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第2章:謎の町にて
町を後に
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「ケンタロー!」
「エリー!」
僕たちは教会の中で自然と抱き合う。
良かった。
本当に無事で良かった。
しばらく抱き合った後ふと我に返る。恥ずかしくなって体を離した。
教会の中は荘厳な雰囲気だった。
妙な静けさ。
さっきまでの騒動が嘘みたいだ。
「大丈夫だった? 怪我とかしてない?」
僕はエリーから体を離した。
「怪我って、私、アンドロイドだよ」
「そうだった」
「それに、心配したのはこっち。忠告したのに、勝手に外に出るわ、騒動まで起こして……」
エリーがため息を吐く。
「ごめん」
僕は頭を下げる。
「きっと、もう、ここはダメだね」
「え?」
「目的の物は手に入ったから」
そう言ってどこか寂しげに微笑むエリー。彼女が見せてくれてのは小さな小瓶。
「きっとこれが最後」
「???」
僕にはエリーの言った事の意味が理解できなかった。
「ふふ。ケンタローは分からなくても良いんだよ」
エリーは僕の手を取り教会の外へと向かう。
「救世主様!」
この町の人たちが待っていた。
何十人もの人が教会の外にいた。
「ここに救世主様がいるのは知ってるんだ! 出せ!」
「救世主様に会わせて!」
まただ。
何度も聞かされてきた。
救世主。
僕は、僕たちは、どれだけ謎の救世主とやらに振り回されなければならないのだろう。
「良いわ。入って来なさい」
エリー?
「本当に救世主様に会わせてもらえるんだろうな?」
「嘘だったら、あんたらを殺してやるぞ」
「そうだ。今度は確実に処刑してやらなきゃいけないな」
物騒だな。
僕が一度助かってるから『確実に』なんて言ってるんだろうな。
怖い。
エリーの後に着いて、僕、そして町の人々が教会の奥へと進む。
「ここよ」
ここは。
エリーが足を止めた場所。
あのエリーそっくりの人がガラスケースに入っている所。
「勝手に入って良いわ。私たちはここを出るから」
「救世主様!」
「ようやく本物の救世主様に会えるのね」
「我々が救世主様を救うんだ」
僕たちは部屋に入る事無く教会を出た。
誰もいない町を抜ける。
「エリー。良かったの? あそこは大事な場所じゃないの?」
「そうね。大事よ。いや、大事〈だった〉わ」
宴のあった広場を抜け、住宅街を抜け、僕たちは町の入り口へと歩く。
来た時と違うのは話し掛けてくる人が一人もいない事。
「大事だった?」
「そう。だって、もう、ここはどうにもならないもの。きっと……」
エリーは事情を理解しているようだが。
「こうなる予想はしていたの。だから……」
「だから、何?」
「ケンタロー。私は覚悟したの。あなたも、すぐにその時が来るわ」
「その時って?」
「いずれ分かる。世界はもう、人類を必要としていないのかも、ね」
エリーは空を仰ぐ。
白い大きな雲が青空の中を泳ぐ。
僕はあの雲の中にでもいるように、まだ何も見えていなかった。
「さ、帰りましょう。ケンタローの両親が待ってるわ」
町を出た所でふとエリーが口を開いた。
そうだ。
早く帰ろう。
元気な姿を見せよう。
両親、そして。
「ワンダも」
「そうだった。確かロボット犬よね」
「うん。ワンダも僕の大事な家族だから」
「そうね。彼らも、ケンタローと同じだように……」
エリーは一度だけ振り返って町を見た。
彼ら、町の人の事だろうな。
「もう、ここには来られないわ。この人類の墓場には」
墓場……。
「さあ行きましょう。目的の物も手に入ったし、早く帰らなきゃ」
僕は力強く頷いた。
ただ一つ心残りだったのは、あの初めて食べたご馳走。
もっと味わいたかったな。
「エリー!」
僕たちは教会の中で自然と抱き合う。
良かった。
本当に無事で良かった。
しばらく抱き合った後ふと我に返る。恥ずかしくなって体を離した。
教会の中は荘厳な雰囲気だった。
妙な静けさ。
さっきまでの騒動が嘘みたいだ。
「大丈夫だった? 怪我とかしてない?」
僕はエリーから体を離した。
「怪我って、私、アンドロイドだよ」
「そうだった」
「それに、心配したのはこっち。忠告したのに、勝手に外に出るわ、騒動まで起こして……」
エリーがため息を吐く。
「ごめん」
僕は頭を下げる。
「きっと、もう、ここはダメだね」
「え?」
「目的の物は手に入ったから」
そう言ってどこか寂しげに微笑むエリー。彼女が見せてくれてのは小さな小瓶。
「きっとこれが最後」
「???」
僕にはエリーの言った事の意味が理解できなかった。
「ふふ。ケンタローは分からなくても良いんだよ」
エリーは僕の手を取り教会の外へと向かう。
「救世主様!」
この町の人たちが待っていた。
何十人もの人が教会の外にいた。
「ここに救世主様がいるのは知ってるんだ! 出せ!」
「救世主様に会わせて!」
まただ。
何度も聞かされてきた。
救世主。
僕は、僕たちは、どれだけ謎の救世主とやらに振り回されなければならないのだろう。
「良いわ。入って来なさい」
エリー?
「本当に救世主様に会わせてもらえるんだろうな?」
「嘘だったら、あんたらを殺してやるぞ」
「そうだ。今度は確実に処刑してやらなきゃいけないな」
物騒だな。
僕が一度助かってるから『確実に』なんて言ってるんだろうな。
怖い。
エリーの後に着いて、僕、そして町の人々が教会の奥へと進む。
「ここよ」
ここは。
エリーが足を止めた場所。
あのエリーそっくりの人がガラスケースに入っている所。
「勝手に入って良いわ。私たちはここを出るから」
「救世主様!」
「ようやく本物の救世主様に会えるのね」
「我々が救世主様を救うんだ」
僕たちは部屋に入る事無く教会を出た。
誰もいない町を抜ける。
「エリー。良かったの? あそこは大事な場所じゃないの?」
「そうね。大事よ。いや、大事〈だった〉わ」
宴のあった広場を抜け、住宅街を抜け、僕たちは町の入り口へと歩く。
来た時と違うのは話し掛けてくる人が一人もいない事。
「大事だった?」
「そう。だって、もう、ここはどうにもならないもの。きっと……」
エリーは事情を理解しているようだが。
「こうなる予想はしていたの。だから……」
「だから、何?」
「ケンタロー。私は覚悟したの。あなたも、すぐにその時が来るわ」
「その時って?」
「いずれ分かる。世界はもう、人類を必要としていないのかも、ね」
エリーは空を仰ぐ。
白い大きな雲が青空の中を泳ぐ。
僕はあの雲の中にでもいるように、まだ何も見えていなかった。
「さ、帰りましょう。ケンタローの両親が待ってるわ」
町を出た所でふとエリーが口を開いた。
そうだ。
早く帰ろう。
元気な姿を見せよう。
両親、そして。
「ワンダも」
「そうだった。確かロボット犬よね」
「うん。ワンダも僕の大事な家族だから」
「そうね。彼らも、ケンタローと同じだように……」
エリーは一度だけ振り返って町を見た。
彼ら、町の人の事だろうな。
「もう、ここには来られないわ。この人類の墓場には」
墓場……。
「さあ行きましょう。目的の物も手に入ったし、早く帰らなきゃ」
僕は力強く頷いた。
ただ一つ心残りだったのは、あの初めて食べたご馳走。
もっと味わいたかったな。
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