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勇者とは
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それから10年が経ち、10歳となった。
「ヘイトー!」
「母上、走ったら危ないですよ」
後方から母が走ってきた。
「私はヘイトと一緒に何かしたいのに、ビスタルの仕事の手伝いばかりじゃない」
「もぅ」と言いながら拗ねたような顔をする。
俺はこの国、この世界のことをこの10年でたくさんのことを覚えた。
魔族が暮らすここら一帯の他に、ふつうの人間や母のようにエルフ族など様々な種族の土地が世界中にあること。
早いうちから勉強や、この世界に存在している魔法に関することなどを覚えたことによって、父から認められた。
今ではこうして自分から手伝わせてもらっている。
「俺は母上が心配なんです。それに言ってくれれば時間くらい作りますよ」
「それじゃあ、明日は一緒にどこか出かけよう」
「わかりました」
「それから、その時は顔につけている布を取ってきて」
「ん~、それはダメです」
母が言った布とは全く俺が7歳の時に自分で開発したものだ。
転生して一週間で思った。
周りの人のステータスが常時視界に入ってきてうざい、と。
初めこそは新鮮でゲーム感覚でよかったものの、毎日見続けるとさすがに飽きてくる。
1歳や半年と言わず、ひと月ですでに嫌だった。
この場所は人が多くて嫌だ。
「明日は母上の部屋まで迎えに行きますね」
「待ってるわ!」
嵐のように忙しない人だな。
母親の頼みを無視する奴なんていないだろう。
翌日
「おはようございます」
昼前には目的の場所に着きたいと思い、少し早めに迎えにきた。
今日は現魔王である父が人間がいる街へと視察に行っているため、あまり遠くへ行くことが出来ない。
「おはよう。さあ、行くわよ」
母も準備が終わっており、すぐに出かけることができた。
目的地は白の裏側にある大きな丘である。
周りの景色は魔族の土地ということもあり、空が一年中薄暗い。
太陽を拝んだことがここ10年で一回もない。
「母上」
「何?ヘイト」
「見てもらいたいものがあります」
それは俺が10年かけて完成させた魔法だ。
魔法の世界だからといって全てが発展しているわけではない。
今まで生きてきた人たちが残した魔導書などがある。
それに従って魔導士は魔法を習得していた。
そのため、魔導書に頼りきった現代の冒険者は、魔法を新しく生み出すことが困難であると考えられている。
だが俺は魔法の研究を重ねついに完成させた。
魔法とはイメージ、組み合わせたり力の加減で無限に作り出すことができる。
今からするのはこの世界では俺しかできないだろう。
この世界にはないものだ。
「よく見ていてください。発動!」
両方の手のひらの上に魔法陣が現れ、その上にたくさんの小さな光が収束する。
収束した光が直径が15センチほどになったとき、その光を魔法陣を通して手の中に入れた。
魔法陣が消えたかと思うと、次は右の人差し指の先に現れる。
そしてその指を上に向け光を勢いよく放出した。
収束した光は30メートル上空で弾け、一帯が光に包まれたと思った次の瞬間、空には七色の光の橋が現れた。
「・・・・・・きれい」
「あれは虹と呼ばれるものです」
「こんなにきれいなもの見たことがないわ・・・・・・」
虹というものはこの世界に存在しない。
「城にあった書物で見かけて母上にも見せたくて頑張りました」
「なんでいい子なの。やっぱり私の息子ね」
母親に褒められるというのはくすぐったいような妙な気持ちにさせる。
やりたいことを終え、昼食をとることにした。
魔法があるということはもちろん空間魔法もあるわけでその空間から取り出す。
これはとても便利で収納した時の質のままで取り出すことができる。
しばらくして昼食を終えて母と話した。
父のことやこの国、この世界など様々なことを話した。
時間が経つのは早く城に戻った時だった。
普段は静かなこの城にたくさんの人が走り回り忙しない様子だ。
たまたま目の前を通り過ぎようとしていた父の家来の人に聞いた。
「何かあったんですか?」
「ビスタル様が危険な状態で戻られました」
「父が・・・・・・」
さらに聞こうとした俺を置いて母が走っていってしまった。
急いで俺も追いかけた。
父の寝室であろう場所には十数人もの人が険しい顔でベッドの上で苦しそうに横たわっている父を見つめている。
医師かと思われる人物に聞いてみた。
「ビスタル様が深傷を負っているので大変危険な状態です」
「私たちがビスタル様と視察へ行っていたとき突然勇者が現れたのです。そして勇者と戦われましたが、急なことに準備が整わずこのような結果となってしまいました」
後ろから兵士の人が詳しく教えてくれてなんとか状況を理解することができた。
「しかしこの傷はただの傷ではありません。魔王が勇者専用の剣で斬られたため、回復魔法が一切効きません」
今言われた内容は一度書庫で、勇者に関する本を読んだ時に見たことがある。
勇者が使う剣は特殊で遥か昔、この世界に落ちてきた道の鉱物で作られたものだと。
そしてその剣は勇者にしか使うことが出来ず、さらに勇者と反する魔族にしかダメージを与えることができない。
また勇者にしか適性がなかったため、魔王にとっては呪いも同然なのだ・・・・・・と。
皆なす術なく、魔王の回復力を信じ見守るだけとなった。
数日後、抗う術なく父は消滅し新たな魔王として俺が選ばれた。
「ヘイトー!」
「母上、走ったら危ないですよ」
後方から母が走ってきた。
「私はヘイトと一緒に何かしたいのに、ビスタルの仕事の手伝いばかりじゃない」
「もぅ」と言いながら拗ねたような顔をする。
俺はこの国、この世界のことをこの10年でたくさんのことを覚えた。
魔族が暮らすここら一帯の他に、ふつうの人間や母のようにエルフ族など様々な種族の土地が世界中にあること。
早いうちから勉強や、この世界に存在している魔法に関することなどを覚えたことによって、父から認められた。
今ではこうして自分から手伝わせてもらっている。
「俺は母上が心配なんです。それに言ってくれれば時間くらい作りますよ」
「それじゃあ、明日は一緒にどこか出かけよう」
「わかりました」
「それから、その時は顔につけている布を取ってきて」
「ん~、それはダメです」
母が言った布とは全く俺が7歳の時に自分で開発したものだ。
転生して一週間で思った。
周りの人のステータスが常時視界に入ってきてうざい、と。
初めこそは新鮮でゲーム感覚でよかったものの、毎日見続けるとさすがに飽きてくる。
1歳や半年と言わず、ひと月ですでに嫌だった。
この場所は人が多くて嫌だ。
「明日は母上の部屋まで迎えに行きますね」
「待ってるわ!」
嵐のように忙しない人だな。
母親の頼みを無視する奴なんていないだろう。
翌日
「おはようございます」
昼前には目的の場所に着きたいと思い、少し早めに迎えにきた。
今日は現魔王である父が人間がいる街へと視察に行っているため、あまり遠くへ行くことが出来ない。
「おはよう。さあ、行くわよ」
母も準備が終わっており、すぐに出かけることができた。
目的地は白の裏側にある大きな丘である。
周りの景色は魔族の土地ということもあり、空が一年中薄暗い。
太陽を拝んだことがここ10年で一回もない。
「母上」
「何?ヘイト」
「見てもらいたいものがあります」
それは俺が10年かけて完成させた魔法だ。
魔法の世界だからといって全てが発展しているわけではない。
今まで生きてきた人たちが残した魔導書などがある。
それに従って魔導士は魔法を習得していた。
そのため、魔導書に頼りきった現代の冒険者は、魔法を新しく生み出すことが困難であると考えられている。
だが俺は魔法の研究を重ねついに完成させた。
魔法とはイメージ、組み合わせたり力の加減で無限に作り出すことができる。
今からするのはこの世界では俺しかできないだろう。
この世界にはないものだ。
「よく見ていてください。発動!」
両方の手のひらの上に魔法陣が現れ、その上にたくさんの小さな光が収束する。
収束した光が直径が15センチほどになったとき、その光を魔法陣を通して手の中に入れた。
魔法陣が消えたかと思うと、次は右の人差し指の先に現れる。
そしてその指を上に向け光を勢いよく放出した。
収束した光は30メートル上空で弾け、一帯が光に包まれたと思った次の瞬間、空には七色の光の橋が現れた。
「・・・・・・きれい」
「あれは虹と呼ばれるものです」
「こんなにきれいなもの見たことがないわ・・・・・・」
虹というものはこの世界に存在しない。
「城にあった書物で見かけて母上にも見せたくて頑張りました」
「なんでいい子なの。やっぱり私の息子ね」
母親に褒められるというのはくすぐったいような妙な気持ちにさせる。
やりたいことを終え、昼食をとることにした。
魔法があるということはもちろん空間魔法もあるわけでその空間から取り出す。
これはとても便利で収納した時の質のままで取り出すことができる。
しばらくして昼食を終えて母と話した。
父のことやこの国、この世界など様々なことを話した。
時間が経つのは早く城に戻った時だった。
普段は静かなこの城にたくさんの人が走り回り忙しない様子だ。
たまたま目の前を通り過ぎようとしていた父の家来の人に聞いた。
「何かあったんですか?」
「ビスタル様が危険な状態で戻られました」
「父が・・・・・・」
さらに聞こうとした俺を置いて母が走っていってしまった。
急いで俺も追いかけた。
父の寝室であろう場所には十数人もの人が険しい顔でベッドの上で苦しそうに横たわっている父を見つめている。
医師かと思われる人物に聞いてみた。
「ビスタル様が深傷を負っているので大変危険な状態です」
「私たちがビスタル様と視察へ行っていたとき突然勇者が現れたのです。そして勇者と戦われましたが、急なことに準備が整わずこのような結果となってしまいました」
後ろから兵士の人が詳しく教えてくれてなんとか状況を理解することができた。
「しかしこの傷はただの傷ではありません。魔王が勇者専用の剣で斬られたため、回復魔法が一切効きません」
今言われた内容は一度書庫で、勇者に関する本を読んだ時に見たことがある。
勇者が使う剣は特殊で遥か昔、この世界に落ちてきた道の鉱物で作られたものだと。
そしてその剣は勇者にしか使うことが出来ず、さらに勇者と反する魔族にしかダメージを与えることができない。
また勇者にしか適性がなかったため、魔王にとっては呪いも同然なのだ・・・・・・と。
皆なす術なく、魔王の回復力を信じ見守るだけとなった。
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