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序章 クズ男と年齢逆行。そして逃げ
第三話
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自宅の台所で、物思いにふける。願ってはみたものの本当に料理チートがあるのだろうか……?
けど、私の存在がなくなっている以上は何かがあってもおかしくはない。その何かを期待して、私は『おにぎり作り』にチャレンジすることにした。
まず、水道で手を丁寧に洗う。
「まずはお米を洗うんだよね……?」
収納場所から米が入った容器を取り出そうとして、何も無い場所に躓いて中身をぶち撒けてしまった。
「うああああああ! またやらかした。何で? 料理チートがあるんじゃないの??」
料理に関してドジで不器用な面がまるで改善が見られなかった。打ちひしがれながらも、取り敢えず床に接していない部分を何度も床に零しながらすくって戻す。
床に落ちた部分は水で洗って一旦避けておく。軽量カップで測った時に、上に乗っけて戻せばなんとかなる。
しかし、ここからも大変だった。軽量カップで何回入れたか忘れる。お米を洗うのに米と水を盛大に撒き散らして洗う。
手を引っ掛けて調味料が入った容器をぶち撒けて片付けに時間がとられる。炊飯釜にいれる水の量を間違える。中々適量入れられなくて何度もやり直す。
などなど、本来のおにぎりを作る以上に、他に色々やらかしてしまうのだ。台所は見るも無惨にぐぢゃぐちゃだった。
「こ……こんなはずじゃ……これじゃあ、前と何にも変わってない………あ、味! きっと作ったら美味しくなる筈!」
ぐちゃぐちゃの台所は放置。気を取り直して、今は何とか炊けたお米を握らなくてはならない。
水の量が不適切で、水っぽいお米を握ろうとして、熱さに絶叫。火傷する。ラップで何とか握ったものの、何とも不格好な残骸が完成してしまった。
「な、泣きたい………。これは確かに元彼に残飯って言われるレベル……」
しかし、問題は味。味さえ良ければ全てはどうでも良くなる。
私は恐る恐るおにぎりらしき物体を口に入れた。
「うぇっ、な、なにこれしょっぱい。じゃりじゃりするし。べしゃべしゃだし。不味すぎる………」
(結局何も変わらなかった。料理チートなんてある訳ないんだ)
私は泣きながら不味すぎるおにぎりを無理やり食べた。
(今日は良く泣く日だな……涙腺緩んでるのかな………けど、駄目だ。悲しい……)
残りのご飯はお母さんに夕食に出して貰うしか無い。水っぽいだけで、私が関わらなければ全く問題ないご飯だからだ。
完全に気力を無くしていたものの、この惨状はそのままには出来ない。確実に怒られるし、料理は片付けまで含まれると思っているからだ。
掃除はドジらない。幾ら悲しくても手は的確に動き、時間はかかったものの、ピカピカのキッチンへ戻ったのだった。
(期待なんてしない。料理なんて、もうやらない)
━━━━完全に心が折れた私は料理から再び逃げたのだった。
日曜日を凹んで過ごして月曜日になった。
私は全くの覚えのない高校に登校していた。生徒手帳から高校名を知り、道のりを調べていたのだ。
正直、学年は2年だと分かっていたが、クラスは分からないからどうしたものかと困っていたら、女友達が絡んで来てくれて、引っ張ってくれたため教室と自席までたどり着くことが出来た。
懐かしの授業を受けての休み時間。
バイト雑誌をパラパラ眺めていると、急にページが陰った。
「バイト探してるのか?」
「え? あーまぁ。うん」
顔をあげると、そこにはクラスの男子が立っていた。きっちりと隙なく着ている制服。細いフレームのメガネが似合っている男子だ。いかにも神経質で真面目そうなタイプ。というか顔立ちが非常に整っている。
私に話しかけるのは予想外だったのか、クラスの特に女子が一瞬ざわめいたのがわかった。
「俺は清水 連。クラスメイトだ。すまないが、少し来てくれないか?」
「え?」
途端に今度はハッキリとざわめいた。清水が私の手を握り、引っ張ったからだ。
しかし、あくまでも軽くだ。決して強引に無理矢理ではない。逃げないで欲しい意図の現れと、場所を変えて話そうと誘導しようとしているのが分かる。
「頼むよ」
「そこまで言うなら」
「感謝する」
清水がうっすら微笑んだ。すると今までの堅物そうな印象は鳴りを潜めた。途端、一転して柔らかな表情になる。といってもそれは直ぐに元に戻ってしまったが。
そうして、クラスメイト達から冷やかされながら移動。たどり着いた人気の無い階段下のスペースで、対峙することになった。
「それで話って? 間違っても告白なんかじゃないんでしょ?」
「あぁ。話が早くて助かるよ。実は━━……」
「?」
「君には救世主になって欲しいんだ」
は???
けど、私の存在がなくなっている以上は何かがあってもおかしくはない。その何かを期待して、私は『おにぎり作り』にチャレンジすることにした。
まず、水道で手を丁寧に洗う。
「まずはお米を洗うんだよね……?」
収納場所から米が入った容器を取り出そうとして、何も無い場所に躓いて中身をぶち撒けてしまった。
「うああああああ! またやらかした。何で? 料理チートがあるんじゃないの??」
料理に関してドジで不器用な面がまるで改善が見られなかった。打ちひしがれながらも、取り敢えず床に接していない部分を何度も床に零しながらすくって戻す。
床に落ちた部分は水で洗って一旦避けておく。軽量カップで測った時に、上に乗っけて戻せばなんとかなる。
しかし、ここからも大変だった。軽量カップで何回入れたか忘れる。お米を洗うのに米と水を盛大に撒き散らして洗う。
手を引っ掛けて調味料が入った容器をぶち撒けて片付けに時間がとられる。炊飯釜にいれる水の量を間違える。中々適量入れられなくて何度もやり直す。
などなど、本来のおにぎりを作る以上に、他に色々やらかしてしまうのだ。台所は見るも無惨にぐぢゃぐちゃだった。
「こ……こんなはずじゃ……これじゃあ、前と何にも変わってない………あ、味! きっと作ったら美味しくなる筈!」
ぐちゃぐちゃの台所は放置。気を取り直して、今は何とか炊けたお米を握らなくてはならない。
水の量が不適切で、水っぽいお米を握ろうとして、熱さに絶叫。火傷する。ラップで何とか握ったものの、何とも不格好な残骸が完成してしまった。
「な、泣きたい………。これは確かに元彼に残飯って言われるレベル……」
しかし、問題は味。味さえ良ければ全てはどうでも良くなる。
私は恐る恐るおにぎりらしき物体を口に入れた。
「うぇっ、な、なにこれしょっぱい。じゃりじゃりするし。べしゃべしゃだし。不味すぎる………」
(結局何も変わらなかった。料理チートなんてある訳ないんだ)
私は泣きながら不味すぎるおにぎりを無理やり食べた。
(今日は良く泣く日だな……涙腺緩んでるのかな………けど、駄目だ。悲しい……)
残りのご飯はお母さんに夕食に出して貰うしか無い。水っぽいだけで、私が関わらなければ全く問題ないご飯だからだ。
完全に気力を無くしていたものの、この惨状はそのままには出来ない。確実に怒られるし、料理は片付けまで含まれると思っているからだ。
掃除はドジらない。幾ら悲しくても手は的確に動き、時間はかかったものの、ピカピカのキッチンへ戻ったのだった。
(期待なんてしない。料理なんて、もうやらない)
━━━━完全に心が折れた私は料理から再び逃げたのだった。
日曜日を凹んで過ごして月曜日になった。
私は全くの覚えのない高校に登校していた。生徒手帳から高校名を知り、道のりを調べていたのだ。
正直、学年は2年だと分かっていたが、クラスは分からないからどうしたものかと困っていたら、女友達が絡んで来てくれて、引っ張ってくれたため教室と自席までたどり着くことが出来た。
懐かしの授業を受けての休み時間。
バイト雑誌をパラパラ眺めていると、急にページが陰った。
「バイト探してるのか?」
「え? あーまぁ。うん」
顔をあげると、そこにはクラスの男子が立っていた。きっちりと隙なく着ている制服。細いフレームのメガネが似合っている男子だ。いかにも神経質で真面目そうなタイプ。というか顔立ちが非常に整っている。
私に話しかけるのは予想外だったのか、クラスの特に女子が一瞬ざわめいたのがわかった。
「俺は清水 連。クラスメイトだ。すまないが、少し来てくれないか?」
「え?」
途端に今度はハッキリとざわめいた。清水が私の手を握り、引っ張ったからだ。
しかし、あくまでも軽くだ。決して強引に無理矢理ではない。逃げないで欲しい意図の現れと、場所を変えて話そうと誘導しようとしているのが分かる。
「頼むよ」
「そこまで言うなら」
「感謝する」
清水がうっすら微笑んだ。すると今までの堅物そうな印象は鳴りを潜めた。途端、一転して柔らかな表情になる。といってもそれは直ぐに元に戻ってしまったが。
そうして、クラスメイト達から冷やかされながら移動。たどり着いた人気の無い階段下のスペースで、対峙することになった。
「それで話って? 間違っても告白なんかじゃないんでしょ?」
「あぁ。話が早くて助かるよ。実は━━……」
「?」
「君には救世主になって欲しいんだ」
は???
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