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学園生活をエンジョイする

ボッチ確定じゃないですかやだー(棒)

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そうこうしているうちに時は流れ、俺が学園に入学する日になった。

え?入学試験とかないのって?皇族の俺に入学試験なんてものは存在しない。金を積めば無受験で入学出来るからね。金が無い平民用に一般試験は存在するけど、受験者はほとんどいない上に合格者はその半数以下である。

帝都学園で習うことは前世の基準で言う高等学校レベルのことだから、まず平民が学ぶ必要がない。平民用に小学校、と言うより寺子屋に近い私営学校があるので、最低限のことはそこで習える。だがその最低限のことで帝都学園の一般入試は受からない。平民が受験勉強出来る環境など、整っているはずもなく。それが受験者がほとんどおらず、その上合格者が半数以下になる所以である。

なら入学試験に合格しているその半数以下は一体誰なのか。それは男爵・子爵あたりの下級貴族の末子などと言った、金を積むことが難しい層である。入学試験を合格すれば学費などは半額以下になる。貴族は帝都学園に通わなければ社交界で馬鹿にされると言う面倒くさい慣わしがあるため、意地でも合格しようと彼らは躍起になるのだ。

ここまででわかるように、帝都学園は『万人平等であるべし』なんて崇高な精神を掲げているが、実体は階層差別の温床のオンパレードで、前世の友達ヲタクが言うような『平等(笑)』な学校である。まあ学園側も多くの学費を払っている貴族にあまり大きく出れないから、仕方ないっちゃそうなんだけど。大体教師は中級もしくは下級貴族の三男以下が多いし。

父上も学園の方針を変えたいとは思ってるようだけど、あまりに反対する貴族が多いから、皇帝権限で無理に変えると遺恨が次期皇帝にまで残ることを懸念して、行動には起こしていない。自分一代で処理出来る問題なら父上は生き生きとしながら皇帝権限を振り回していただろうけどね。枢長さんの胃がキリキリと縛り上げられているのが目に浮かぶ。

つまり学園は貴族の巨大な自尊心プライドが具現化した場所だ。なんかそんなこと考えてたら、今から通うのが億劫になって来たぞ。なんでわざわざ入学式の日にそんなことを考えたんだ、自分。

俺は馬車に揺られ学園に着き、馬車の停留所にてヴァイナモに惜しまれながらも別れを告げた。「いや、大袈裟だろ。どうせ夕刻には再会するのに」と思ったそこの君。ヴァイナモのこの今生の別れのような悲しげな表情を見てもそう言えるだろうか、いや言えない(反語)

俺は去って行く馬車を見えなくなるまで見送り、「よしっ」と気分を改めた。色々心配はあるけど、何とかやって行くしかない。幸い俺はこれでもこの国の皇子だから、面倒事に巻き込まれたりはしないはず。逆にクラスメイトから敬遠されそうだけど。それってボッチ確定じゃないですかやだー(棒)

まあ別にボッチでも気にしないけどね。先生に「ペア分けの時は配慮してね?」ってを送れば……いや、それは職権乱用か。やめとこ。

それなら1人ぐらいは話せる友達生贄が必要か。前世の友達ヲタクみたいな、俺が話さなくてもマシンガントークしてくれるクラスメイト、いないかな。あれ楽で良いんだよね。話のネタが尽きて変な空気にならないし。てか今世の俺は魔法陣のことぐらいしか話題に出来ることがないじゃん。死活問題じゃないですかやだー(棒)

そうしているうちに正面玄関までやって来た。無駄にデカい噴水が堂々とセンターを陣取っている。維持費大変だろうな。学園に噴水なんているのか?まあ貴族社会なんて見栄え重視だから仕方ないか。

そんなことを考えていると、何やら人集りがある場所を発見した。掲示板に大きな紙が貼られており、クラス分けが書かれているようだった。生徒は皆それを見上げて一喜一憂している。なんか時々、今世この世界の世界観が偶にわからなくなるよな。昔のヨーロッパの文化がごちゃ混ぜになってるみたいな。でもこんな風に現代日本っぽいのがある時もあるし。まあ深くは考えたら駄目なんだろうな。

てかこの世界って前世で言うどの時代ぐらいに位置するんだろ。中世?近世?……わからん。前世の高校で世界史Aの成績が万年5段階評価の2だった俺に、ヨーロッパの中世と近世の差など聞くんじゃねえ。俺は関心意欲態度だけでなんとか2をキープしてたんだよ。俺が好きだったのは日本史だったんだよ。お陰様で日本史Bは万年5だったよ悪いか。……って自分に向けて何言ってんだ俺。寂しい人かよ。

まあそんなこと今はどうでも良いな。こんな所でもたもたしてないで、さっさとクラス見て教室行こう。

スッと思考を切り替えた俺は人混みの最後尾辺りまでやって来た。そこから何とか見えないかと背伸びをしてみるが、遠いのと壁が立ちはだかる人が多すぎるせいで全然見えない。おいコラ陽キャ。自分のクラスを確認したならさっさと退けや。見えねえんだよ。そんな所でキャッキャウフフするんじゃねえ。

どうしよう。これはもう人混みの中をかき分けて前の方に行くしかないかな。人混みの中に1人特攻なんて億劫だけど、腹を括るか。変にオドオドしてたら直ぐに弾き飛ばされる。ただでさえ華奢でチビで気付かれにくい(あくまで自己評価)んだ。「俺氏様のおなーりー」ぐらいの気持ちで行ってもバチは当たらないはず。

目の前に広がる混沌に突撃しようと一歩前に出た時、俺の前にいた生徒の1人が俺の存在に気づき、ズザザッと道を開けた。そしてその行動によって俺の存在に気づいた人が次々と横に捌け、俺の前に1本の道が出来た。何だこれ何だこれ。いや、皇族に道を開けたのはわかるんだけど、皆なんで俺が皇族だってわかったんだ?俺が公に姿を現したのって10歳の時の建国記念式典の時ぐらいなのに。

俺が首をコテンと傾げると、生徒の1人が「天使……」と呟いたのが聞こえた。その言葉に俺は合点がいった。

そうだ。俺って天使じゃん(比喩ではない)。忘れてた。いや、最近天使だって持て囃すのがペッテリぐらいしかいなかったから忘れてた。そう言や俺の見目って近寄り難い人間だったわ。

……ってボッチ確定じゃないですかやだー泣きそうー(棒)

俺はトホホと思いつつも開けてくれた道を甘んじて通り、自分のクラスを確認した。ええっと、俺のクラスは……1~Aか。

「おや、私と同じクラスですね、エルネスティ皇子」

俺が掲示板へ視線を上げていると、背後から聞き慣れない声で話しかけられた。俺を『皇子』と呼び、顔見知りのように声をかけると言えば、大体の想像はつくだろう。俺は振り返りたくないなと思いつつ、ゆっくりと振り返った。

「……シーウェルト王子、ですか」

「はい、お久しぶりです。何時ぞやの建国記念式典以来ですね」

振り返った先にいたシーウェルト王子は、まるでおとぎ話から抜け出した白馬の王子様ぼくのかんがえたさいきょうのおうじさまに成長して、俺に柔和な笑みを向けていた。
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