『僕の家』(ホラー)

１章：鬼ごっこ

小話 3 夢の中の話

　僕は家に帰りたくなかった。

　いつもお父さんがいて、怒ってるんだ。
　お酒の匂いがしてるし凄く嫌なんだ。

　お母さんも妹もお父さんが怖くてビクビクしてる。でも、僕は子供だからお父さんをやっつける事なんてできないんだ。

　僕は公園のブランコに座っていた。

　影が長く伸びて時計の針みたいになっていた。

　辺りには誰もいなくて、誰かが通っても誰も僕に話し掛ける人なんていない。

　僕は知ってる。

　僕の家は"関わっちゃいけない家"だって言われてる事を。

　だから僕は暗くなるまでここに一人でいるんだ。

　学校では友達がいないけど平気なんだ。

　だって、学校には、僕を叩く人も、怒鳴る人もいないから。

　暗くなってから家に帰ると、お父さんはお母さんが買ってきたお酒を飲んでいる。お酒を飲んでいる時は、グチグチ文句を言っていても怒鳴ったり殴ったりしないんだ。
　だから僕は暗くなるまでは帰らないんだ。お母さんが帰ってくる時間までは絶対に帰らないんだ。

　クラスメイトのユウ君が公園を通り過ぎる。グローブとボールを大事そうに持って走っていく。きっと家に帰るんだろう。僕はユウ君をじっと見ていた。
　夕陽のせいでとっても眩しく見えたんだ。
　僕は無性に走りたくなってブランコから飛び降りたのだった。