【完結】最後の人類の僕と唯一のアンドロイドの彼女が出会ったら(瓦礫の街、小さな花束)

田中マーブル(まーぶる)

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第2章:謎の町にて

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「これ以上は待てない」

 僕は十字架ごと担がれた。
 空の青さ。
 先ほどまで雨だったのが信じられないくらいに晴れている。
 
「運べ! 偽者は用無しだ」

「町の外へ捨てよう」

「偽者は消してしまおう」

 僕はまたパレードのメインとして扱われる事になった。十字架に磔にされ担がれた僕は数人の男によって運ばれる。
 最初は救世主として、今度は罪人として。
 いつの間にかベルの音が鳴らされ出す。
 ガラン、ガランと少し重い音。

「お見送りだ。罪人のお見送りだ」

「祝いだ! 祝いの宴だ!」

 罪人を掲げ堂々と歩く人々。
 その中央には磔にされた僕。
 雨の上がりの暖かな陽光。

 ああ、眠くなってきたよ。
 
 エリーは今頃どうしてるのかな。

 もう、あの教会は静かになったのかな。

 まあ、どうでも良いか。

 だって、僕は眠りたいんだ。

 余計な事は考えたくないんだ……。

 ……。

 …………。

 ……………………。

「……ろ」

 何だ?

「……きろ」

 僕はまだ寝たいんだよ。

「起きろ!」

 !?

 僕は目を覚ました。
 冷たい水を掛けられて起こされた。
 
「やっと目が覚めたか。こんな状況で寝るなど信じられん。我らを騙したという罪悪感はないのか」

 無い。

 はっきり言って無い。

「何で?」

「貴様っ!」

 男が顔を赤くして僕を殴った。

「ふざけやがって!」

 一発、二発。

「そんなに人の不幸が楽しいか!?」

 さらに一発。

 口の中が痛い。鉄の匂いがする。

「何が不幸なんだ? 君たちは食べる事に不自由してないように見える。仲間だっている。誰かと争ってる様子だってない。どこが不幸なんだよ?」

「我らの悲願、憧れ、それをもたらしてくれると信じた者に裏切られる気持ち、貴様には分からないのか?」

「分からないね。そもそも、僕はずっと一人で生きてきた。家族も友達もニンゲンなんて今まで見た事さえ無かったんだ。そんな僕の気持ちをお前たちは分かるのか?」

「ふん。そんなウソはいかんな。今までにも外からニンゲンは来た。あの女に連れられてな。あの女はニンゲンじゃない。機械の身体だから。罪人よ、お前は知ってるのか?」

「ああ知ってる」

「やはりな。貴様も悪魔に魂を売った愚か者だと言う事よ。これから貴様は罰を受ける。我らの子らと同じように」

「?」

 どういう意味だ? 

「分からないようだな。この町から出ようとすれば我らは死ぬ。救世主様しかこの町から生きて出られない。救世主様と救世主様に認められた者以外は。貴様は救世主様ではない。だから生きてこの町から出られない。言ってる意味は分かるか?」

 つまり、

「僕をこのまま町の外へ放り出すつもりなんだ。そうすれば僕は死んでしまうから」

「そうだ。神の怒りによって貴様は死ぬ」

 何だか寒い。

 そうだ。僕は突然の雨で身体が濡れて、それで冷えてしまったんだ。
 
 風邪をひいてしまうな。

「くしゅん!」

 頭がふわふわしてきた。

 すでに風邪かもしれない。

「まだ着かないのか」

「もう少しです」

 もうすぐ僕は放り出されるんだ。

 怖いとかそういう感情は湧いてこなかった。恐怖も不安も無い。ただ、町から出されるという事実だけを理解している。

 暖かい布団で眠りたい。

 それが僕の今の本音だ。
 冷えた身体を暖めたいし、風邪みたいだし、ふかふか布団でゆっくり身体を休めたい。

 外にベッドとか落ちてないかな。
 町から追い出された後、落ちてるベッドで寝たりできないかな。

 あ、鼻水が垂れる。
 両手が使えないんじゃ鼻もかめない。
 垂れっぱなしだ。

 寒いし、鼻は垂れるし、頭はボーッとするし、最悪だよ。

「着いたけどどうしましょう?」

「外に運び出せ」

「それは……」

「何か問題でもあるのか?」

「だって……」

 急に様子が変わってしまった。
 着いたのなら早く外に出せば良いのに。
 どうしたんだろうか。
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