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第3章:ロボットとニンゲンの距離
エリーを探して
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「ったく、わざわざこんな所にまで来てやったのにろくな物が無いじゃないか」
「イモとかウケる」
「ロボットが偉そうに町を歩いてやがるのは見てて気分悪いな」
「早く、あのアンドロイドの女探して帰ろう」
「そうだな」
三人の男がビルの一つから出てくる所だった。
メガネの男、背の高い筋肉質の男、背の低い猫背の男の三人。
彼らはまだ僕の事には気づいてないようだ。
「こんな壊れかけのビルがいくつもあったら探すのも一苦労だぜ」
「さすがに普通に暮らすにはこんな所は選ばないだろ」
「だから比較的キレイなビルしか行ってないだろ」
「むしろ、ヒトが住めるビルかどうかを見極めてだな……」
「あそこに〈学校〉がある。アンドロイドが通ったりしないか?」
「バカか。アンドロイドが行く必要なんて無いだろ」
「いやまて。あのアンドロイドといたニンゲンの男がいた。アイツがいるかもしれん」
「なるほど」
メガネ男のセリフにニヤリと笑う猫背男。もう一人はピンときてない様子だ。
「どういう事だ?」
「つまり、学校に来るあの男を捕まえてアンドロイドの居場所を吐かせれば良い」
「お、なるほど。アンドロイドの連れの男を狙うってわけか」
「ああ。行くぞ」
三人は学校の方へと行った。
チャンスだ。
僕は彼らに見つからないように反対方向へと向かう。
他にもニンゲンが来ているかもしれないと、キョロキョロと周りを警戒しながらエリーを探す。
エリーと合流すれば何か突破口があるかもしれないから。
彼女がいそうな場所、彼女が行きそうな場所……。
そうだ!
墓地だ。
あそこには定期的に行ってるはずだし、今日だっているかもしれない。
僕は急いで墓地へと向かう。
橋を渡るとビル街から住宅街へと変貌していく。
あの時の記憶をたどり墓地へと走る。
人の気配のない街。
ニンゲンのいる町を見てしまったせいなのか、この人のいない住宅街が不気味な静けさに覆われているような気さえしてきた。
黒猫が横切る。
不吉だなんて話を聞いた事がある。
急に怖くなって立ち止まる。
そして、後ろを向く。
もしかして誰かが、あのニンゲンが、後ろに来てるんじゃないかって思ってしまったから。
「だ、誰もいないじゃないか。迷信ってやつだよ。そうだよ。猫が横切ったくらいで、そんな、ね」
ホッとして再び墓地へと走ろうとする。
似たような家々。
歩く。
歩く。
歩く。
そして、
やがて、
止まる。
迷ったらしい。
いや、違う。完全に迷った。
「はあ。何やってんだか」
自分で笑ってしまう。
今まで、いつだって、僕は自分で何もやりとげてないんだから。
エリーに着いていっただけ。
ロボットの家族に言われた事をしてただけ。
何も自分の力で、意志で、やった事なんて何一つないんだ。
ようやく気付くなんて。
一四年生きてきてようやく。
力なく歩きだす。
きっと知ってる場所に着く。
そう信じて歩くしかなかった。
茶色い屋根、赤い屋根、青い屋根。
等間隔に生える電柱は何の目印にもなりはしない。
見覚えのある所……。
僕は何も思い付かなかった。
「イモとかウケる」
「ロボットが偉そうに町を歩いてやがるのは見てて気分悪いな」
「早く、あのアンドロイドの女探して帰ろう」
「そうだな」
三人の男がビルの一つから出てくる所だった。
メガネの男、背の高い筋肉質の男、背の低い猫背の男の三人。
彼らはまだ僕の事には気づいてないようだ。
「こんな壊れかけのビルがいくつもあったら探すのも一苦労だぜ」
「さすがに普通に暮らすにはこんな所は選ばないだろ」
「だから比較的キレイなビルしか行ってないだろ」
「むしろ、ヒトが住めるビルかどうかを見極めてだな……」
「あそこに〈学校〉がある。アンドロイドが通ったりしないか?」
「バカか。アンドロイドが行く必要なんて無いだろ」
「いやまて。あのアンドロイドといたニンゲンの男がいた。アイツがいるかもしれん」
「なるほど」
メガネ男のセリフにニヤリと笑う猫背男。もう一人はピンときてない様子だ。
「どういう事だ?」
「つまり、学校に来るあの男を捕まえてアンドロイドの居場所を吐かせれば良い」
「お、なるほど。アンドロイドの連れの男を狙うってわけか」
「ああ。行くぞ」
三人は学校の方へと行った。
チャンスだ。
僕は彼らに見つからないように反対方向へと向かう。
他にもニンゲンが来ているかもしれないと、キョロキョロと周りを警戒しながらエリーを探す。
エリーと合流すれば何か突破口があるかもしれないから。
彼女がいそうな場所、彼女が行きそうな場所……。
そうだ!
墓地だ。
あそこには定期的に行ってるはずだし、今日だっているかもしれない。
僕は急いで墓地へと向かう。
橋を渡るとビル街から住宅街へと変貌していく。
あの時の記憶をたどり墓地へと走る。
人の気配のない街。
ニンゲンのいる町を見てしまったせいなのか、この人のいない住宅街が不気味な静けさに覆われているような気さえしてきた。
黒猫が横切る。
不吉だなんて話を聞いた事がある。
急に怖くなって立ち止まる。
そして、後ろを向く。
もしかして誰かが、あのニンゲンが、後ろに来てるんじゃないかって思ってしまったから。
「だ、誰もいないじゃないか。迷信ってやつだよ。そうだよ。猫が横切ったくらいで、そんな、ね」
ホッとして再び墓地へと走ろうとする。
似たような家々。
歩く。
歩く。
歩く。
そして、
やがて、
止まる。
迷ったらしい。
いや、違う。完全に迷った。
「はあ。何やってんだか」
自分で笑ってしまう。
今まで、いつだって、僕は自分で何もやりとげてないんだから。
エリーに着いていっただけ。
ロボットの家族に言われた事をしてただけ。
何も自分の力で、意志で、やった事なんて何一つないんだ。
ようやく気付くなんて。
一四年生きてきてようやく。
力なく歩きだす。
きっと知ってる場所に着く。
そう信じて歩くしかなかった。
茶色い屋根、赤い屋根、青い屋根。
等間隔に生える電柱は何の目印にもなりはしない。
見覚えのある所……。
僕は何も思い付かなかった。
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