【完結】最後の人類の僕と唯一のアンドロイドの彼女が出会ったら(瓦礫の街、小さな花束)

田中マーブル(まーぶる)

文字の大きさ
上 下
5 / 32
第1章:アンドロイドの少女

アンドロイドの少女とロボット家族とお祭り

しおりを挟む
「いただきます」

 テーブルには僕の食事の用意がされている。
 対面には円錐の形をしたロボット母さん。
 僕の右手の画面に映し出される四角い顔のロボット父さん。
 いつもの光景。
 いつもの食卓。
 ロボット用の飲料オイルを僕の食事中では絶対に飲まない二人。
 油の臭いで僕が食欲を無くしたり、美味しく食べられなくかもしれないから。
 一人だけで食べるのは当たり前で慣れてしまっているけど、誰かと一緒に同じ物を食べれたら、なんて事はよく思う。

「そういえば、もうすぐお祭りが始まるわね。ケンタローは行くの?」

「行こうかな。ニンゲンは僕一人だけだし。お祭り用ロボットが誰にも見てもらえないなんて寂しいもん」

「あら、去年も一昨年も興味無いって行かなかったのにどうしたのかしらね」

「やっぱりアレじゃないか。母さんが言ってたじゃないか。ケンタローが恋してるかもしれないって」

「そうだったわね。最近少し変だったものね。恋をしてたのなら理解できるわ。ニンゲンは恋をすると言動が変化するって学習したもの」

「相手はどんなロボットなんだろうね。マンガの中のキャラクターが相手ではないよな。それだったら祭りに行く理由がないからな」

「そうね。今、この辺でアンドロイドが目撃されてるって話だから、そのアンドロイドと会ったんじゃないかしら?」

「どうしてそう思うんだい?」

「ケンタローが変になったのと、アンドロイドの噂が出たのが、同じタイミングだもの。つい数日前よ」

「確かにアンドロイドならニンゲンに近いというし、あり得る話だな。ケンタローにとっても良い事だろう。私達みたいなロボットと生活するより、ニンゲンのようなアンドロイドとの生活の方が幸せに違いない」

「…………」

「?」

「どうしたの、ケンタロー?」

「勝手に決めるじゃねーよ。僕は父さんと母さんの事、ロボットだけど、ちゃんと家族だと思ってるんだから」

 僕は食事の手を止めていた。
 ロボット犬のワンダがいつの間にか僕の足元に来ている。

「ワンダだって家族だよ」

 そう言ってワンダの頭を撫でてやる。

「家族。ロボットの私達の事をそう言ってくれるなんて嬉しいわ」

「ああ。そうだな」

 ロボットに感情。
 ずっと一緒に暮らしてきたから僕自身は彼らに情が湧いてる。でもロボットが感情を持つなんてあるのだろうか?

「ワンワン!」

「ワンダも家族って言われて嬉しいのね」

 しっぽを振るワンダを見て僕は思う。
 ロボットに感情があるかどうかも大事かもしれないけど、僕がどう感じるかの方が大事だよなって。

「ふふふ。久し振りにケンタローの笑顔を見た気がするわ」

「ここ数日は難しい顔、険しい顔、悲しい顔ばかりだったからな」

「そんなに元気無かった?」

 心配させてかもしれないな。

「そうね。でも、もう大丈夫そうね」

「ごめんね。気を使わせて」

「私達はロボットだから気にしなくて良いのよ。」

 僕の心が救われた気がした。
 機械的にそう言ってるだけだとしても。

「明日は祭りの準備の様子でも見てこようかな」

「良いんじゃない?」

「ワンワン!」

「ワンダはお留守番な」

「くぅ~ん」

 悲しそうに鳴く。
 何か悪い事をしてるみたいだ。

「ワンダ、仕方ないわ。私とお留守番してましょ」

「母さん」

「ケンタローは楽しんでいらっしゃい。ニンゲンなんだから、ニンゲンらしく楽しまなくちゃ」

「うん」

 ニンゲンらしさが何かは分からないけど、楽しまなくちゃ損だよな。

「ワンダ。帰ったらいっぱい遊んでやるからな」

「ワン!」

 お祭り、楽しみだな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

こちら夢守市役所あやかしよろず相談課

木原あざみ
キャラ文芸
異動先はまさかのあやかしよろず相談課!? 変人ばかりの職場で始まるほっこりお役所コメディ ✳︎✳︎ 三崎はな。夢守市役所に入庁して三年目。はじめての異動先は「旧館のもじゃおさん」と呼ばれる変人が在籍しているよろず相談課。一度配属されたら最後、二度と異動はないと噂されている夢守市役所の墓場でした。 けれど、このよろず相談課、本当の名称は●●よろず相談課で――。それっていったいどういうこと? みたいな話です。 第7回キャラ文芸大賞奨励賞ありがとうございました。

百合系サキュバス達に一目惚れされた

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣の家に住むイクメンの正体は龍神様でした~社無しの神とちびっ子神使候補たち

鳴澤うた
キャラ文芸
失恋にストーカー。 心身ともにボロボロになった姉崎菜緒は、とうとう道端で倒れるように寝てしまって……。 悪夢にうなされる菜緒を夢の中で救ってくれたのはなんとお隣のイクメン、藤村辰巳だった。 辰巳と辰巳が世話する子供たちとなんだかんだと交流を深めていくけれど、子供たちはどこか不可思議だ。 それもそのはず、人の姿をとっているけれど辰巳も子供たちも人じゃない。 社を持たない龍神様とこれから神使となるため勉強中の動物たちだったのだ! 食に対し、こだわりの強い辰巳に神使候補の子供たちや見守っている神様たちはご不満で、今の現状を打破しようと菜緒を仲間に入れようと画策していて…… 神様と作る二十四節気ごはんを召し上がれ!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

MASK 〜黒衣の薬売り〜

天瀬純
キャラ文芸
【薬売り“黒衣 漆黒”による現代ファンタジー】  黒い布マスクに黒いスーツ姿の彼“薬売り”が紹介する奇妙な薬たち…。  いくつもの短編を通して、薬売りとの交流を“あらゆる人物視点”で綴られる現代ファンタジー。  ぜひ、お立ち寄りください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...