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序章:かくれんぼ

本編 6 歪な家族(後編)

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ーー取材班の一人が呪われた家に侵入した。

 断られ続けていた呪いの家に一人、勝手に侵入したのが取材班のF川氏だった。
 彼は呪いを信じていないタイプの人間で、今回の取材でも「呪いの噂なんてただのデマだって証明してやりますよ」なんて言ってたくらいだった。

 しかし、我々取材班へ『今、呪いの家に入った。報告を楽しみにしてろ』とのメッセージを最後に、二度と我々の元に現れる事はなかったのである。

 呪われた家の噂は本当だったのか!?

 取材班はより詳しい話を聞くために一家の事を更に深く調査した。

 父親は証券会社で働いていたそうだが、多額の損失を出したとかで仕事を辞めたらしい。その後は個人で投資などを行うものの、そんなに上手く行かなかったようだ。更にギャンブルにも手を出すようになって生活に支障をきたす程になったという。
 結果、長男が私立に合格したものの公立中学に進むしかなくなったという。その事で家族とは度々ケンカになっていた。近所で聞かれていた怒鳴り声も、そのケンカの時のものだと思われる。

 生活は何とか残った貯金を切り崩したたり、母親のパート代で賄っていた事も判明した。

 兄妹の方は、兄の方がだんだんと性格が荒れていったらしい。近所の住人に挨拶をしなくなったのは兄が最初だったそうだ。それから今度は睨み付けるようになったり、怪我をしてる様子も見られたという。
 妹の方も元々は明るい子だったのが、次第に内向的で暗い表情しか見せなくなったと、こちらは元同級生などが語ってくれた。

 この兄妹は近所では一緒にいる所をよく目撃されていた。その時には仲良さそうに見えていたという。

 そして、長男の中学受験から七年後にあの心中事件である。

 七年の間に何があったのか。

 更に取材を続けた。

 すると、長男は高校の学費を稼ぐために、高校入学してからずっとアルバイトをしていた事が分かった。遊ぶ余裕もなく、友達も全然いなかったという。
 アルバイト先はすでになくなっていたものの、当時の責任者に話を聞く機会があった。
「彼は非常に真面目に黙々と仕事をしてくれました。ただ、特定の友人などはいなくて、いつも仕事が終わるとさっさと一人で帰っていましたね」
 近所の住民の話とは違って真面目に働いているという事に、筆者は少なからず驚きをおぼえた。

 次に長男の元同僚という人物に取材する事ができた。彼が言うには長男はよくアザを作ってきていたというのだ。
「父親が暴れた時にできたアザだって言ってましたね。妹と守らないといけないみたいな事もよく言ってましたよ。警察とかに相談するようにも言ってみたんですがね……」
 彼は寂しそうな顔でそう話してくれた。

 どうやら父親からの暴力が家庭内ではあったようだ。近所の住民の話で、怪我をしてる所をよく見たとか、よく妹と一緒にいるなどの話とこれで繋がった。

 父親は仕事を辞めてから家庭内で暴力を振るっていた。そんな状況にも関わらず他に住む場所の当てがない彼らでは家を出る選択肢を取る事ができなかったのかもしれない。長男は妹を守るために父親からの暴力に耐えていた。そのため、近所では怪我をした様子や、妹と一緒の所をよく目撃されていたのだろう。長男は真相を近所の人に話せなくて、だんだんと無愛想な感じになってしまったのかもしれない。

 だとしたら、この呪いは父親に対する怨みから生まれたのだろうか。
 だとしても、人が消える理由にはならなそうだ。
 我々取材班はもっと深く呪われた家を調べるべく、何とかあの呪われた家に入れないか交渉を続けたのだった。

ーー


 記事を読み終える。

 この家が心中事件の現場。

 もしかしたら、このリビングに死体があったのかもしれないのか……。

 ソファーに座ってるという幽霊は家族のうちの誰なんだろうか。

 座ってるって事はここで死んだわけではないのだろうか。

 とにかく真相を調べる事が脱出に繋がるような気がした。

「誰かいるの?」

「「!?」」

 僕らは顔を見合わせる。

 僕ら五人の誰とも違う声。

「人の家に勝手に入って何するつもり?」

 耳元で言われたような感じで聞こえるその声。
 僕も仁美も変な汗が吹き出て止まらなくなってた。

 恐る恐る振り返ってみても誰もいない。

 どうやら本格的にヤバくなってきてしまったようだ。
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