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1章:鬼ごっこ
本編 15 夢か現か、それとも
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寝室の並ぶ二階。
妙に生活感のある部屋。
つい昨日まで誰かが住んでいたとさえ思える程、整理整頓、掃除が行き届いていた。
真っ白なシーツと掛け布団がセットされている綺麗なベッド、これまた白い引き出しが三段付いたタンスに、シンプルなデザインの白い勉強机と椅子。壁紙は淡い色のブルーに真っ白な雲の模様が印象的に入っている。
きっとこの家の子供が使っていた部屋なのだろう。机のブックスタンドに並ぶ古びた教科書だけが年月と持ち主を感じさせる。
「中一の教科書だ……」
何気なく手を伸ばす。
すると……。
「健吾、ご飯の支度が出来たわよ」
部屋の外から声がした。
懐かしさを感じる優しい声だった。
俺は自然と声の方へ向かっていた。
この家には誰もいないはずなのに。俺自身が確かめて、誰もいないって分かってるはずなのに。俺は懐かしさという誘惑に負けて声のする方へと歩いていた。
階段の所へ来ると美味しそうな香りがしてくる。トーストの匂いやコーヒーの匂い。頭の中には目玉焼きやソーセージが乗ったプレートが浮かぶ。
ぐぅ、お腹が鳴る。
そういえば、ずっと何も口にしてなかったと気付く。
リビングに入るとはたして、テーブルの上にはコーヒーやトースト、目玉焼きが並んでいた。
「これは……?」
美味しそうな朝食が並ぶものの、すぐに手は伸びなかった。
今にもがっついて食べたくなる衝動もあったが、それよりも警戒感が僅かに上回ったのだ。
「健吾……」
現れたのは仁美だった。
でも、さっき聞こえた声は間違いなく彼女の声ではなかった。
「どうしたの?」
「いや。それよりも、仁美、どうしてここにいるんだ?」
単純な疑問、というわけでない。何とも表現しづらいが、いわゆる第六感とでいうものが俺の心をざわつかせる。
「どうしてって……。私達、同棲してるじゃない。もう半年にはなるでしょ?」
「そ、そうだっけ?」
「そうだよ。もしかして寝ぼけてるの?」
子首を傾げる仁美。本当にそう思っているみたいにしか見えない。
「そうかもしれないな。ちょっと顔を洗ってくる」
俺はそう言ってリビングから離れる。匂いに誘われたのは事実だが、寸前で何とか踏みとどまった感じだろうか。
いなくなったはずの仁美がいた事も、謎の声の主も、益々謎が深まるばかりだった。
顔を洗ってタオルで拭く。鏡の前には少しだけ髭の伸びた自分の顔がある。表情が硬く顔色も悪い。まるで別の自分が鏡の中にいるような、そんな気分だった。
妙に生活感のある部屋。
つい昨日まで誰かが住んでいたとさえ思える程、整理整頓、掃除が行き届いていた。
真っ白なシーツと掛け布団がセットされている綺麗なベッド、これまた白い引き出しが三段付いたタンスに、シンプルなデザインの白い勉強机と椅子。壁紙は淡い色のブルーに真っ白な雲の模様が印象的に入っている。
きっとこの家の子供が使っていた部屋なのだろう。机のブックスタンドに並ぶ古びた教科書だけが年月と持ち主を感じさせる。
「中一の教科書だ……」
何気なく手を伸ばす。
すると……。
「健吾、ご飯の支度が出来たわよ」
部屋の外から声がした。
懐かしさを感じる優しい声だった。
俺は自然と声の方へ向かっていた。
この家には誰もいないはずなのに。俺自身が確かめて、誰もいないって分かってるはずなのに。俺は懐かしさという誘惑に負けて声のする方へと歩いていた。
階段の所へ来ると美味しそうな香りがしてくる。トーストの匂いやコーヒーの匂い。頭の中には目玉焼きやソーセージが乗ったプレートが浮かぶ。
ぐぅ、お腹が鳴る。
そういえば、ずっと何も口にしてなかったと気付く。
リビングに入るとはたして、テーブルの上にはコーヒーやトースト、目玉焼きが並んでいた。
「これは……?」
美味しそうな朝食が並ぶものの、すぐに手は伸びなかった。
今にもがっついて食べたくなる衝動もあったが、それよりも警戒感が僅かに上回ったのだ。
「健吾……」
現れたのは仁美だった。
でも、さっき聞こえた声は間違いなく彼女の声ではなかった。
「どうしたの?」
「いや。それよりも、仁美、どうしてここにいるんだ?」
単純な疑問、というわけでない。何とも表現しづらいが、いわゆる第六感とでいうものが俺の心をざわつかせる。
「どうしてって……。私達、同棲してるじゃない。もう半年にはなるでしょ?」
「そ、そうだっけ?」
「そうだよ。もしかして寝ぼけてるの?」
子首を傾げる仁美。本当にそう思っているみたいにしか見えない。
「そうかもしれないな。ちょっと顔を洗ってくる」
俺はそう言ってリビングから離れる。匂いに誘われたのは事実だが、寸前で何とか踏みとどまった感じだろうか。
いなくなったはずの仁美がいた事も、謎の声の主も、益々謎が深まるばかりだった。
顔を洗ってタオルで拭く。鏡の前には少しだけ髭の伸びた自分の顔がある。表情が硬く顔色も悪い。まるで別の自分が鏡の中にいるような、そんな気分だった。
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