メンヘラ？ てめぇが沼なだけだろうが！！

沼

松田真人

三章 松田真斗
彼女は空蝉のようである。

まるで空っぽのような、心がここにないようなひどく遠くを見ているような目を時々していた。
栞の瞳に俺はどううつっていたのだろう。おれは彼女がずっとなにか嘘をついているような、隠し事をしているようなそんな気がしていた。
栞も俺も怖かったのだ。
自分の本音を見せたとき相手にどう思われるか、嫌われてしまうんじゃないかと。
だから、表面だけ取り繕って、大事なところは何も話さない。俺たちの欺瞞にも似た関係はそう長くは続かなかった。

欺瞞に耐えられなかった俺は単純な愛を求め、いろんな女に手を出した。

その結果、嘘で塗り固められた日常に終止符を打ったのは栞だった。

俺たちの優しさにも似た嘘の日常を思い出すとニヒルな笑いしかでてこない。

大事だったから、失いたくないから隠した。取り繕った。

そんな繕いに何も意味はないことはわかっていたのに。