12 / 25
1章:鬼ごっこ
本編 9 ハラワタ
しおりを挟む
扉には鍵なんてなかったはず。
それなのにマサキはすぐに扉を開ける事ができないでいる。
不思議な力でも働いてるのか。
僕は星空の部屋と今更ながら名付けたこの部屋を歩く。360度見渡す限り星の煌めきが広がる空間。どこまで行けば端に着くのかさえ分からない。
吸い込まれそうな星空の中、奥へ奥へと足を踏み入れる。
段々と遠くなる扉。
いつの間にか僕は上を向いて歩いていた。
星座を語れる程ロマンチストでもないけれど、喜んでプラネタリウムを見る人の気持ちが少し分かるような気がした。そう思うのには十分な程この星空は美しかった。
恐怖はとうに遠く離れ、思い出は深く埋もれ、ただこの星空の中を歩く事に夢中になりつつあった。
何だか、もう、このまま、ここにいても良いかもしれない。
さっきまでの決意はどこへやら。僕の気持ちはやる気を失っていった。
どうせ、雄大も有希も生き返る事はないんだし、マサキだって化物になったままでいるしかないんだろうし。
僕が一人で生き延びた所で碌な事にならないだろうし。
仁美は……、仁美は、まあ、何とか上手くやってくれるさ。
何も考えたくない。
このまま、何も無かった事にして、この世界でひっそりと……。
ひっそりと……。
…………。
……………………。
…………………………………………。
ふと何か見えた。
好奇心に駆られてそこに近付く。
そこにある何かの正体を理解した瞬間、僕は胃液をぶちまけていた。
見開いた目は恐怖に脅え、だらしなく口から垂れた涎、力無く開かれた手、そして側に落ちてるメガネ。
腹の部分は抉られ、赤黒く塗り潰されたようになっている。
漂う臭いに僕はまた胃液をフロアにぶちまけた。
現実。
この光景だけならまだしも、はっきりと感じる臭いが、これは現実だと僕に突き付けてるようで。
悪い夢なら良いのに。
ワルイユメならイイノニ。
「ユメジャナイ」
後ろから声がした。
ああ。
迎えに来たんだ。
「マサキ……」
僕は呟いていた。
「ユキノニクハウマカッタ。コンドハオマエノニクヲクウゾ。ケンゴ」
「あはは。良く食うな。食べ過ぎは身体に良くないぞ」
「ナゼワラウ?」
「何でだろうな」
「ナイテイル。ワラッテルノニナイテ、オカシクナッタカ」
「かもしれないな。もう、逃げるのも面倒だし、食われてやるよ」
「…………」
何やってるんだろうな。
ま、良いか。
苦しまないように殺してくれ。
「…………ツマラン。コレデハゲームニナラナイ」
マサキはそう言い残して何処かに消えた。
「ハハ……。化物にすら見捨てられた、か」
僕はその場にへたり込む。
…………何やってるんだろ。
それなのにマサキはすぐに扉を開ける事ができないでいる。
不思議な力でも働いてるのか。
僕は星空の部屋と今更ながら名付けたこの部屋を歩く。360度見渡す限り星の煌めきが広がる空間。どこまで行けば端に着くのかさえ分からない。
吸い込まれそうな星空の中、奥へ奥へと足を踏み入れる。
段々と遠くなる扉。
いつの間にか僕は上を向いて歩いていた。
星座を語れる程ロマンチストでもないけれど、喜んでプラネタリウムを見る人の気持ちが少し分かるような気がした。そう思うのには十分な程この星空は美しかった。
恐怖はとうに遠く離れ、思い出は深く埋もれ、ただこの星空の中を歩く事に夢中になりつつあった。
何だか、もう、このまま、ここにいても良いかもしれない。
さっきまでの決意はどこへやら。僕の気持ちはやる気を失っていった。
どうせ、雄大も有希も生き返る事はないんだし、マサキだって化物になったままでいるしかないんだろうし。
僕が一人で生き延びた所で碌な事にならないだろうし。
仁美は……、仁美は、まあ、何とか上手くやってくれるさ。
何も考えたくない。
このまま、何も無かった事にして、この世界でひっそりと……。
ひっそりと……。
…………。
……………………。
…………………………………………。
ふと何か見えた。
好奇心に駆られてそこに近付く。
そこにある何かの正体を理解した瞬間、僕は胃液をぶちまけていた。
見開いた目は恐怖に脅え、だらしなく口から垂れた涎、力無く開かれた手、そして側に落ちてるメガネ。
腹の部分は抉られ、赤黒く塗り潰されたようになっている。
漂う臭いに僕はまた胃液をフロアにぶちまけた。
現実。
この光景だけならまだしも、はっきりと感じる臭いが、これは現実だと僕に突き付けてるようで。
悪い夢なら良いのに。
ワルイユメならイイノニ。
「ユメジャナイ」
後ろから声がした。
ああ。
迎えに来たんだ。
「マサキ……」
僕は呟いていた。
「ユキノニクハウマカッタ。コンドハオマエノニクヲクウゾ。ケンゴ」
「あはは。良く食うな。食べ過ぎは身体に良くないぞ」
「ナゼワラウ?」
「何でだろうな」
「ナイテイル。ワラッテルノニナイテ、オカシクナッタカ」
「かもしれないな。もう、逃げるのも面倒だし、食われてやるよ」
「…………」
何やってるんだろうな。
ま、良いか。
苦しまないように殺してくれ。
「…………ツマラン。コレデハゲームニナラナイ」
マサキはそう言い残して何処かに消えた。
「ハハ……。化物にすら見捨てられた、か」
僕はその場にへたり込む。
…………何やってるんだろ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
【厳選】意味怖・呟怖
ねこぽて
ホラー
● 意味が分かると怖い話、ゾッとする話、Twitterに投稿した呟怖のまとめです。
※考察大歓迎です✨
※こちらの作品は全て、ねこぽてが創作したものになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる