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乗り越えるべき壁
役割という名の呪縛 ※No Side※ 【前編】
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ベイエル王国との交渉を任ぜられた帝国第二皇子のアルットゥリは、深刻な面持ちで馬車に揺られていた。勿論次期皇帝の座を狙っているアルットゥリは外交に関する知識は豊富にあったが、実践したことはほとんどなかった。自身としても内政を得意分野としていたため、今回の任務には不安しかなかった。
それに加え現在アルットゥリの精神はボロボロだった。今まで信じてきたものを一番認められたい人から否定され、何を信じれば良いのかわからなくなっていた。
アルットゥリは幼い頃から第三皇妃に「お前は元来人の上に立つ役割を与えられ、将来皇帝になるために生まれてきたのだ」と言われ続けてきた。母親の言葉が絶対であった幼い頃のアルットゥリはそれを信じ、今まで忠実にその言葉を守ってきた。
自分は帝国の第二皇子という恵まれた責任のある立場に生まれたのだから、その役目を果たすのは当然のこと。皇帝になることこそが自分の役割であり、生まれてきた意味なのだ。だからこそアルットゥリにとって役割は絶対に果たさなければならないものであった。どれだけ辛くて逃げ出したくなっても、立ち向かわなければならない。そんな強迫観念がアルットゥリの中にこべりついていた。
そして実際、それが自分の役割であると考えると、どれだけ大変なことがあっても我慢することが出来たのだ。どれだけ練習しても上達しなくて悔しかったこと、周りの人間が自分のことを一切褒めてくれなくて寂しかったこと、お茶会で他の同年代の子供たちが交流している中、自分だけ母親に連れられて大人たちの挨拶回りをさせられたこと、そのせいで友達が一人も出来なくて他の子を羨ましく思ったこと。そんな小さな我慢をずっと積み重ねてきた。弱音を吐かずに、これが自分の役割だと信じて。
だがだからと言って、「役割」という概念について疑問視することがなかった訳では無い。むしろ薄々気づいていた。「役割」なんて概念、人生には存在しないということに。アルットゥリが出会う人々の中には、平民でも皇帝に顔を覚えられるほど成功した者がいた。逆に華々しい繁栄から一転、没落した者もいた。彼らは与えられた役割から外れたことをした。それが良いか悪いかはわからない。だが前者は良いことのようにアルットゥリには思えた。役割を全うしなかったのが、良いことだったということか?そう考えたことは両手で数えても数え切れない。
逆に役割を全うしたのに不運に見舞われた人々も多く見てきた。役目に誠実な専属近衛騎士が訓練中の事故で騎士を続けられない身体になってしまった。昔アルットゥリの衣装を手がけていた衣装職人は自然災害で家が全壊したと言っていた。もともとアルットゥリの乳母になる予定だった女性は、出産時に命を落としたと聞く。彼らは自分の役割を全うしていたはずなのに、不幸になってしまった。悪いことなど、していなかったのに。役割を全うしたとして、それが自分に何か良い形で還元される訳では無いのだろうか?なら役割を全うする意義とは?
だがアルットゥリはそう思う度にその考えを否定し続けた。信じていることに裏切られるのが怖かった。「役割」がなければ自分に何の価値があるというのだ。
そして何より、「役割」が無いのだとしたら、今まで我慢してきた自分は、一体何だったと言うのだ。
自分の人生を否定されたくない一心で、アルットゥリはいつしか「役割」という考えを他人にも押し付けるようになった。人間誰しもが何かしらの役割を持っていると考えるようになったのだ。そして何人たりともその役割から外れた行動をしてはいけない。そう思うようになった。近衛騎士が医師の真似事のように人を治療してはいけない、仕立て屋が依頼人の私情に足を突っ込んではいけない、メイドが自ら料理をしてはいけない。騎士が薬剤師の真似事をしたいなら騎士を辞めて薬剤師になれば良い、専門分野の知識は知識豊富な騎士ではなくその道を究めた学者に任せるべきだ。
皆が自らの役割を果たしてこそ、世の中は上手く回るのだ。そんな世の中であるべきなのだ。いや、そうであらなければならないのだ。
そんな社会であってこそ、自分のこれまでの人生が報われるのだ。
そう、思っていたのに。
自分のことを一番理解して欲しかった皇帝に、自分の人生を否定された。これから自分は、何を信じて生きれば良いのだろうか。
そう悶々と考えるアルットゥリに、馬車の同乗者が声を掛けた。
「浮かない表情だな、アルットゥリ皇子。そんなにも私の交渉手腕が不安か?」
アルットゥリはその問いかけに眉を顰めた。帝国皇子であるアルットゥリに対して敬語を使わずに話しかけてくる人が周りにほとんどいなかったため、慣れないのだ。緊急会議の場で皇帝に対して敬語であった印象も強いため、余計だ。だがしかし、相手はアルットゥリと同等の地位がある人間であるため、注意することは出来ない。アルットゥリは顔を上げ、その相手を睨みつけた。
「……僕としてはどこからその自信が出て来るのか全くもって理解出来ないのだけどね。シーウェルト王子?」
アルットゥリの言葉に相手……ベイエル王国第二王子のシーウェルトは不敵に笑った。その余裕の笑みが気に食わなかったアルットゥリは、挑発気味に言葉を続ける。
「王太子でもない第二王子の貴方が、本当に国王を説得出来ると言うのかい?それに貴方のやんちゃっぷりは小耳に挟んでいるよ。今更その評価を挽回出来るのかい?」
「まあいずれ私は王太子に、しいては国王になる人間だ。これくらいのこと、やり遂げてみせるさ」
「……その発言は反逆罪で首が飛ぶんじゃないかい?」
「ん?アルットゥリ皇子は私のこの発言を王国に告げ口するのか?」
「……いえ、そんな面倒なことはしないけどさ」
アルットゥリ皇子の返答にシーウェルトは満足したかのようににんまりと笑い、「そうだろう?」と呟いた。自信喪失している自分とは正反対に自信満々なシーウェルトの態度に苛立ちを隠せないアルットゥリは、組んだ足を貧乏揺すりする。元は自分にもあった自信を目の前で見せつけられるのは、堪えるものがあった。そんな不満を感じ取ったのか、シーウェルトは呆れたようにため息をつく。
「……アルットゥリ皇子。君は何をそんなに苛立っているのだ。確かに他国、しかも仮想敵国のような国に行くのは些か心配かもしれないが、君はただそこにいるだけで良いのだ。何も気負う必要は無い」
シーウェルトはアルットゥリの苛立ちを、重度のプレッシャーによって精神的に不安定になっているからだと思った。成人して日の経つ男がみっともないと感じつつも、自分も悪夢のせいで精神が不安定になっていたので、人のことは言えないか、と自嘲した。そしてそのプレッシャーを少しでも和らげようと、呆れながらもフォローを入れたのだ。
しかしそれは火に油を注ぐ行為であった。
「……っそれが嫌なんだよ!」
馬車の座席をバンッと叩く音とアルットゥリの荒々しい声が、馬車の中に響き渡った。シーウェルトが驚いてアルットゥリの顔を見ると、アルットゥリは怒りやら苦しみやら悲しみなどが一緒くたになった様子で、振り下ろした拳を血が滲みそうなほど握りしめていた。
それに加え現在アルットゥリの精神はボロボロだった。今まで信じてきたものを一番認められたい人から否定され、何を信じれば良いのかわからなくなっていた。
アルットゥリは幼い頃から第三皇妃に「お前は元来人の上に立つ役割を与えられ、将来皇帝になるために生まれてきたのだ」と言われ続けてきた。母親の言葉が絶対であった幼い頃のアルットゥリはそれを信じ、今まで忠実にその言葉を守ってきた。
自分は帝国の第二皇子という恵まれた責任のある立場に生まれたのだから、その役目を果たすのは当然のこと。皇帝になることこそが自分の役割であり、生まれてきた意味なのだ。だからこそアルットゥリにとって役割は絶対に果たさなければならないものであった。どれだけ辛くて逃げ出したくなっても、立ち向かわなければならない。そんな強迫観念がアルットゥリの中にこべりついていた。
そして実際、それが自分の役割であると考えると、どれだけ大変なことがあっても我慢することが出来たのだ。どれだけ練習しても上達しなくて悔しかったこと、周りの人間が自分のことを一切褒めてくれなくて寂しかったこと、お茶会で他の同年代の子供たちが交流している中、自分だけ母親に連れられて大人たちの挨拶回りをさせられたこと、そのせいで友達が一人も出来なくて他の子を羨ましく思ったこと。そんな小さな我慢をずっと積み重ねてきた。弱音を吐かずに、これが自分の役割だと信じて。
だがだからと言って、「役割」という概念について疑問視することがなかった訳では無い。むしろ薄々気づいていた。「役割」なんて概念、人生には存在しないということに。アルットゥリが出会う人々の中には、平民でも皇帝に顔を覚えられるほど成功した者がいた。逆に華々しい繁栄から一転、没落した者もいた。彼らは与えられた役割から外れたことをした。それが良いか悪いかはわからない。だが前者は良いことのようにアルットゥリには思えた。役割を全うしなかったのが、良いことだったということか?そう考えたことは両手で数えても数え切れない。
逆に役割を全うしたのに不運に見舞われた人々も多く見てきた。役目に誠実な専属近衛騎士が訓練中の事故で騎士を続けられない身体になってしまった。昔アルットゥリの衣装を手がけていた衣装職人は自然災害で家が全壊したと言っていた。もともとアルットゥリの乳母になる予定だった女性は、出産時に命を落としたと聞く。彼らは自分の役割を全うしていたはずなのに、不幸になってしまった。悪いことなど、していなかったのに。役割を全うしたとして、それが自分に何か良い形で還元される訳では無いのだろうか?なら役割を全うする意義とは?
だがアルットゥリはそう思う度にその考えを否定し続けた。信じていることに裏切られるのが怖かった。「役割」がなければ自分に何の価値があるというのだ。
そして何より、「役割」が無いのだとしたら、今まで我慢してきた自分は、一体何だったと言うのだ。
自分の人生を否定されたくない一心で、アルットゥリはいつしか「役割」という考えを他人にも押し付けるようになった。人間誰しもが何かしらの役割を持っていると考えるようになったのだ。そして何人たりともその役割から外れた行動をしてはいけない。そう思うようになった。近衛騎士が医師の真似事のように人を治療してはいけない、仕立て屋が依頼人の私情に足を突っ込んではいけない、メイドが自ら料理をしてはいけない。騎士が薬剤師の真似事をしたいなら騎士を辞めて薬剤師になれば良い、専門分野の知識は知識豊富な騎士ではなくその道を究めた学者に任せるべきだ。
皆が自らの役割を果たしてこそ、世の中は上手く回るのだ。そんな世の中であるべきなのだ。いや、そうであらなければならないのだ。
そんな社会であってこそ、自分のこれまでの人生が報われるのだ。
そう、思っていたのに。
自分のことを一番理解して欲しかった皇帝に、自分の人生を否定された。これから自分は、何を信じて生きれば良いのだろうか。
そう悶々と考えるアルットゥリに、馬車の同乗者が声を掛けた。
「浮かない表情だな、アルットゥリ皇子。そんなにも私の交渉手腕が不安か?」
アルットゥリはその問いかけに眉を顰めた。帝国皇子であるアルットゥリに対して敬語を使わずに話しかけてくる人が周りにほとんどいなかったため、慣れないのだ。緊急会議の場で皇帝に対して敬語であった印象も強いため、余計だ。だがしかし、相手はアルットゥリと同等の地位がある人間であるため、注意することは出来ない。アルットゥリは顔を上げ、その相手を睨みつけた。
「……僕としてはどこからその自信が出て来るのか全くもって理解出来ないのだけどね。シーウェルト王子?」
アルットゥリの言葉に相手……ベイエル王国第二王子のシーウェルトは不敵に笑った。その余裕の笑みが気に食わなかったアルットゥリは、挑発気味に言葉を続ける。
「王太子でもない第二王子の貴方が、本当に国王を説得出来ると言うのかい?それに貴方のやんちゃっぷりは小耳に挟んでいるよ。今更その評価を挽回出来るのかい?」
「まあいずれ私は王太子に、しいては国王になる人間だ。これくらいのこと、やり遂げてみせるさ」
「……その発言は反逆罪で首が飛ぶんじゃないかい?」
「ん?アルットゥリ皇子は私のこの発言を王国に告げ口するのか?」
「……いえ、そんな面倒なことはしないけどさ」
アルットゥリ皇子の返答にシーウェルトは満足したかのようににんまりと笑い、「そうだろう?」と呟いた。自信喪失している自分とは正反対に自信満々なシーウェルトの態度に苛立ちを隠せないアルットゥリは、組んだ足を貧乏揺すりする。元は自分にもあった自信を目の前で見せつけられるのは、堪えるものがあった。そんな不満を感じ取ったのか、シーウェルトは呆れたようにため息をつく。
「……アルットゥリ皇子。君は何をそんなに苛立っているのだ。確かに他国、しかも仮想敵国のような国に行くのは些か心配かもしれないが、君はただそこにいるだけで良いのだ。何も気負う必要は無い」
シーウェルトはアルットゥリの苛立ちを、重度のプレッシャーによって精神的に不安定になっているからだと思った。成人して日の経つ男がみっともないと感じつつも、自分も悪夢のせいで精神が不安定になっていたので、人のことは言えないか、と自嘲した。そしてそのプレッシャーを少しでも和らげようと、呆れながらもフォローを入れたのだ。
しかしそれは火に油を注ぐ行為であった。
「……っそれが嫌なんだよ!」
馬車の座席をバンッと叩く音とアルットゥリの荒々しい声が、馬車の中に響き渡った。シーウェルトが驚いてアルットゥリの顔を見ると、アルットゥリは怒りやら苦しみやら悲しみなどが一緒くたになった様子で、振り下ろした拳を血が滲みそうなほど握りしめていた。
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