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第3話 船で聞く物語
第3話 船で聞く物語
しおりを挟む「あはははは! もうダメ!我慢できない!!」
ついに、テディは、笑い出してしまいました。
「おや? 君、話ができるのかい?」
旅人は、ベビーカーの女の人のように大騒ぎすることもなく、むしろ、少し懐かしそうな目をしてテディを見めました。
「驚かないの?」
テディが不思議そうに旅人の顔を覗き込むと、旅人は答えました。
「あぁ。昔、君みたいに話ができるテディベアと会ったことがあってね。
ちょうどこれから、この船に乗って、そのテディベアたちと会った島を再び訪れるところさ。
…ところで君、こんなところで何をしているの?」
テディは、この船にたどり着くまでの話をしました。
ある日、突然、おじいさんが、倒れてしまって、その日から夕飯の準備をしてくれなくなったこと。
それどころか、お部屋の掃除もしなくなってしまい、お店も閉め切ったまま…
おじいさんの代わりに、ミルク代やココア代を稼ごうとお金を探しに街に出て、そのまま旅人のリュックに忍び込んで、この船のたどり着いたこと。
旅人は、テディの話を黙って聞いていました。
そしてテディが話終えると、「いいかい。」と旅人は、テディの肩にそっと手を乗せ、教えてくれました。
「おじいさんは天国に行ったんだ。」
天国に行くということは、その人とお話できなくなるということ。
一緒に笑ったり、おいしいご飯を食べられなくなるということ。
そして2度と、その人に会えなくなるということ。
それは、この地球上に生まれてきた全てのものが、経験すること。
とても悲しいできごと、だけど、誰もが経験すること。
テディが、生まれるずっとずっと前から繰り返されてきたことなのだと。
「もう、おいしいココアもつくってもらえないの?おやすみの前のキスも?」テディは、涙を流しながら旅人に尋ねました。
旅人は、静かに頭を縦に振りました。
テディのつぶらな瞳から、涙がどっと溢れ出しました。
テディの頭の中には、おじいさんと過ごした楽しい思い出が、いくつもいくつも駆けめぐりました。
一緒に、食卓を囲んだこと。壊れたイスの修理を手伝ったこと。
おやすみの前に、暖かいココアを飲みながらベッドの中で物語を聞かせてくれたこと。
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