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第1章:アンドロイドの少女
アンドロイドの少女とお墓参りの後で
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「ここだね」
僕はアンドロイドの少女、エリーとお墓参りに来た。
「ええ」
静かに彼女は言った。
沢山のお墓が並ぶ墓地。
その一角に目的のお墓があった。
一つだけキレイなお墓。
彼女が丁寧に手入れしているのが分かる。
とても、大事な人だったんだろう。
花を飾り、手を合わせる。
僕も彼女に倣って手を合わせた。
「……おじいちゃん。この人です」
ブツブツと呟く彼女。
「…………だって…………だから……思うの」
よく聞き取れなかったが、亡くなったおじいちゃんに何か報告したいようだった。
僕にも関係がある事なのだろうか。
「さ、それじゃ行きましょうか」
「どこに?」
「私の家」
「え?」
急な展開過ぎて付いていけない。
何でそうなるのか。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「おかえり、エリー。それと、お客さんかね?」
「ただいま、おじいちゃん。彼がニンゲンのケンタローよ」
「ようこそ。ワシがエリーの祖父です」
「!?」
「ホログラムよ」
彼女の家に入ってすぐの出来事だった。
いきなり年老いた男性が僕とリリーを迎えてくれたのだ。
びっくりした。
本当に目の前にニンゲンがいるみたいだったから。
「君はアンドロイドだろ? おじいちゃんとはどういう関係なんだい?」
奥へと案内する彼女に着いて歩きながら、僕はつい尋ねていた。
「私を作ったのがおじいちゃんよ。私はおじいちゃんの本当の孫娘をモデルに作られたの」
「そうなんだ」
「ずいぶん前の話よ」
キレイにされた室内。
僕はソファーに座らせて貰った。
ローテーブルがあって、壁際に引き出しの付いた背の低い棚。
ローテーブルの上にはあの時と同じ花が花瓶に挿してあった。
黄色い中心部から白い花弁が広がる可愛らしい花だ。
「カモミールよ」
「カモミール?」
「ええ」
「好きなのかい?」
「この辺りでたまたま咲いていただけよ」
「そうなんだ。良いよね。こうして花があるのって」
「ありがと」
「ところで、何故僕をここに連れてきたの?」
「…………それは、ね」
「ワシが話そうか」
おじいちゃんが立っていた。
「ははは。ホログラムなんだから、急に現れたり消えたりするなんて朝飯前だよ」
そう言って急に消えたかと思えば、僕の後ろに現れる。
「ほら。こんな風にな」
「うわわ!」
後ろから話し掛けられて僕の心臓は飛び上がった。
「おじいちゃん!」
エリーが大声を出す。
「すまんすまん。さて、ケンタロー君」
「は、はい」
「ワシはね、A.I.でね、本物のワシは一度もアンドロイドエリーと会う事ないまま死んでしまったんだ」
「……」
「アンドロイドとはいえ、エリーは私の孫娘だ。少しでもニンゲンと仲良く暮らして欲しい」
「うん」
「エリー。機械だって劣化してしまう。ワシだっていつかは完全に消えてしまうのだよ。何度も言って聞かせたね」
「でも、それじゃ……」
彼女の声は今にも消えそうな程弱々しい。
「ニンゲンのお友達とエリーとワシとで暮らすつもりだったのか?」
「だって、おじいちゃんが一人で消えるなんて、私、嫌よ」
彼女は俯いたまま言った。
僕には彼女がどんな表情か見えないけれど、心が締め付けられて苦しかった。
「エリー。ワシはもうニンゲンじゃない。ロボットでもない。だから気にするな。エリーは心を持ったアンドロイドなんだから。ニンゲンと暮らせるなら、ニンゲンと暮らした方が良い」
「…………」
「ケンタロー君」
「……」
じっとおじいちゃんのホログラムを見つめた。僕たちにはそれで十分だった。
「エリーを連れていって欲しい。本物のニンゲンの温もりを教えてやってくれ」
僕は力強く頷いた。
「それと……」
棚の引き出しが開く。
「地図が入ってる。彼女のメンテナンスのために必要な物がそこにある。一緒に行ってやってくれないか」
「おじいちゃん。私、別に長生きしたいわけじゃない」
「自分の子供や孫には長生きして幸せになって欲しいんだよ。ニンゲンの親ってのはそういうもんなんだ。それに分かってるだろ?」
「でも、だって……」
「じゃあ、頼んだよ。ケンタロー君」
ホログラムは消えた。
おじいちゃんの穏やかな笑顔だった。
「エリー」
「ケンタロー」
「行こうか」
「ケンタロー。私、あそこには行きたくない」
「あそこって、おじいちゃんが言ってた場所の事?」
「そう」
「でもさ、エリーが生きるためには必要なんだろ?」
「そうだけど……」
「じゃあ行こう。僕がそばにいるから」
僕は躊躇する彼女の手を引き出発した。
地図の示す場所に何があるのか僕は知らない。
けど、エリーと一緒なら何があっても大丈夫だと思っていた。
1章 終わり
僕はアンドロイドの少女、エリーとお墓参りに来た。
「ええ」
静かに彼女は言った。
沢山のお墓が並ぶ墓地。
その一角に目的のお墓があった。
一つだけキレイなお墓。
彼女が丁寧に手入れしているのが分かる。
とても、大事な人だったんだろう。
花を飾り、手を合わせる。
僕も彼女に倣って手を合わせた。
「……おじいちゃん。この人です」
ブツブツと呟く彼女。
「…………だって…………だから……思うの」
よく聞き取れなかったが、亡くなったおじいちゃんに何か報告したいようだった。
僕にも関係がある事なのだろうか。
「さ、それじゃ行きましょうか」
「どこに?」
「私の家」
「え?」
急な展開過ぎて付いていけない。
何でそうなるのか。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「おかえり、エリー。それと、お客さんかね?」
「ただいま、おじいちゃん。彼がニンゲンのケンタローよ」
「ようこそ。ワシがエリーの祖父です」
「!?」
「ホログラムよ」
彼女の家に入ってすぐの出来事だった。
いきなり年老いた男性が僕とリリーを迎えてくれたのだ。
びっくりした。
本当に目の前にニンゲンがいるみたいだったから。
「君はアンドロイドだろ? おじいちゃんとはどういう関係なんだい?」
奥へと案内する彼女に着いて歩きながら、僕はつい尋ねていた。
「私を作ったのがおじいちゃんよ。私はおじいちゃんの本当の孫娘をモデルに作られたの」
「そうなんだ」
「ずいぶん前の話よ」
キレイにされた室内。
僕はソファーに座らせて貰った。
ローテーブルがあって、壁際に引き出しの付いた背の低い棚。
ローテーブルの上にはあの時と同じ花が花瓶に挿してあった。
黄色い中心部から白い花弁が広がる可愛らしい花だ。
「カモミールよ」
「カモミール?」
「ええ」
「好きなのかい?」
「この辺りでたまたま咲いていただけよ」
「そうなんだ。良いよね。こうして花があるのって」
「ありがと」
「ところで、何故僕をここに連れてきたの?」
「…………それは、ね」
「ワシが話そうか」
おじいちゃんが立っていた。
「ははは。ホログラムなんだから、急に現れたり消えたりするなんて朝飯前だよ」
そう言って急に消えたかと思えば、僕の後ろに現れる。
「ほら。こんな風にな」
「うわわ!」
後ろから話し掛けられて僕の心臓は飛び上がった。
「おじいちゃん!」
エリーが大声を出す。
「すまんすまん。さて、ケンタロー君」
「は、はい」
「ワシはね、A.I.でね、本物のワシは一度もアンドロイドエリーと会う事ないまま死んでしまったんだ」
「……」
「アンドロイドとはいえ、エリーは私の孫娘だ。少しでもニンゲンと仲良く暮らして欲しい」
「うん」
「エリー。機械だって劣化してしまう。ワシだっていつかは完全に消えてしまうのだよ。何度も言って聞かせたね」
「でも、それじゃ……」
彼女の声は今にも消えそうな程弱々しい。
「ニンゲンのお友達とエリーとワシとで暮らすつもりだったのか?」
「だって、おじいちゃんが一人で消えるなんて、私、嫌よ」
彼女は俯いたまま言った。
僕には彼女がどんな表情か見えないけれど、心が締め付けられて苦しかった。
「エリー。ワシはもうニンゲンじゃない。ロボットでもない。だから気にするな。エリーは心を持ったアンドロイドなんだから。ニンゲンと暮らせるなら、ニンゲンと暮らした方が良い」
「…………」
「ケンタロー君」
「……」
じっとおじいちゃんのホログラムを見つめた。僕たちにはそれで十分だった。
「エリーを連れていって欲しい。本物のニンゲンの温もりを教えてやってくれ」
僕は力強く頷いた。
「それと……」
棚の引き出しが開く。
「地図が入ってる。彼女のメンテナンスのために必要な物がそこにある。一緒に行ってやってくれないか」
「おじいちゃん。私、別に長生きしたいわけじゃない」
「自分の子供や孫には長生きして幸せになって欲しいんだよ。ニンゲンの親ってのはそういうもんなんだ。それに分かってるだろ?」
「でも、だって……」
「じゃあ、頼んだよ。ケンタロー君」
ホログラムは消えた。
おじいちゃんの穏やかな笑顔だった。
「エリー」
「ケンタロー」
「行こうか」
「ケンタロー。私、あそこには行きたくない」
「あそこって、おじいちゃんが言ってた場所の事?」
「そう」
「でもさ、エリーが生きるためには必要なんだろ?」
「そうだけど……」
「じゃあ行こう。僕がそばにいるから」
僕は躊躇する彼女の手を引き出発した。
地図の示す場所に何があるのか僕は知らない。
けど、エリーと一緒なら何があっても大丈夫だと思っていた。
1章 終わり
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