今度は嬉々として持論を述べている。ブランド米を変更しただけなのだけれど、評価が高い。それもその筈。一回目は一番良いものを使ってみようとなり王道を行こうと『高い=うまい』の単純方程式から最高級米『艶しらゆき』を使用したのだ。
 
 実はこれ。いつもおにぎりに使っているブランド米『かぐや』を減化学肥料と減農薬で栽培した『特別栽培米』なのである。水質が良いとされる地域での澄んだ水を使い、寒暖差のある気温差が激しくある環境下だからこそ、現れる特徴。独特な甘くて粘り気のある美味しいお米が作られるのである。
 更に注文されてから精米しているこだわり様。
 実はかぐやを有名なブランド米に押し上げてくれたお礼として、プレゼントしてくれた代物だったのだ。

 しかし余談だが、いくら美味しくても値段も最高級だ。売上も最高なのかと問われれば別なのである。手間暇かけて作ったはいいが、逆にコスパを重視する人や、純粋に値段が高すぎて買わない人。高級路線の飲食店だったとしても、同じ高級路線で作られたブランド米との競合がある。中々シビアであり、相応のリターンがあるとは言い難いのだ。
 つまり、こだわってつくってもあまり売れないというパターンが存在する。ブランド米『かぐや』の影響力によりこちらの『艶しらゆき』も売れてはいるのだが、皆がこぞって求めるのはおにぎりのあの味。『かぐや』が圧倒的な人気なのだ。

 つまり、『艶しらゆき』もおにぎりに使って人気にしてくださいという意図もヒシヒシと感じると、和人さんと志保さんが笑っていた。飛行機に乗ってわざわざ直接やってきて感謝をして泣いてた割にしたたかでもあるらしい。いや、利益とかメリットとかはそっちのけで、こっちは単純に美味しいから使っているだけだけどね。

 おにぎりをのブランド米の変化は好ましいなら研究をするだけだ。色々試せばいい。しかし、二人は気づいてないのだ。

「ねぇ、あのさ。一つ重要な問題があるよ?」
「え?」「マ?」
 
 私の発言に二人は驚いた様子をみせた。

(えっ、本当に気づいてないの?)
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